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インテルを蘇らせた東北大学の大見忠弘
半導体設計の研究者で東北大学教授の大見忠弘が、半導体製造に欠かせないクリーンルーム(チリやゴミの極端に少ない部屋)の研究をして作り上げて論文に書いたところ、インテルの技術者がやってきて指導を仰いだらしい。結果としてインテルの生産性が飛躍的に上がったそうだ。

著者は科学ジャーナリストを名乗る馬場錬成。毎日新聞の論説委員だったキャリアがあり、政府の各種委員会のメンバーにもなっているらしい。自らの持つメールマガジン(?)「馬場徒」で結構多く文章を公開している。バックナンバーがウェブで読めるようになっている。

大見忠弘という人とその仕事を教えてくれたことが大きい。技術指導ということでインテルに行ったのだが、その果たした役割は経営の領域にまで踏み込んだものだと言える。向こうの技術者にこれまでのやりかたを正直に報告させるために、これまでのずさんなやりかたが明らかになっても技術者を罰しないということを経営陣に飲ませたり、予算がこれだけ必要だということをゴードン・ムーアに強く示したりしたそうだ。

この文章を多少なりともパソコンに詳しい人が読んだら、あのインテルを日本人が支えたのか、という感慨がある。もっとも、インテルが世界初のマイクロプロセッサを作ったのも日本からの発注と技術者派遣があったりして、日本との関わりはかなり深いみたいである。

私はパソコンを自作(というか組み立て)することに興味があるので各種専門用語は大体理解できたが、多分それらの用語を知らなくても、十分に解説されているのでとても分かりやすいと思う。私には多少クドく感じられたがそんなものだろう。

全体の二割ほどを、日本企業や研究者の姿勢に対する批判に当てている。多少まとまりに欠けるように思うが、それぞれの批判は当たっていると思う。

ところで、インテルは結局彼に報酬を払わなかったらしい。彼もまたインテルに報酬を要求しなかったらしい。大見忠弘について言えば、研究者のやりがいということで説明がつくが、インテルはタダで教えてもらって恥ずかしくなかったのだろうかとふと思う。
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