夏のあらし! 2巻まで |
暑苦しい性格をした13歳の少年が夏休みに祖父の田舎に遊びに行き、奮発して入った喫茶店で謎の古風な美人の女子学生と出会う。その女子学生には秘密があった。
作者の小林尽の学園モノコメディ作品スクールランブルという作品が好きな私は、同じ作者のこの作品をコンビニで見かけたので衝動買いしてみた。
どうせ読んでいたらすぐ分かることなのでネタバレすると、主人公が出会う謎の女子学生は戦時中の日本の人間だったが、空襲がもとでなぜか現代までその存在を保ち続けていて、過去に時間遡行する能力を持っている。その能力を使ったあれやこれやの物語がこの作品の主となっている。
基本をキッチリ押さえていて安心して見ていられる反面、ちょっと狙いすぎじゃないかと思ったり、不自然な感じがしたりもする。同作者の代表作スクールランブルは結構あっさりと極端なシチュエーションを作り出して笑いとロマンスを描いていて、それと比べると本作は話のテンポも割合落ち着いていてじっくりと物語を語ろうとしているかに思えるが、それでもちょっと話を急ぎすぎたり極端に走っているように感じた。長年描いてきたリズムってのは変えるのが難しいのかもしれない。スクールランブルについて言えばそれが作品の特徴であり魅力となっていたのだが。
本作は登場人物の数が絞り込まれており、一人一人のキャラの描写が深くなっているのだけど、作者の力量がついていっていないように思えてならない。これまでと違う作風ってのは難しいんだろうなあ。私はスクールランブルのファンで、この作者の作風も好きなのだけど、安易なギャグや極端な展開を押さえてもっとじっくりと描かれた物語を読んでみたいなあと思っていた。だから今回のこの方向性はとてもうれしいのだが、まだ作者が慣れていないんじゃないかと思う。
ところで戦争中のアメリカの市街地空爆をさりげなく断罪してくれているのは非常に嬉しかった。こういうのってずっと誰かが子供たちに言って伝えていかなければならないと思う。
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