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Re:ゼロから始める異世界生活 書籍版 1巻
引きこもりの高校生男子ナツキ・スバルはコンビニ帰りに中世ファンタジー風の異世界に飛ばされてしまう。なにか大きな力が与えられたかと思ったら特に何もなく、街中のゴロつきに普通に殺されそうになったりする。そんな厳しい世界で、一人の少女に助けられたスバルは、彼女のために何かしてあげたいと思う。ライトノベル。

2016年の春からアニメ化されたのを見てそこそこ面白かったので、アニメが終わったら原作を読んでみようと思って読み始めたのだけど、最初思ったより面白くなくてなかなか読み進める気になれず、最近やっと面白くなってきてまとまった部分まで読んだので感想を書いておくことにする。

なぜ最初面白くなかったのか一番の原因は、この作品がいわゆるループものでそのタネを既に知っていたからだと思う。いわばミステリー作品を再読している感じだろうか。こういうとき、なにかしら伏線みたいなものを改めて読み返すことで新たな楽しみが得られることが多いと思うのだけど、この作品については特にそんなこともなくとにかく退屈だった。結局、アニメ版を最初に見たときに良かったと思ったシーンにいつたどり着くのかという期待だけがページを繰る原動力だった。

1巻では謎のお人よし美少女が大切なものを盗まれたようなのでスバルは一緒に探し物を手伝うことになるのだけど、正体不明の恐ろしい敵に「殺されてしまう」。この作品の最大の特徴は、何度もバッドエンドを迎えるけれど、都度時間が巻き戻って復活するところ。で、何度かやりなおすうちに何が起きたのか分かってきて、うまいこといくように工夫してめでたしめでたし。

1巻を読んでいて思った点は大きく三つあって、まずこのよくわからない「死に戻り」という現象に直面した主人公が、少しずつこの現象について分かってくる描写がとても丁寧だなと思った。読者の自分はもう知っているので分かり切ったことなのだけど、何も知らない主人公が一生懸命頭を使って状況を把握していくところが良かった。まあ良かったといいつつタネを知っているのでそれほど面白くなかったのだけど、原作を最初に手に取っていればきっともっと楽しめたと思う。あ、これネタバレだな。知名度のある作品なのでしょうがないんだけど。

一方でもう一つ気になったのは、いったん「死に戻っ」てしまうと、それまでに経験したことは他の人にとってはなかったことになってしまうこと。1巻ではあれだけ試行錯誤したにも関わらず最終ルートだけが現実として残っている。スバルが謎のお人よし美少女に助けられたルートは次元の彼方へ消え去ってしまい、最終的にスバルはこの謎の美少女の手を強引に引っ張って成功ルートをたどってしまった。なので、彼女にとってはなぜスバルがそこまで自分を命がけで助けてくれたのかがよく分からないということになってしまう。まあそれが次の巻以降での二人の行き違いとなっていくことが物語をつむいでいくのでそれはそれでいいのかもしれないけれど、読んでいる自分もなにが起きてなにが起きなかったのか完全には把握できなくなってしまった。

最後に、この1巻だけでは単なるアドベンチャーゲームの一話をクリアするまでプレイしただけで終わってしまうこと。スバルにとって何かあったわけでもなく、ただ物語が幕を開けただけ。謎がバラまかれて終わるだけなので話の筋も面白くなく、小さなイベントの数々が別の角度から描かれるところが楽しめるぐらいだろうか。アニメから入った読者は、思ってたほど面白くないなと思って読むのをやめてしまうんじゃないかと気になる。

そんなわけで、自分にとっては我慢の一冊となってしまった。いったんここで区切ることにする。
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