狼と香辛料 |
若き行商人ロレンスが商いの旅のさなかに拾った小娘は、実は五百年以上も生きたという狼の神様だった。老獪だが時折幼さを見せる彼女と立ち寄った町で、ロレンスは銀貨に関する儲け話の匂いを嗅ぎ取る。商人の視点で描かれる一風変わったファンタジー小説。
電撃文庫が主催する文学賞の銀賞作で、いわゆるライトノベル。2ちゃんねるのライトノベル関連のスレで一番人気の作品だというので面白そうだったので読んでみた。
賢狼ホロと名乗る少女のキャラクターが非常に魅力的で引き込まれる。言葉遣いが独特で、一人称が「わっち」、語尾に「ありんす」とか「じゃろ」などまるで花魁(?)のようだ。老獪だが、時折幼く振る舞い、主人公ロレンスを翻弄する。そこがかわいい。ネタバレになるので詳しくは言わないが、彼女には一つの精神的な欠点があり、それがまたよくできていてグッとくる。
物語は銀貨をめぐる大きな儲け話を中心にして進む。銀貨の中の銀の含有量をどうのこうのという話なのだが、読んでいてたびたび混乱した。こんなので本当に儲けることが出来るのか、ついつい考え込んでしまい、物語の興をそがれた。ちょっと出来すぎているのではないか。それとも私の知らない金融の原理が働いているのか。これから読む人は、あまり考えないで読み進んだほうが良いと思う。
ヒロインが甘いものを食べるのが好きという設定は、前に読んだライトノベルの灼眼のシャナとかぶっているが、この設定はやっぱり卑怯かもしれない。食欲は性欲と同じだけの潜在的な魅力があり、それをうまく利用しているのではないかと思った。もちろんライトな性描写もあり楽しませてくれる。
商人の行動原理がよく描かれている。なるほどなと思って楽しんだ。ただし、大商会の支店長マールハイトは甘すぎる。そういうキャラだと思うことにしよう。
読後感や読中感(?)が良く、ホロの魅力に引き込まれてじっくり読んだ。難を言えば、やはりメインの筋立てとなる銀貨の話がどうも消化不良に思えてならない。私は最近週刊文春で幸田真音の経済小説「バイアウト」を毎週楽しみに読んでいるのだが、比較するのはかわいそうだろうか。あっと驚く商売の結末があればかなりの出来だったろうと考えるとその点は残念だ。
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