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敵は海賊・海賊たちの憂鬱
空想未来のわりと何でもありな宇宙を舞台とした世界で、ギャングのように裏に表にはびこる悪党のことを海賊と呼び、太陽系で彼らの頂点に君臨する超大物ヨウメイを追って、海賊と区別がつかないほど強力な力を持つ制御不能な警察力・海賊課に所属する主人公(?)ラテルと黒猫もどき宇宙人アプロと知性を持つ宇宙戦闘艦ラジェンドラが繰り広げる人気ドタバタSF長編シリーズの三作目。

私が最初にこのシリーズを読んだのはもうかれこれ15年近く前になる。当時あまり本を読んでいなかった私からみても、簡素でテンポのいい文章で語られるこの軽妙だが芯のある独特のロマンにあふれる物語はとても魅力的だった。本作はたまたまブックオフの100円コーナーに置いてあったものを買ってひさびさに読んでみた。

最初に読んだときに感じた魅力はいまでも色あせていなかった。登場人物と世界設定と語り口が素晴らしい。一人と一匹と一隻のユーモアとスリルのあるやりとり。大物から小物までの海賊たちのなりふり。インディ・ジョーンズを思わせる流れるような展開。

ただ、いま読むと気に入らない点もいくつかある。テンポが良いと感じるのは今も同じなのだが、ちょっと描写が雑にも思える。じっくり読めばそうでもないのかもしれないが、私も色んな本を読んで文章の読み砕き方が変わってしまったからだろうか。

ストーリーはそれなりに面白いのだが、やはりSFの限界を感じてしまう。本作はとくに敵役であるマーク・マーマデュークの正体が残念に思った。こんなものなのだろうか。書かれた当時はこのタネもそんなに色あせていなかったのかもしれない。

大海賊ヨウメイが最後に執る手段がいまいちだ。だがそれもマーマデュークの影響下にあるがゆえなのだろう。題にもある「憂鬱」を起こすような能力により、登場人物たちがなんともロマンチックな独白をする。私の中ではそれがこの作品の魅力の八割を占めるが、この仕掛けが一方で結末をしょうもなくさせていると思う。結末なんてどうでもいいのかな。

私自身が中高生の頃に読んで面白かったからという理由だけでなく、このシリーズは多くの人にとって長い読書人生の最初の方に読むのに向いている作品だと思う。ただ、当時の私ですら友人から三冊ほど借りて面白く読んだっきりになったように、中身がないように感じて飽きてしまうだろう。いま読んでみて改めてそう思った。
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