亡国のイージス 映画版 |
核を搭載した海上自衛隊の軍艦で、外国の工作員にそそのかされて亡国を憂う幹部自衛官たちが蜂起し、下士官の中で一番偉い主人公が彼らの企みを阻止しようと軍艦内で戦いを繰り広げる話。
これまで頑なだった防衛庁が本作に協力したらしい。軍艦がリアルなのはもちろんとして、登場人物の軍人の所作がいちいちそれらしくていい。私は本物を知っているわけじゃないけど。
単独の艦対艦同士の戦闘が描かれる。アニメやマンガだと戦っている人たちは熱くなるものだが、現実は淡々と指示系統が流れ、平坦な復唱のあとに人の生き死にがある。こういうところが本作の一番の見所だと思う。
工作員役の中井貴一はすごい。こんな存在感をこの人以外で出せる人はいるのだろうか。そのほかの俳優陣もとても良かった。押さえ込んだ演技からかもしだされる空気がこの作品の雰囲気をとてもよくしている。私はこの作品の世界に引き込まれた。
だが褒めるのはここまでだ。
まず人間ドラマが訳分からない。色んな背景があるみたいなのだが、どれも結実していない。一番ひどかったのがヒロイン格の女工作員だ。意味不明な上にオタク臭を感じる。主人公や副長やDAISの若い諜報局員の背景が全然こっちの心に伝わってこない。あまりに描写が断片的でつながりがないからだと思う。そのために全体的にユルくなっている。
邦画にしてはアクションシーンがわりと充実していたのだが、ヘンな甘っちょろさのおかげですべてが茶番に見える。
言いたいことが分からない。自衛隊の法的な位置づけをしっかりしろ、自衛隊員のやるせなさを理解しよう、みたいな主張はとてもよく分かる。しかしそのあとで妙なヒューマニズムが描かれ、どこに軸があるのか混乱する。
好意的に解釈すると、いろんなものを詰め込みすぎたのだと思う。私は原作を読んでいないのでよく分からないが、もし映画化にあたっていくつかの要素をバッサリと削ったとしたら(現にいくつか削られているらしい)、それはそれで叩かれる材料になったりするのだろうなとは思う。
主人公の階級(?)が「先任伍長」になっている。私は最初、最下級の下士官の一番先輩なんだろうなと思い込み、その後に出てくる主人公が曹長などを歴任しているのを見て、主人公はわざわざ降格までしてこの艦に留まるほどこの艦が好きなんだと勘違いしていた。Wikipediaで調べてびっくりしたのだが、先任伍長というのは士官と下士官とをつなぐ下士官で、下士官の中で一番偉いと言ってもいい高い地位らしい。階級上は仕官のほうが偉いけど、多分実質的には艦のナンバー3ぐらいなんじゃないかと勝手に思った。こういう予備知識を観客に伝えなくていいんだろうか。
映画を観た、という満足感を与えてくれる作品である。それはそれで十分なのかもしれない。それなりに楽しめた。しかし、物語としての出来が悪くて、私の中ではこの作品はほとんど記憶に残らないだろう。
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