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Cowboy Bebop 天国の扉
1998年だかにテレビで放映していたアニメシリーズの劇場作品。カウボーイは賞金稼ぎの通称で、宇宙船ビバップ号になんとなく集まった四人組の話。2001年9月に劇場公開。

いまごろ気がついたが、主人公スパイクとその相棒ジェットの名前は、それぞれスパイク・リーとジェット・リーに対応する、としか考えられない。他にルパンの不二子のような役回りの女キャラ・フェイやボーイッシュな子供ハッカー・エドの名前にも背景があるのかも。

新聞で、監督の渡辺(多分)と作曲の管野よう子が対談しているのを読んだときには、はっきりいって印象最悪だった。特に管野の、作る音楽と吐く言葉のギャップに、今まで抱いてきた好印象が少し吹き飛んだ。が、やはり作品を実際に見ると、演出も音楽もよかった。

テレビ版も含めたこのシリーズには多分明確なメインテーマはないように思えるのだが、その中でも主人公スパイクが第5話で吐くセリフなどをうまく膨らませて映画版のテーマに据えている。第5話はシリーズ中でも演出と音楽の素晴らしさで人気があるようだが、私には虚ろに見えた。それを映画版が補完したように思う。

そのテーマが、現実感。死ぬことは怖くなかったのに、愛するものを見つけたとたんに、生きたいと思うようになる。そして、愛するものを失ったとたんに、生きていてもまるで夢を見ているかのように現実感を喪失してしまう。

テレビシリーズでは、そのテーマを伝えるのがもっぱら主人公スパイクだった。劇場版ではそれが、悪役のヴィンセントによって表現される。主人公スパイクはそんなヴィンセントにシンパシーを抱く。

とまあそういう流れになるのだが、語り方がじつに弱い。主人公スパイクはヴィンセントのことをロクに知るはずもないのになぜここまで共鳴できるのか。ヒロインに気を許すところもそう。なにか、ぎこちない。冒頭と最後に同一のセリフで語られるスパイクの独白に、ヴィンセントについてのスパイクの辞があるのだが、そこからしてもう明らかにヘンである。

2001年9月1日という9・11直前の日に、アラブっぽい風貌のヴィンセントがバイオテロをしてそれが実は軍ともつながりがある、といった内容の映画を劇場公開したことがまず驚きである。一カ月遅ければ公開延期になっていただろう。

そうそう。偶然先の制作者インタビューがウェブ上で見つかった。http://www.asahi.com/culture/animagedon/cowboy.html

この作品で最初にできたのが空中戦の部分だというから、多分彼らは銃撃戦や空中戦が描きたかったのだろう。物語はどうでもいいみたいである。

SF としての仕掛けはまずまずだと思う。これはネタバレになるので書かない。

オープニング前後は素晴らしい。いかにもそれっぽい情景をよく描いている。アメリカ風の国際色あふれるダウンタウン。これから始まる映画に期待を膨らませてくれる。独立した映像としては最高の出来だと思う。コンビニ強盗を撃退する主人公たちの小話を冒頭に入れたのは、劇場版で初めてシリーズを知る人には良い導入部となっただろう。

管野よう子の音楽は、全部素直に楽しめた。空中戦のときの変拍子の音楽は特に素晴らしい。素晴らしいという言葉よりも、かっこいい、と言った方がいいかもしれない。とても先進的で、ダイナミックで、望みうる最高の音楽を提供したと言っていい。彼女の音楽は時に非常に引用がキツくて聞いていられないことがあるのだが、私がジャズ系の音楽をあまり知らないという単純な理由のせいか、どれも非常に新鮮だった。古代祐三、広瀬香美、つんく、あたりが私の考える最高の作編曲家なのだが、彼女はその中でも一番だと思う。

ただし、最高の映像に最高の音楽だけでは最高の総合芸術にはならない。やはり原作が必要だという結論に至る。有名な小説家や漫画家が参加しなければダメだろう。そういう意味では、この作品はぜいたくな凡作だと思う。
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