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銀魂 9巻ぐらいまで
黒船ではなく種種雑多な宇宙人の来襲により開国させられた侍の国で、攘夷志士やら新撰組もどきが人間同士で争う中、どちらにも組せずよろずやとして気ままに自分の守りたいものを貫く元攘夷志士の主人公・坂田銀時とその周辺の人々の騒動を描いた作品。

江戸風SFという独特の世界設定で、江戸テイストあふれる近代都市に、和服を着た登場人物たち、バカ皇子を始めとした愉快な外見を持つ宇宙人こと天人(あまんと)が入り乱れる。結構いい加減で面白い。

作者は連載開始当初は二十代前半の若い人なのだが、その割に主人公・坂田銀時を始めとしておっさんのような性格をした登場人物が多い。作者も自分で自分のマンガのことを気づくとおっさんばかりになっていると言っている。どこがどうおっさんなのかというと、一言で言うと人生にくたびれているというか、一度なにかを諦めた上で信念を守って生きているといった感じなのである。ただし普段はいいかげんでちゃらんぽらんとしている。脱力系ギャグと真剣オチが本作の魅力だろう。

コマに詰め込まれた台詞まわしが面白い。一枚の絵に二人の登場人物が描かれ、コマ内に交互に台詞が埋め込まれ、細かい掛け合いが繰り広げられている。たぶんこれ、一昔前の漫画の編集だったらボツにしていただろうなと思う。ごちゃごちゃしすぎ、ってことで。少なくとも、この作者ぐらい気の利いた独特の台詞回しがなければ成り立たない表現だと思う。とても素晴らしい。時々登場人物と台詞のギャップを感じなくもないけど。

男キャラにも女キャラにもまんべんなく力を注いでいる。特に私がお気に入りなのは、マダオ(まるでだめな男の略)こと元役人の男と、さっちゃんというMっ気の強い元幕府側の女忍者だ。真撰組(新撰組もどき)のマヌケな隊長やいい加減な副長と暴走気味の沖田、たちの悪い大家のババァとネコ耳年増女宇宙人、突っ込み役のメガネ新八とその姉の性格がえらい悪いお妙、チャイナ服を着た怪力宇宙人ヒロイン神楽。これだけ面白いキャラがいて、ストーリーが面白くないわけがない。

ただ正直なところ、感動ものの話はどれも弱いと思う。神楽の親子の情を描いた巻で特にそう思った。おじさんたちが真剣になる系の話も、さくっと余韻を味わう間もなく終わるところは切れ味がよくていいのだけど、ちょっと感傷に浸りすぎている気がする。とはいってもこの感じが本作の魅力であり、多分これがなくなったら別の作品になってしまうのかもしれない。爆発的に白々しくて切ないギャグと結びつくからこそ、この味が出るのか。

ナンセンスじゃない普通のギャグマンガ(?)でここまで楽しめた作品は私にとって久しぶりだと思う。同じ週刊少年ジャンプだと、うすた京介「ピューと吹く!ジャガー」のほうがギャグマンガとしての質は高いが、笑わせた上でちゃんとストーリーがあって登場人物が豊かで時に感動話のある本作のほうが色んな面で魅力的だ。

難を言えば、面白い回は相当面白くて味があるが、そうでない回も結構あることが残念だ。全体的な質が上がるとまた違った印象になると思う。
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