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Re:ゼロから始める異世界生活 書籍版 4〜9巻
中世ファンタジー風の異世界に飛ばされた引きこもりの高校生男子ナツキ・スバルは、無力な自分を雇い入れてくれたロズワール辺境伯の屋敷で謎の襲撃者を撃退することにより双子のメイド姉妹の妹レムの絶対的な信頼を得るが、重い怪我を負い治療のため王都に連れていかれる。そこでは「王選」と呼ばれる王の選挙が行われようとしており、なんとスバルの恩人であり想い人でもある美少女エミリアも参加するが、彼女は世界を滅ぼしかけた魔女と同じ銀髪のハーフエルフのため差別を受ける。ライトノベル。

作者曰くここからが本編とのことで、ようやく主人公スバルが自分自身と向き合っていく話が描かれる。現時点で9巻の途中までアニメ化されていて視聴済みなので既に内容は知っていたのだけど、小説でどんな風に描かれているのか楽しみで読んでみた。結論から言うと、それなりに面白かったけれどアニメ以上の内容はあんまりなかった。

王都に連れていかれたスバルは、国内で最高の治療術師を抱えるカルステン公爵家にしばらく預けられて治療を受けることになるのだが、彼の怪我は体内のマナの絡まりによるものであるため体自体はピンピンしており、おとなしくしているようエミリアに言われたにも関わらずスバルは興味のおもむくまま勝手に行動し始める。

あまり具体的に書くとネタバレになってしまうのでフワッと説明すると、スバルは自分が良かれと思ったことであれば周りのことなど気にせず行動してしまうので、約束を何度も破ったり、大勢の前で他人を侮辱したり、それらもみんなおまえのためだと言い張ってエミリアから見放されてしまう。ネットでスバルはクズ主人公と呼ばれており、もっともだと思った。

ただ、自分はスバルには多少同情的で、物語の主人公がこんなに塩対応(?)される作品は珍しいと思う。ヒロインが周りから一斉に非難されて、思わずかばおうとした主人公がお前誰だ空気読めみたいに扱われ、勢い余って吐いた暴言をとがめられてボコボコにされるだなんて、良くも悪くも本当にリアリティがある(笑)。フィクションの世界だったらこんな威勢のいい主人公のことを偉い老人なんかが出てきて擁護したりするものなのだけど、そんな都合のいい展開にはならないのだった。

一応主人公スバルのとった行動はまったくの無意味だったわけではなく、何の力もない男が主の名誉のために無謀な行動を取ったことはその場にいた一部の騎士たちに複雑な思いを抱かせることになり、しっかりその後へとつながっていく。まあそうなるのはずいぶんたってからなのだけど。

とにかくスバルの空回りはその後もしばらく続き、この世の中は情熱だけではなんともならないのだということ、人の利だとか観察と状況判断が大切なのだということをその身に刻まれて学んでいく。そしてついに自分の力ではどうにもならないんじゃないかと思って絶望する。

そんなどん底のスバルを救ったのは…。この第三章で一番盛り上がるところなので興を削がないよう触れないでおくけれど、アニメで見てとても感動した。流行りの言葉で言うと「尊い」としか言えない(!)。

と解説していくとこの作品がよく出来た成長物のように思われるかもしれないけれど、実際はちょっとあざといし逆に甘い面もあって素直に楽しめなかった。

まず思ったのは、謎の女主人プリシラがペラペラしゃべりすぎ。自分はなにをするか分からんぞ、みたいなことを自分で言うところが興ざめだった。こいつには隻腕で顔面に傷を負って鉄仮面をかぶった陽気な従僕アルがいて、なんとこいつも異世界に飛ばされてきた人間であり一歩間違うとスバルもこうなるぞという冷酷な現実を突きつけているキャラなのだけど、結局甘い扱いを受けることになる。

カルステン公爵家の剣客ヴィルヘルム老の若い頃のエピソードは、こういうのやめてくれと思った。ライトノベル時空だとそういうものなのかもしれないのだけど、男が女の剣士に歯が立たないという時点でどう考えてもリアリティもへったくれもない。その上にどんな感動モノのエピソードが乗っかったとしてもうんこの上にクリームをのせるようなものでひたすら気持ち悪い。女子サッカーで世界一になったこともあるナデシコジャパンが高校生男子のチームにボロ負けするぐらい男と女で差があるのだから。いやふがいない男子ナショナルチームと比べてナデシコ本当にすごいと思うけど。

一方でアナスタシアはちょっと好き。女商人がのし上がった説得力が彼女の行動と言動の中に色々あって魅力に感じた。スバルくんに冷たくしつつもちょっと甘いところもあったりするのだけど。

色々と挙げていくまでもなく自分にとってこの作品のどのあたりが気に入らないのかというと、基本的にこの作品はどちらかというと青少年向けの甘い物語なのに、世の中って厳しくて残酷なんだぜとイキられている感じがするからだと思う。「死に戻り」という仕掛けにより世界の厳しさを読者に知らしめている分、逆にそれ以外の描写が色々と甘くなっているんじゃないだろうか。甘いことが悪いと言っているわけではなくて、たぶん中高生ぐらいにはウケると思うのだけど、自分が読むにはちょっと遅すぎたんだと思う。

ここにきてあえて言うほどのことかと思うけれど、メインヒロインであるエミリアが相変わらず空気すぎる。レムが真のヒロインということでもう決着がついているんだろうか。でもよく考えてみると、エミリアはスバルがどんな人間でも優しく接しているのに対して、レムは恩を感じてからスバルにベタ惚れしだすので、理屈ではスバルがエミリアのことを好きになるのは正しいはず。なのだけど。

「男の娘(生物学的には男だけど外見が完全な女である男の子)」のフェリスはアニメで見ていたらひたすらあざといキャラで好きになれなかったけれど、この原作小説を読むとスバルが彼女(彼)の苦しい心情を慮ったり、ツンツンした態度はスバルの弱さに対して同族嫌悪しているからだと想像してみたりしていて、なんか好きになってしまった。

ヴィルヘルムもエピソードはうんこと言ってしまったけれどスバルのことを一人の男としてほどよい距離で暖かく見守っている渋いキャラで、小説だと自分は進んで前に出ようとせず可能な限り若い人間に任せ、必要なときだけさりげなくフォローしているさまが描写されていて、自分もこういう風に振る舞いたいと思った。

最優の騎士ユリウスがどうしてスバルに友情を感じるまでになるのか疑問だったのだけど、今回読んでみてなんとなく答えらしきものが見つかった。でもそれを裏付ける描写に乏しい。自分が勝手に想像しているだけなんだろうか。もし違っていたら、なぜユリウスのような優れた騎士がダメダメなスバルと通じ合うのか訳が分からなくなる。

あー、こうして振り返ってみるとアニメではよく分からなかったことが小説を読んでよく分かったことになるなあ。読むのを何度も中断してしまったのでそんなに楽しめなかったと思ったのだけど、なんだかんだで理解が深まったことは確かなようだった。

でも次の巻を読みたいという気も起きないのでやっぱりなにかいまいちな気がする。9巻の終わりで作者はクリフハンガーしたと言っているけれど(どうなるか分からない危機的な状況を見せて視聴者を煽って次回へ続くこと)、わけのわからない新たな超然とした悪役が出てきて自分はしらけた。それよりスバルの謝罪と告白を受けたエミリアの心情がまったく描かれないのは本当に意味が分からない。

好きになれそうな要素はあるのに好きになれない。自分にとってはそんな作品だった。
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