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ラグナロク 黒き獣
名声を得ながらも傭兵ギルドを抜けて一人気まぐれに自由契約の傭兵をしている強力な剣士リロイだったが、長くて深い因縁のある同業の美女レナにはめられ、暗殺ギルドに誘拐された彼女の妹を助けに行く羽目になる。人外の傭兵の活躍と苦悩を描いたファンタジー小説の一作目。

ライトノベルの賞の一つ、第三回スニーカー大賞受賞作。ブックオフで105円だったので試しに買って読んでみた。

日本でのファンタジーの受け入れられ方というと、まずゲームとしてドラゴンクエストやファイナルファンタジーの存在が大きい。それ以前だと、始祖として指輪物語やゲド戦記などの小説があり、最近ではハリー・ポッターなんかがあり、映画化もされてかなり一般に浸透している。その中で、オタク文化として忘れてはならないのが水野良「ロードス島戦記」であろう。本作は「ロードス島戦記」と同じ角川スニーカー文庫から出ているため、多分直接の系譜を引いているものと思われる。

本作に出てくる剣士リロイは、登場した時点ですでにかなり強力な傭兵だという設定になっている。導入部で多数の闇の種族の襲撃をほぼ一人で退ける。そこへヒロインとおぼしき美女剣士が、まるでルパン三世に出てくる峰富士子のように登場し、リロイを手玉に取る。そんな様子を語り部たる喋る剣ラグナロクが一人称となって語って見せる。序盤の流れるような展開、無駄のない効率的な導入にまずは感心する。

ただ、そこから先は戦闘戦闘で休憩してまた戦闘と続く、これといって面白みのない展開だった。剣士リロイやレナは悲惨な子供時代を送っており、それが彼らの性格に作用していて人物造形に奥行きを出しているのだが、それなのに登場人物にあまり魅力を感じることが出来なかった。

まず構成がよくない。半ばまでで暗殺ギルドとの対決編が描かれていったん山場がある。そこから残り半分のうちのさらに半分を使って襲撃編があって宿屋での戦いが描かれる。最後に教会での最後の戦闘が描かれて終わる。どれも中途半端に盛り上がってメリハリがない。戦闘ばかりで飽きが来る。大した物語が語られない。暗殺ギルド編で一回話をまとめたほうが良かったんじゃないだろうか。ここに集中するだけで大分作品の質が上がったと思う。応募作だから仕方のないところなのだろうか。

剣士リロイはものすごく強い剣士なのだけど頭が悪いところが愛嬌あっていい。語り部の喋る剣ラグナロクが色々茶々を入れるのが楽しい。子供の頃に悲惨な生活を送っていたため弱いものを助けずにはいられない性格をしており、しかもそんな自分のトラウマに自覚的でバカなりに悩んでいるところに少しジンとくる。しかしあくまで戦闘シーンを彩るネタにしか使われていないかのようでもったいない。戦闘シーンが好きな読者にとってはちょうどよいバランスなのかもしれないが、私のような読者には物足りなかった。

娼婦とか売春とか体を自由にしていいとかいう性的なネタが頻繁に出てくる。剣士リロイに助けられた少女がお礼に訪ねていきなり服を脱ぎだすシーンとかもう私のような年には結構厳しいものがある。でも昔だったら好んで読んだんだろうなあ。レナのトラウマとからめての描写があったらまだ良かったのだけど。作者は多重人格を作中に出しているから心理学的な知識があるっぽいのに。

喋る剣ラグナロクの語りがギャグめいていて面白い。ずっとこの調子で行って欲しかったのだが、途中で単なるおふざけキャラじゃないことが分かり、やたらと安っぽく友情を語り出して少し興ざめする。

舞台設定にSFっぽいものがある。それもそのはず、人類と闇の種族はいったん世界の壊滅を挟んで五千年も前から戦いを続けている設定だ。喋る剣ラグナロクはそんな旧文明のロストテクノロジーらしい。

闇の種族というのは、人間とは異なるやたら生命力が高くて上位の存在ほど高度な知性を持った化け物たちのことだ。週刊少年ジャンプで連載されていてアニメ化もされたCLAYMOREという後発の作品とよく似ている。関連があるのだろうか。こっちを先に読んだことで新味が薄れてしまった感もある。

うーん。いろんな意味でもっと早く出会っていれば良かった作品だった。「ロードス島戦記」の次の世代の作品として十分面白い作品だと思うのだが、ちょっと受け入れ層が狭まったようにも思う。ただ、王道的なファンタジーが好きな人にはとても良い作品なんじゃないだろうか。
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