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カワイコちゃんを2度見る
モテない男の卑屈な妄想がちりばめられたエログロナンセンスなマンガ短編集。ゾンビがはびこる空想世界でなぜかゾンビ退治のアルバイトをすることになった青年の戸惑いなど。全般的にSF的な要素が色濃い。

作者は青春鬱屈マンガ「僕の小規模な失敗」でプチブレイク中の福満しげゆき。相変わらず主人公があの自画像風のさえない目をした若者か、いがぐり頭の気の弱い少年が多い。あとは妄想丸出しの女性像と、やたら不思議な活力のある定番のおじさんなど。

結構ナンセンスがキツいので読む人を選ぶと思う。ゾンビ退治の連作はまだ分かりやすいほうだ。表題作は主人公の高校生の青年が、同級生のかわいい女性のブルマ姿に欲情したと思ったら、なぜか急に青年が宇宙人(メス)に犯されて、妙に倒錯した思索をしてプツリと終わる。

正直意味不明な作品ばかりなのだけど、妙にひっかかる作品ばかりだ。

最初の作品「ストーカー氏の恋」は、気弱な少年が美人の女子学生を想っていて、それを逆手にとってその女子高生は少年をもてあそんで快感を得る。そこには一種の愛があった。しかし女子学生の前にハンサムな男が現れ、彼女の貞操を奪い、そのときの様子を面白おかしく仲間に話す。それを横で聞いていた少年が男に喧嘩を売る。その間、近くに少年がいないことに気づいた女子学生は寂しそうに彼の名を呼ぶ。女子学生は遅れて参じた少年に当たって終わり。うーん。あ、これはちゃんと話がうまくできてるな。

以降は私の解釈というか評論に当たる部分なのだけど、作者は多分恋愛というものを虚ろなものとして描いているのだと思う。

モテない側の人間だと自ら認める作者。女を得ることへ駆り立てられた作者。そうして努力をして、一人の魅力的な女性を伴侶として得ることになったのだが、あの頃の想いとは一体なんだったのかという疑問が沸いてきたのではないだろうか。

だから多くの作品では最初に一般的な男の生活が描かれ、そこから奇妙なズレを起こして物語をおかしな方向に持っていく。

合コンの数合わせで呼ばれた少年は、なんと「全魚人」の女性とカップリングさせられてそのままホテルへ。単なる魚と交尾し、さらにシュールなオチというかサゲへと進む。つまり女性を魚に置き換えて見せたわけだ。女性が魚(のメス)に置きかわったことで、恋愛ってなんだろう、という思考実験になっているわけだ。

私がこんな解説をして見せてもあんまり面白くないかもしれない。作者は自分で自分のことを低学歴で頭が悪いと言っているように、きっとこういう抽象思考が苦手なのだと思うのだけど、こうやって自分の不可解な想いをなんとか物語に落とし込もうとした結果として、感覚的にとても分かりやすく「常識(恋愛)ってなんだろう」という問いかけをしている。これが作家なんだなあと改めて思う。

と言いつつ、よほどのマンガ好きでない限り、この作品集は買わないほうがいいと思う。
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