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グランドセフトオート4 (Playstation3版)
東欧でうだつの上がらない日々を送っていたニコは、アメリカ東海岸の都市で豊かに暮らしているという従兄弟のローマンに誘われて渡航したものの、着いてみたらそこはひどい無法都市で、借金まみれの冴えないローマンが自分の腕っ節を頼りにしてきた。ギャングの片棒を担いでアウトローライフを送る人気アクションゲームシリーズの一作。

ここ数年、日本のゲーム好きは似たようなゲームばかり作るローテクな日本のゲーム会社に愛想を尽かし、海外のゲームに目をつけるようになった。この作品はそんな中で日本でも早くからヒットしたうちの一つ。

それほど興味のなかった私のもとにもこの作品に関する情報が入ってきて興味を引かれたのだけど、題にオートとあるようにもっぱら車で人を轢き殺すゲームだとばかり思っていた。ところがそれは勘違いだった。「街を歩いている人を轢き殺すことができる」という点がこのゲームのもっとも過激で衝撃的な部分だったから人づてにこの情報ばかり広まっていて、肝心のゲーム内容が伝わっていないんじゃないだろうか。

ゲームはニコがアメリカ東海岸のリバティーシティに船で到着するところから始まる。金持ちのはずの従兄弟ローマンがボロい車で迎えにきたところからニコの期待が裏切られていく。豊かな生活を送っているはずのローマンが、街の悪いやつらから脅されてビクビクしながら暮らしていることを知る。ローマンと違ってニコは腕っ節の強いゴロツキなので、ローマンを脅しにやってきた男を逆にねじ伏せる。その後もなんだかんだでローマンを助けてやるニコだったが、ニコの心はこの無法都市で故国同様にゴロツキとして成り上がっていくことに固まっていく。

海外のゲームには自由度の高いものが多くて、魅力的な世界を用意するから好きに行動して楽しんでね、という傾向が強い。このゲームも大体そんな感じなので、最初なにをすればいいのか悩むかと言えばそんなこともなく、普通にイベントが起きたり依頼を持ち掛けられたりする。それらをこなすだけで忙しいぐらいだ。

依頼もいきなりドンパチじゃなくて、最初の方なんか「靴屋の店主がみかじめ料を払わないから脅してこい」というチンピラ級のものだった。近くに落ちているレンガを拾ってショーウィンドウのガラスに投げ込んで割る、というとんでもない依頼達成条件が示される。かと思ったら、最初なんでもないと思った付き添いの依頼で現地に行ってみると、依頼主からいきなり銃を渡されて取引を離れたところから見守れと言われる。物陰に潜んでじっと様子を見守り、取引がやばい方向に行きそうになると相手を撃てと言われる。ドキドキしながら見守っているとやっぱり決裂して撃てと合図が来る。ダウンタウンの薄汚いアパートが立ち並ぶ路地裏で突如始まる銃撃戦。

女と親しくなるイベントも発生する。まあ舞台が舞台なだけに相手はビッチなんだけど、親しくなって携帯電話の番号を入手してデートに誘う。舞台となっているリバティーシティにはレジャー施設もあるので出かける。送り迎えも車なので本当のデートっぽい。デートの約束は破ることもできる。仲が良くなると依頼を手伝ってくれたりするようになるらしい。

とまあそんなこんなで楽しくてすごいゲームだなと思って遊んでいたのだけど、途中で急にこれ以上遊びたくなくなってやめた。なんていうか、このゲーム内現実が好きになれなかった。こんな舞台ですさんだ生活を送ることが楽しいとは思えなかった。残念ながら私は開始して10時間もたたないうちにコントローラーを置いた。

ただ、このゲームは文句なく素晴らしいと思う。ファンタジー系のオブリビオン、世紀末を舞台にしたFalloutと並び、完成度の高い世界で自由度の高い仮想現実を楽しめる、ゲームの一つの到達点じゃないだろうか。ギャングの生活を描いている点で風刺的でもある。私たちのような飼いならされた庶民とは無縁だけど、いまもアメリカだけでなく世界のあらゆる場所でこういう暴力的な原理が働いている。ルポとして読むのと違い、主人公の視点でそんな生活を体験できるところが素晴らしい。ルポなら読む人は限られるけれど、ゲームだったらもっと多くの人が知ることができる。こうして光が当たることで、ちょっとおおげさだけど世の中がより良くなると思う。
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