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死の接吻 - 官民プロジェクトはなぜ失敗するのか
TRON はアメリカが潰した、という話を「民間伝承」とバッサリ斬り下ろし、日本で官民プロジェクトがことごとく失敗していくメカニズムを簡潔にまとめた文章。

最近 TRON の提唱者坂村健を持ち上げる動きが目立つ。彼は「せめて邪魔をしないでほしかった」と政府にぼやいたそうだが、彼がそもそも政府に働きかけて進めたプロジェクトだったので、邪魔も何もないのだそうだ。私はてっきり、民間だけでやっていたのを政府に邪魔されたのかと思っていた。

ちゃんと動く実物は、インテルの 80286 の上でエミュレートするだけのマシンで、完成品が出来る前から学校に導入しようという無謀な計画だったらしい。こういう計画を強引に進めようとしていたということなら、なんだ TRON もまた官の公共事業だったんじゃないかとなる。

作者の話は非常にもっともだが、やはり寂しいように思う。坂村健は、政府に働きかけるということにおいて指導力を発揮したので、行動力のある人だったのだろう。ちゃんとビジョンを持っている人が主導してくれるのであれば、金を使ってくれても良かったと思う。

それに、産官学共同のプロジェクトというのは世界各国で行われているのだから、官のバックアップのない中で民だけで世界と戦えというのは結論として後ろ向きだろう。

作者が淡々と挙げる、官民プロジェクトの笑えない話の数々は、国民の一人として納税者の一人として怒りを覚える。だけど私は、納税者としてはどちらかというと、税金返せというよりは、もっと有効に使えと言いたい。金は集まってこそ力になる。

国の補助金を受けて作者らが書いた論文が、国策に反するという理由から発表を禁じられたそうだ。なるほど、確かに私も、国はそんなに細かいことに気を配るな、彼らにある程度は好きにやらせてやれ、と言いたくもなる。しかし、国から補助金を受けておきながら、国の意志を無視して論文を書いた作者に、そこまで理があることなのだろうか。

「補助金と引き換えにインターネットの自由を殺そうとしているのである」と言うぐらいなら、補助金なんか受け取らなければよかったのだ。そんな作者に、国策を方向づけるところからやった坂村健と TRON を、そこまでこき下ろせるのかと言いたい。
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