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変見自在 サダム・フセインは偉かった
元産経新聞記者による辛口政治コラム。扱っているテーマは大きく国際政治の闇と役人の不正。題にあるようにサダム・フセインがイスラム世界の中にあって女性を大々的に社会進出させるなど脱宗教を図って国を発展させたのに、それが気に食わなかったアメリカに叩かれたのだと大国の身勝手さを暴いたりしている。

私は週刊新潮のモノクロページの最後に載っていたこのコラムが好きで、週刊新潮を手に取るとまっさきにこのページを読んだ。このコラムを読むために週刊新潮を買うことも検討したが、ほかの連載記事がどうしても自分に合わなかった(というかぶっちゃけどれもクソつまらなかった)ので、ときどき何かで手にとったときしかこのコラムを読まなかった。それがこのたび単行本としてまとめられたのだから、本屋で一応パラパラとページをめくってすぐにレジに向かった。

ああ面白い。これだ。このキレ味。週刊誌連載だと毎回一ページなので簡潔にまとめられている。国際問題などを語るのにダラダラした文章はいらない。尽きぬトピック。単行本だと一回4ページ分になっていて、それが数十篇収められている。

最初の一篇からして衝撃的だ。ビルマはイギリスの植民地支配を受けていた国で、大戦中日本も占領したが戦後独立する。イギリスの支配を受けていた国は大抵英連邦に入るが、ビルマは拒否して英語を外語大の科目から外して日本語を入れたらしい。イギリスは怒り、国父アウンサンを謀殺してその娘を引き取って育て、大きくなったら逆にイギリスの代弁者として送り返した。それがアウンサン・スー・チーだというのだ。この話はよほどインパクトが強かったのか、単行本第二弾のタイトルにも使われた。

その他、欧米の先進諸国が植民地でやってきた悪行をこれでもかと挙げている。なかでも一番ひどいのはスペインだろう。すさまじい数の混血児が生まれた理由。なまけものの南国系原住民を大量虐殺の末に絶滅させ、代わりにアフリカから黒人を連れてきて農園で働かせた。

インドのチャンドラ・ボーズは、日本軍のインパール作戦と共に行動してインドの独立のために動いた人物として知られているが、イギリスで教育を受けたことが影響したのか、日本軍が敗れたあとは中国共産党かスターリンを頼ろうとしていて、日本を切り捨てたと批判している。それはちょっと言いすぎのように思うが、こういうことが今の日本とインドの距離の理由になっているのかもしれないなと思った。

バターン死の行進が馬鹿げたものであることを書いている。ある女性ジャーナリストが実際に歩いてみたら、腹を下していても楽に80キロ踏破できたという。日本軍三万に降伏した連合軍七万人は伝染病で弱っていたというが、それでもあまりに不自然な話ではないだろうか。健常な人間なら一日で歩き通せるだろう。日本軍は捕虜をただ歩かせただけで、虐待の事実はない。私がネットで聞いた話では、オーストラリアでは戦争の記憶を伝えると称して子供たちにこの「死の行進」のことを実際に従軍した軍人から教えているらしい。ロクに戦争に参加しなかったオーストラリアですらこの図々しさだ。

日本は敗戦後賠償したが、日本から賠償を取り立てる行列の中に、途中まで一緒に戦っていた枢軸国イタリアと、永世中立国スイスも並んでいたらしい。特にスイスはナチスが虐待したユダヤ人の財産を没収したりもしているとのこと。

あのポール・マッカートニーが反捕鯨主義者で、日本のことを「人間の友、鯨を食う日本人は人肉食い野郎だ」と非難したという。

ロシアの入れ子人形マトリョーシカは元々日本の箱根から伝わったもので、ロシアの博物館に行けばはっきりとそう説明されているそうだ。ロシアは国際的に見て日本にひどく当たっているが文化的にはフェアだったと言っている。それと比較して、日本のアシックスのアメリカのスタッフが独立して立ち上げたナイキだとか、日本の空手から派生した韓国のテコンドーなんかは文化的な恥知らずだと断罪している。

大戦の最初ベトナムはフランスが植民地にしていたが、フランスはナチスにやられて枢軸国側のビシー政権になった。日本はビシー政権と同盟関係にあるからベトナムへの進駐を希望して伝えたが、白人のものを有色人種が利用するなど信じられないと猛反発にあったという。結局日本は進駐し、そのあいだにフランスは連合軍の手に取り戻されて再び敵になり、それでも約半年間日本は進駐を続けたが結局フランスが立てたベトナムの政府を倒して支配下に入れた。その年は飢饉だったので日本はフランスの米蔵を解放してベトナムの人民に分け与えた。だが最終的に日本は敗れて再びフランスがやってきた。ベトナム人の反乱を恐れたフランスは、捕虜にした日本兵を歩哨に立たせて肉の壁にしたつもりだったが、ベトナム人は日本人をスルーしてフランス人を襲い、日本人もベトナム人に手を出さなかったという。

