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狼と香辛料3
豊作の女神にして普段は人間の小娘のなりだが実は狼の化身ホロと、彼女の故郷を一緒に探すことになった若い行商人ロレンスの二人旅が、今回は祭りの最中である北の都市に滞在し、そこで血気盛んな若い商人に彼女を掛けての商人流儀の血統を申し込まれる。

ファンタジー小説でありながら剣や魔法をほとんど描かず商売と女性の話だけで進み、2ちゃんねるのライトノベルスレで近年最も高い評価を得た作品(といっても高々数十票程度だが)。

今回は商売と女性の両方でドラマチックな展開があり、ぐいぐい読み進んだ。

商売の方は、祭りの中で生まれた投機的な商品をめぐり、ロレンスが考え出す起死回生の策が良かった。これまでの作品では、商売を扱っていながらどこか現実感に欠けるところがあるように感じていたが、今回は原理的にようやく私にもはっきり実感できるものだった。商売の細かい描写も私にとってはリアリティがあるように感じられた。

女性の方は、ふとした行き違いから大変なことになるところが劇的で緊張感があってよかった。

明かりの描写がいくつか印象に残っている。イメージを喚起された。

難を言うと、人と人との細かいやりとりがどうも込み入っているように思う。最後のホロとの種明かしは取ってつけた感があるし、マルクが最後にロレンスを励ますシーンなどで作者の感情が先行しすぎているように感じられた。一方で、ホロとロレンスのやりとりは、あのキャラ設定の難しさから考えればとてもよく出来ており、相変わらずホロの小憎らしくも愛らしいさまが楽しい。

登場人物とくにディアナとラントの描写がもう一歩足りないように思う。ディアナにはもう少しミステリアスでいてほしかったし、ラントには実感のこもったことを喋らせて欲しかった。最後に安易なところで作者が登場人物をステレオタイプに意図的にハメて収拾をつけようとしているところが、登場人物を薄っぺらくしているように思える。

それら全部を含めて、良く言えば独特の味があるというか、正直未熟な感じがしてしまうが、それはそれなりにこの作品らしさと言える。作者は意図してかどうか知らないが、作品世界を現実とは分けて描こうとしているのだろうか。多分私はこのシリーズの登場人物のような人とは現実世界ではこれまでもこれからも会わないと思う。
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