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バッテリー IIまで
小学校を卒業したばかりで父親の転勤のため田舎に引っ越してきた原田巧は、野球の投手の才能があることを自他共に認め、この年で早くも自分を律してプライド高く生きていた。一人の力強い少年がまわりに影響を与えてさまざまな波紋や騒動が起こる。

たぶん児童文学と呼ばれる作品なのだろう。シリーズで六百万部以上売り上げ、映画化やマンガ化もされているらしい。作者のあさのあつこは兼業主婦作家で、主婦になってからも作家の道をあきらめずに成し遂げたとのこと。

私は週刊文春で阿川佐和子が作者のあさのあつこにインタビューしている記事を既に読んでいたので、この作品がそんな女性の手によって書かれたことを事前に知っていた。ちょっと驚いた。子持ちの主婦がここまで身勝手な母親や振り回される子供を書けるものなんだなと。

とにかく主人公の原田巧の孤高ぶりが圧倒的だ。男の子は思春期が来るのが遅いのでこの年からこんなに大人びた少年はいないんじゃないかと思うが、確かに子供ってのはこういう矜持をなんらかの形で持っていると思う。言いたいことがあるけど気安く言葉にしたくない、とか。ちょっと言葉にするとウソくさい気もするが、こういうのを言葉で書くことに価値があると思う。

一方で原田巧の弟の青波という虚弱児は逆に空気のように周りになじみ、なごませ、鋭い感性を時に見せる。この人物もちょっと作り物のニオイがするが魅力的だ。

と子供たちの心情描写はなかなか味があってよかった。登場人物たちが時に見せる感情の行き違いとか和解に生々しさがある。

しかし物語の筋となる野球についてはアレ?と思う箇所が多かった。祖父が地元で有名な元高校野球監督で、主人公が入る中学校の野球部の監督は教え子だという設定とか、原田巧の球を受けるキャッチャー役の豪が巧にベタ惚れするところ。この年で既に地方に原田巧の評判が伝わっているところからしてウソくさい。野球を扱った作品で天才的投手を出したらある種必然と言える展開なのかもしれないが、ちょっと既存の作品やありがちな筋書きに寄りかかりすぎているように思えてならない。規則の縛りがきつい学校の描写なんて露骨すぎる。

特に二巻のあとがきで見せる作者の熱意を汲み取ると、作者は少年たちの強い心を描きたかったみたいだから、その点ではある程度成功しているんじゃないかと思う。ただ、野球である必然を感じないのが弱いところなんじゃないだろうか。野球を扱った作品で作者が野球に対して特別な思いを持っていなくて、果たして面白い作品になるものだろうか。題名からしてフザケてないだろうか。

一巻は地元での豪たちとの出会いから虚弱児・青波の野球への熱意で終了。二巻では中学に入って学校社会と初めて対立して野球部に入って野球部で衝突して先輩とのいざこざで終了。なんだか物語に区切りがついている気がしない。ちょっと盛り上がったな、ぐらいで終わってしまう。一言で言えば物足りない。試合もまだない。

今年ヒットした「おおきく振りかぶって」と比べると魅力に乏しい作品だ。面白いことに同じくピッチャーが主人公の両作品だが性格は真逆もいいところ。この先の展開にぜんぜんワクワクしない。原田巧というキャラクターに魅力を感じるかどうかでこの作品への評価が分かれてしまうのだろうか。マンガ化は少女マンガ雑誌らしいので女性向けなのだろうか。「おおきく振りかぶって」も女性人気が高いらしいが男性にも人気がある。

ちょっとよくわからないけど、自分は閉塞した社会に迎合して生きてきたと思っているような人にとってはこの作品は気持ちいいのかもしれない。だが私にとっては大して読む価値のない平凡な作品にしか思えなかった。
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