新フォーチュン・クエスト10 キットンの決心 |
一族の試練に一度失敗したときに一緒に記憶喪失になって生き別れた妻がいると言い出したキットンだったが、ついにその妻の居所が見つかった。しかし彼女は未だに記憶を失ったまま、拾われた家で仲良く暮らしているという。なかなかつかない決心をつけたキットンは、心配する仲間たちとともに彼女に会いに行く。独自ファンタジー世界での貧乏で愉快な一行の冒険を描いた新シリーズの10巻目。
という人情話っぽいのがメインなのと、今後の一行の冒険の筋道みたいなのが語られている。
まず人情話のほうは、どこかで読んだことのあるような話で、きっと退屈だろうなあと思いながら読んでみたが、意外と普通に楽しめた。頑ななオヤジという定型がシンプルな拒絶だけであっさりと描かれており、展開があんまりベタベタしていないところが良かった。でも予想の範囲は超えず。
これからの一行の冒険について。各所に出現した昔のモンスター、それにそれらと関係が深いと見られる謎の商人を調査するために、ついに傭兵がかき集められることになった。かわりものパーティだった一行がそこそこの有名人になり、いい扱いを受けるようになっている。うーん。こんな展開望んじゃいないと思うのは読者の勝手なのだろうか。
作者はこのシリーズをどこに持っていきたいのだろう。前巻でホワイトドラゴンの子供シロちゃんがメンバー全員を乗せて自由に飛行できるようになってしまったり、エルフの子供ルーミィが空を飛びながら魔法を撃つという特異な才能を見せるようになり、今回キットンは妻がいるという設定を現実のものとした。
クレイは自分の持っている剣が祖先の伝説にあるシドの剣かもしれない。トラップは地方の盗賊団の跡取り息子。でもってこの二人はたいそうモテるという設定が前巻でおおっぴらなものとなった。最初のキャラ紹介見ていまさらながらに驚いたのが、この二人の身長がそれぞれ188cmと180cmということ。主人公も売れっ子作家に近づいていっているし。
そういえばエルフ族の宝なんていう伏線も最近用意された。今後はそっちの方面に話が進むのかも。
相変わらずそこだなスプレーみたいな小ネタに笑った。私がこの作品に期待しているのは、ちょっと変わっているけどそんなに人並み優れていない一行が、貧乏で数少ないお金をやりくりして、怪しい通販で買ったアイテムで窮地を切り抜けたりしながら、一見地味で歴史に名は残らないけどあっと驚く冒険をしていくような展開だ。この思いは他のファンとそんなに変わらないと思うのだけど。
作者が英雄の成長物語を書きたいというのなら既にデュアン・サークというシリーズでやっているはずなのに、どうしてこっちのシリーズでもやってしまうのだろう。シリーズ各巻についている冒頭の文章の結び「彼らの目的は……まだ、ない。」はいつか消えてしまうのだろうか。
続きを読もうかどうかもう一回検討しなおしている。
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