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真・女神転生3 NOCTURNE
世紀末風の混乱した世界を舞台に、色々な悪魔を仲魔(仲間)にして何かしらの秩序に導こうとする、女神転生シリーズの正当な後継作。世界各地に伝わる神々も妖怪も怪物も妖精もすべていっしょくたに悪魔と呼び、一つの壮大な世界観を作り上げた名物作で、根強いファンが多い。

ファミコンで女神転生シリーズは生まれた。デジタルデビルストーリーというキャッチコピーで、コンピュータで悪魔を召喚することを前面に出したRPGだった。私はプレイしたことがないのでよくわからない。

その後、スーパーファミコンにプラットフォームを移し、真・女神転生シリーズとなった。初代は今もシリーズ最高の出来だと考えるファンが多い。私がプレイしたのは二作目からで、独特の頽廃的な魅力と壮大なストーリーに感動を覚えた。本編の扱いではないがその後if...という作品もあり、システムは同じだがストーリーは学園を舞台としていた。

プレステとサターンの二大ハード時代には、それぞれのハードでペルソナとソウルハッカーという別々の外伝的な作品を発表するも、ついに本編は出なかった。これらは世界観を共有するも、基本的なシステムに大きな違いがあった。と私が言っても私はこれらの作品をプレイしたことがないのでよくわからない。

そしてこの真・女神転生3がプレステ2で出た。仲魔となった悪魔同士を合成して新たな悪魔を作り、パーティを編成してダンジョンを攻略していくというシステムが正統な進化を遂げている。

前置きが長くなった。

ゲームを開始してまず驚いたのは、演出がよくできていることだった。高校生の主人公が、夢の中でぼんやりと裕子先生から謎のメッセージを受け取るところから始まる。その後、代々木公園で事故が起き、怪しい記者と出会い、新宿なんたら病院へと導かれる。そこで見た怪しい設備から、世界の崩壊、このゲームで言うところの「東京受胎」が起き、主人公がそこへ放り出される。プレステ2により格段に進歩したグラフィック性能を十二分に活かしている。

大局的なストーリーはよく出来ているのだが、脚本が味気なくて、かなりの薄味に仕上がっている。コトワリを啓いて自分の望む原理で動く世界を再創造するために、いくつかの勢力がこの世界のエネルギーであるマガツヒを集め、賛同する悪魔たちを従えている。世界観といい原作といい背骨はしっかりしているのだが、どうしてこんなに味気ない作品になってしまったのだろうか。

それに対してゲームシステムは格段の進化を遂げている。敵の弱点をつけば与ダメージが増えるだけでなくこちらのターンまで増える。逆にこちらが弱点を突かれると敵の絶え間ない攻撃で一気に全滅させられたりする。多種多様な悪魔が魅力のこのゲームで、それぞれの悪魔の特徴を出すのに適したシステムとなった。

ストーリー進行に立ちふさがるダンジョンにいる敵やボスには、攻撃の系統がある。その系統にあった悪魔を編成すると優位に戦える。悪魔は敵をスカウトするほか、館で合成したり買ったりできる。合成するとスキルが引き継がれる。スキルの有無により強さが大きく変わってしまうので、有用なスキルを強力な悪魔に引き継がせていかなければならない。私に言わせれば特に今作の魅力の八割はここにある。

音楽は多様だが、中でもヘヴィメタル調の曲が目立つ。ディストーションの効いたギターサウンドが心地よい。ただ、作った人は多分ヘヴィメタルが好きな人ではないだろう。

即死魔法が極悪。破魔と呪殺の二系統があり、特に強力な悪魔は聖か邪に偏っているため、どちらかに強い反面どちらかに弱かったりする。主人公は今回マガタマのシステムで一応防ぐことが出来るようになっている。マガタマのシステムとは、火炎無効の代わりに氷結弱点だとか、破魔無効の代わりに呪殺弱点とか、特徴のある二十種類ぐらいのマガタマを手に入れていき、どれか一つだけ装備できるシステムである。戦略性が増える良いシステムだが、一方で破魔と呪殺に備えなければならない場面が目立ち、不自由である。

マガタマには、装備するとすぐに現れる効果のほかに、レベルアップ時に特定のスキルを覚えられる効果がある。マガタマによって覚えられるスキルが何種類か決まっており、その中に破魔や呪殺を無効にできるスキルもある。しかし、主人公は合計で八種類のスキルしか覚えることが出来ないため、ここに二枠とられると他のスキルが六個しか覚えられなくなる。

女神転生といえば最初から3Dダンジョンだった。今作ではスムーズな移動が可能となっている。グラフィックスは非常にリアルで、特に駅構内が素晴らしい。廃墟のビルから坑道、市街、塔と様々な場面を楽しませてくれる。

グラフィックスといえば悪魔のモデリングに感嘆した。よくもまあここまで色々な悪魔を3Dにモデリングしたものだと思う。おなじみのジャックフロストはもちろん、スライムや煙のような悪魔、本当に光っているように見える悪魔、これらがアニメーションまでして襲い掛かってきたりする。

さて、いまからこのゲームをプレイする価値はあるのかというと、プレイする価値は十分にあるが、クリアするだけの価値はないと思う。ストーリーの導入部を楽しみ、戦闘システムを味わったら、あとは放り出してもいいんじゃないかと思う。ストーリー展開には期待しないほうがいい。エンディングは六種類あり、私はそのうちのムスビという孤独なエンディングを迎えたが、まったく感動のないエンディングだった。自分の戦略で悪魔を編成していく楽しみに憑かれて、いいメンバーでダンジョンを攻略していくことを楽しめるようだったら続ければいい。
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