フロントミッション3 |
ロボットに乗って戦う戦術シミュレーションゲーム、のはずなのだが、味方が四機までしか出せないのでもはや限りなくシミュレーションRPG に近い。
このゲームの最大の魅力はなにかというと、やはりまず一番に挙げられるのが、ロボットを好きなように作って戦わせることができること。パーツは体と右手と左手と足に分かれて、それぞれ特徴的なパーツを好きに組み合わせることができる。マニア好みの要素としては、すべてのパーツは世界中にあるさまざまな兵器メーカーが作ったもので、各メーカーの紹介ページまで用意されている。
メーカーに限らず、よくできた世界観が背景を彩っている。特に今回は、インターネットもどきの、特にワールドワイドウェブっぽいネットワークがあり、さまざまな組織のページや各国のニュースサイトが用意されている。面白いのは、中国のサイトには簡体字の漢字が、ロシアのサイトにはキリル文字が、ドイツのページにはドイツ語で、それっぽくページが作られているところである。また、ページによってはパスワードが必要な入り口もあり、パスワードを集めたり類推したりして頭を使う。メールで謎の人物から情報を教えてもらったりもする。
初代フロントミッションから連続した歴史的設定を継承しており、背景の作りこみがよくできている。特に、沖縄の近くに人工島を作って経済特区にするというアイデアは現実に存在するようだし、日本の自衛隊が日防軍になっているところは思わずニヤリとさせられる。
ただし、ロボットもといヴァンツァーが軍の主流兵器になることはまったくといっていいほど考えられにくい。イベントシーンでのったりくったり歩くヴァンツァーを見ると、こんな兵器が使いものになるのかとあきれてしまう。戦車ですら時速60キロは最低ラインなのにである。まして、現代最強の兵器である戦闘機とどうやって戦うのだろうか。
まあ背景は漠然と飲み込んでいればいいのだが、それにしても気になるのは、主人公の性格が熱血漢であり、ストーリー展開が背景とは打って変わって単純な点である。やるしかない、とか言って無茶なことをどんどん実現させていく。私はストーリー関係ではまったく楽しめなかった。特にエンディングはなんのひねりもないそのままである。情勢の変化は面白いのに、主人公周辺のストーリーが退屈なのはどうにかならなかったのだろうか。初代フロントミッションのあの衝撃的なラストシーンと比べるとひどく見劣りしてしまう。
ゲームシステムに関しては、うまくまとまっているように思う。特に、味方が四機まで、敵もせいぜいその倍くらいまで、と非常にコンパクトになっているので、最短で二十分ぐらいで一つのマップを攻略できる。だからといって難易度が低いわけではなく、失敗してもやりなおしやすいし、短時間で集中できる。これまでのシリーズでは、最後の方になってくるとあまりのマップの長さに、攻略を進めるのがおっくうになってしまうことがあったが、今回は見事に解決している。その分、シミュレーションゲームとは言えなくなりそうなほど戦術性が低くなったのが残念である。
前作の最大の不満は、戦闘のたびに起きるローディングの待ち時間であった。今回は画面内のユニット数が少ない上に、フィールドマップがそのまま戦闘画面に変化するという非常にダイナミックな演出がなされていて、プレイが非常に快適である。
というわけで、世界観の素晴らしさが突出してはいるものの、ゲーム全体を見ると、どうしても「佳作」以上には思えない。安心して遊べるので、やって損はないゲームだとは思う。私の場合、クリアするのに大体 60時間近くかかってしまった。金のない学生時代にプレイしていたら、これほど長くプレイできてうれしく思ったかもしれないが、いまは社会人なのでもう少し短期集中で楽しませて欲しいなと思う。「大作」なので時間が掛かるのも当然なのだろうか。
ストーリーが陳腐な一方で背景がよくできているのが一番よく分かるのが、ラスト付近の安保批判っぽい文句である。初代の衝撃的なラストシーンとは比べられないとは思うが、今作の良さを代表する一言である。というわけで評価は多少甘めにつけた。
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