お喋りセッション |
センスの良いアイデアにぬくもりのある味が作風の草上仁のSF短編集の一つ。
私は作者の草上仁がSF作家の中では一番好きだ。他の作家にないあたたかさがあって、しかもそれがSFでしか表現できない種のものだからだ。私の好みを抜きにしても、客観的にみて星新一に次ぐくらいの評価があってもいいと思う。
表題作の「お喋りセッション」は、極端な個人主義が進み、人々が当たり前に会話を交わすことがなくなった世界で、お喋りセッションと呼ばれるプロが普通に日常会話の中でダジャレを言い合うことがショーと化している。主人公のテツは恋人と同棲しており、二人ともショーのファンなのだが、最低限の会話しかない。ネタバレもなにもない話なのだが、これ以上説明すると興が失われるのでやめておく。ちんけな言葉を使うとハートウォーミング。
ただしそんな作品ばかりではない。アイデア一発のもの、怖い話、いわゆるSF的な文芸の作品、それぞれ二三作ずつ入っている。
この作者の作品は全部世界に発信したいと思うのだが、日本ですら街の本屋には置いていない。近所のブックオフでたまたまこの一冊を発見したので手に入った。アマゾンでもなんでも使えばいいのだろうが、寂しさを感じる。
いくら素晴らしい作品でも、SFを受け付けない人というのは多いのだ。特に女性に多い。不思議なことにファンタジーと言えば女性に受け入れられると誰かが冗談で言っていた。でも女性はSFどころかファンタジーも元々ダメだと思う。現実的なものしか受け付けない。そのくせ現実の中で夢を見る。おっと、何の話をしているのか分からなくなった。
批判点も挙げておこう。私はアイデア一発だけのSFがあまり好きじゃないので、その系統への評価が辛くなる。でも好きな作家なので書かない。「外科ニック」は結末がドラえもん最終回の一つと似てて狙いすぎ。「フード・プロセッサー」の最後の意味がよく分からなかった。
今回ひさびさにSFを楽しむにあたって、SFの楽しみ方みたいなものを意識してしまった。楽しみ方を知らない普通の読者には多少理解できないことがあると思う。たとえば、オチがない、内容がない、くだらない、この三つぐらいは感じてしまうかもしれない。私がミステリーやサスペンスをそれほど楽しめないのも多分楽しみ方を知らないからだと思うので、SFがダメだという人には同情的だ。だからSF全体の取り組みとして間口を広げる何かをしなくてはならないと思う。
ここらでどこかが草上仁の作品群をアニメ化してくれたらなぁ。
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