こういう真実について、大手新聞とくに朝日新聞が自分たちの意のままに書く御用学者を雇ってとんでもないウソを書いてきたことを非難している。

日本の明治学院中学生だった安藤優が発明した多極真空管が、世界初のコンピュータENIACに使われたらしい。

タイの首相だったタクシンは、日本が大戦中マレー半島でイギリスと戦っていたときにイギリスの味方をして一緒に蹴散らされてタイに逃げ込んだ華僑の子孫らしい。華僑は東南アジアでイギリスに取り入って現地で汚い仕事をして儲けていたという。日本がマレー半島のくびれに運河を作ろうとしたときも、華僑の国シンガポールの重要性が下がることを危険視した華僑がタイに働きかけて計画をつぶしたらしい。華僑は東南アジアに経済をもたらしたと言われるが、内実はこうである。

「東京アンダーワールド」という本で、戦後日本にチューインガムを広めようとして失敗した闇世界の黒幕が、暴力団を使って商店を脅して無理やり売らせて根付かせたらしいが、その暴力団の構成員はすべて在日朝鮮人だったという。ひょっとして在日企業として最もよく知られるロッテはその関係にあるのだろうか。戦後の朝鮮人の振る舞いがひどかったことも述べている。ロス暴動の原因も在米韓国人で、現地での悪評がすごいと言っている。

アメリカでの三菱自動車工業のセクハラ事件や東芝のノートパソコンの不具合事件では、日本は役人もジャーナリストもほとんど現場に人を派遣しなかったという。日本の外務省はいったいなにをやっているのか。日本企業や日本人を守ろうという意志はまったくないらしい。

大戦中ドイツ兵が銃剣で赤ん坊を突いたと言われ、それがアメリカの参戦を後押ししたらしいが、のちの調査でまったくのウソだということがわかったらしい。時代を経てドイツ兵がイラク兵になったがこれもウソだそうだ。同様に日本兵が中国人の赤ん坊を銃剣で刺したというデマも流れ、教科書に載りそうにもなったが、さすがにワルノリが過ぎるということで見送られたらしい。

中国の反日は沈静化しつつあるらしい。理由は経済的なこと。いつまでも反日を掲げていると、日本企業が進出してこないし、観光客も来なくなる。

戦前戦中の中国人の残虐性について。墜落した日本軍パイロットが残虐なやりかたで廃人にされたり(歯を全部抜かれ手の指を全部切断される)、目に針金を通された状態で死体で見つかったりしたから、日本軍は捕虜になるぐらいなら自決を勧めていたという。あの南京事件で知られる日本軍による南京侵攻の理由になったとされる通州事件では、日本人居留民がひどいやりかたで220人虐殺されたらしい。

東ティモール問題は、ポルトガルによって支配されていたころの歪みから生まれたもので、資源豊富な上に白人との混血児と純粋な現地民との対立から起きたものらしい。オーストラリアが露骨に軍隊で介入したりしてついに独立させてしまったが、指導者の顔はモロに白人系だったのだそうだ。その写真を紙面に載せた上で、日本からも経済援助が必要だと報じる新聞のあまりに読者を馬鹿にした報道ぶりを痛烈に批判している。

フィリピンは東南アジア諸国の中でも親米のキリスト教国で、あまり日本と仲がよくないとされるが、それもアメリカがかつてフィリピンを支配しようとして働いてきた残虐な仕打ちをきれいさっぱり消して日本のせいにしたかららしい。

と再びパラパラと本書をめくりながら面白かった箇所を要約してきた。あんまり書きすぎると見つけられて怒られるかもしれないし、書くほうも面倒で時間が掛かるのでこのへんにしておく。密度の濃い本だし特別に高いわけではないのでぜひ買って読んで欲しい。

一応批判もしておくと、毎回限られた紙面にいろいろ詰め込もうとして構成がいまいちに感じられることが多い。最後に少しだけ朝日新聞や役人を批判して終わるのは、オチをつけるというサービス精神なのか、単に形を整えたいだけなのか。

書くことがらが多いだけに、そのすべてに参考文献を示すわけにはいかないのだろう。結構ネタ元が記述されているが、述べられている事柄に比すと少ない。

具体的に人名を出して批判するところは恐ろしくもある。学者や記者の名前を出して抗議されないのだろうか。やはり真実には反論できないからなのだろうか。
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