ファイナルファンタジー12 |
世界的に人気の高いコンピュータRPGシリーズの最新作。ファンタジーと機械が独特に融合した世界で、空賊(空の海賊)に憧れる少年ヴァンが、故郷である砂漠の小国ダルマスカ王国を占領したアルケイディア帝国相手に無茶しているうちに、破魔石と呼ばれる強力な力をめぐる争いに巻き込まる。
本作の最大の特徴は、MMORPGである前作11の戦闘システムを大々的に取り入れることにより、エンカウントシステムと呼ばれる戦闘専用の画面がなくなり、移動と戦闘とがシームレスになったことで、スピーディな戦闘とスムーズな展開が実現した。さらにそのシステムを妨げないよう、「たたかう」をいちいち選ばずに敵を攻撃できるオートアタックに加え、魔法や技やアイテム使用などを簡単な条件文により自動で行うガンビットと呼ばれるシステムが用意された。
誰かが言っていたが、本作はかなりスターウォーズの影響を受けていると思われる。艦隊戦のムービーを見ると誰でもそう思うだろう。軍艦や戦闘挺の形状や動きや効果音が似ている。背景の砂漠っぽいのまでダブっている。登場人物の煤けたテクスチャや建物まで似ていないだろうか。あんまり厳密に比べるほどスターウォーズが好きなわけじゃないのでおおざっぱにだけ指摘しておく。
ストーリーの大事なところは、大いなる存在の助けを借りて力で復讐を遂げるのか、大いなる存在に振り回される人類をそのくびきから解き放つのか、ということだと思う。他にいい言葉がないので仕方なくこの言葉を使うが、語り古された英雄的な物語に対するアンチテーゼのようなものを製作側は考えたのではないか。蹂躙された小国の王族が、祖先の使った強力な力を得て、悪の存在を打ち滅ぼす。それって本当にいいの? という、良く言えば創造的な問い掛け、悪く言えば小賢しくて貧しい発想だ。そういえば本シリーズの十作目にもこのような主題があった。本シリーズは偶数番と奇数番とに製作ラインが分かれているそうなので、同じようなスタッフが考えたのかもしれない。
さてその肝心のストーリーなのだが、なんだかもう批評する以前のような低レベルな出来になっている。そこでその理由を考えてみたのだが、あまりに3Dアニメにこだわったために、制作コストの掛かる3Dアニメに引きずられて脚本がズタボロになってしまったのではないかと思う。いやこれでもまだ好意的な解釈かもしれない。これほどまでに淡白で伝わってこない作品はいままでの本シリーズにさえなかった。主人公の影が薄いのが致命的だと思う。多分最初に人物のラフな設定と物語の大きな筋を考えたあとで、それを脚本にして物語を編み上げるところで何か大きな失敗が起きて、それをそのまま3Dアニメやイベント作成のほうへ下ろしてしまったためにこんな風に目も当てられないようになってしまったのだろう。
ストーリーのことは忘れることにして、本作のシステムは例によって非常によく練られており、毎度毎度楽しませてもらった。人づてに聞く噂では、戦闘システムがあっさりしすぎていて賛否両論の声が上がっているらしいが、私は本当によく出来ていると思う。ライセンスとガンビット、武器や魔法の体系、技やアクセサリ、おたからと特産品、クランとNM討伐。一度設定すると戦闘でやることが少ないのが人によって楽しみが薄れたかもしれないが、ダンジョンの探索に集中できるし、やりこみ要素が単調にならずに良いと思う。私に関しては、とてもではないが本作のやりこみをやる気になれないが、攻略ページを見ているだけでやりがいにあふれていることが伝わってくる。このゲームに学生時代に出会っていたら、特に小中学生の頃に出会っていたらやりまくっていただろうなぁ。ちなみにそれでもクランでの討伐や召還獣戦などで寄り道しながらクリアまでに80時間以上も使ってしまった。
私がこのゲームをやっていて特に面白かったと感じたのは以下のところである。
・なんたらエンサで広大なマップをさまよったとき。
・ガンビットや装備を工夫してギリギリでボスを倒したとき。
・ドンアクのついた武器や、敵の弱点をついた武器や魔法を設定して、雑魚を効率的に倒しながらダンジョンを探索したとき。
・ライセンス表とにらめっこしていたとき。
・酒場やクランで依頼を受けて敵を討伐すること(ちょっと面倒ではあったけど)。
そうそう、思い出したのだが、なんたらエンサを超えて遺跡かなにかの前で鳥の形をしたボスと戦うのだが、そこにたどり着くまでの道に大きく上ルートと下ルートがあり、どっちかを通るとイベントが発生せずにボスがメチャ強くて倒すのが難しい。というか普通にレベル上げていただけではほぼ倒せないと思う。しかもボス戦の前にイベント的にしかセーブできないため、引き返すと再びそこにたどり着くまでのセーブポイントがかなり遠い。本作で唯一不親切な箇所がここだった。
本作の全体的な出来については、もっと怒ってもいいはずなのだけど、不思議なほどどうでもいいと思っている自分がいる。
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