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親切がいっぱい
泥棒やヤクザも含めたあらゆる職業が政府からの免許制になった空想近未来の日本で、ボランティアの斡旋業という新商売をしているという野勢兼太の個人事務所に、役所勤めをやめて事務員をしている真崎良子が、ボロアパートの立ち退き問題で住人たちと団結して戦っているところへ、意味不明の小型宇宙人が訪れる話。

作者は日本のSF作家としてそれなりの評価を得ている神林長平。それなりって。

こんなにつまらない小説をひさびさに読んだ。全部読んだのも最後に何かあるんじゃないかと期待していのことだが、何にも起きずに終わった。帰りにコンビニのゴミ箱に捨ててもいいぐらいの駄作。

作者は喜劇を意識して書いている。台詞の比重が多いことから、演劇の脚本みたいな感じで書いたんじゃないだろうか。世界設定と謎の宇宙人以外はまるっきり現代。登場人物はほぼ全員コミカルで色んな小ボケをはさんでくる。私が元々この手の作品を嫌いだというのも結構あると思うが、それでもつかこうへいとかを読んでここまでつまらないとは思わなかった。多分作者も無理をしているんだと思う。作者が書きたくて書いたんだとしても。

巻末の解説らしきものを神林長平のファンクラブの会長(高柳カヨ子)が書いていることからもこの作品の質が知れる。っていうか解説の質は良かった。なるほどこう読めばよかったのかも、と少し考えさせられた。

解説が言うように確かに総免許制の世の中とかボランティアの斡旋業なんていう世界設定は悪くないし、来たのに何もしないまるでネコのような宇宙人も愛らしい。でもほんとそれだけ。一番盛り上げようとしたであろうあの夜のシーンが拍子抜け。プロットはよく出来ているのだけど。

キャラクターに魅力が感じられなかった。喜劇に出てくる「ちょっとヘンだけどいい人たち」みたいな枠組みをただただ前に押し出してきて露骨すぎる。

これテレビドラマかなにかにして面白い俳優に演じさせたらまた評価は変わってくるかもしれないなあ。少なくともそんな感じで喜劇脚本を読んで楽しめる人じゃないとこの作品を面白く読めないと思う。

この作品を読んで得るものはあった。面白い小説とは何か。つまらない小説との違いは何か。そういうことについて少し考えさせられた。
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