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超帝国主義国家アメリカの内幕
マイケル・ハドソンが 30年以上も昔に書いた「超帝国主義国家アメリカの内幕」の初邦訳を紹介、序文を一部抜粋したもの。金本位が崩れたあとに起きた現在に至るまでの世界経済を、米国債本位によるアメリカの借金支配だと言っている。

週刊文春で立花隆がこの本の過去について述べてある箇所が興味深い。30年前に発売されたときは、日本でも翻訳して出版する予定だったのだが、アメリカからの圧力で立ち消えになってしまったらしい。そんないわくつきの本。

アメリカの超帝国主義・経済支配とはなにか。アメリカが債権国であったころ、途上国に貸し付けた金を回収するため、IMF を通じて途上国の経済体制を牛耳り、アメリカ的な市場経済を作ったり、アメリカ製品をもっと買うよう要求したりしたこと、だろうか。

パキスタンにも緊縮財政を求めたため、近代的な教育関連の予算を縮小せざるをえず、教育を宗教に任せたためにタリバンが生まれたのだと指摘している。

ところが、現在では状況は一変している。アメリカは世界最大の債務国になった。ではアメリカは弱くなったのかというと、逆にさらに強くなったのだということを、再版のときに書かれた序文で述べている。

東アジアの状況が端的にそれを語っている。東アジアの国々は、アメリカに「モノを買ってもらって」景気をたもっていることになっていて、そうして得た金はドルで保有したり、アメリカの投資会社や国債で運営している。特に、使い道のないドルを自国の通貨にしたら、自国の通貨の価値が下がって輸出競争力を失ってしまうため、余剰ドルでアメリカの国債や有価証券に換えるようにした。

アメリカは対外的には、多額の借金をして大量にモノを買い、米国債やドルを盾に居直っている。なにしろ、アメリカが破綻してしまえば、国債もドルも価値が大幅に下がってしまうのだから、アメリカ自身は赤字財政について他国からの圧力をまったく受けつけないからだ。

こうして、金本位制の廃止から最強の国際経済体質を作り上げたアメリカは、世界各国の経済をアメリカ依存させていった。本来なら地域ごとに経済圏が成り立ち、地域内で経済的に強い国が主導権を握るはずが、アメリカとの二国間での関係が強くなってくる。

興味深い文章だが、あくまで序文なので詳しい説明は書かれていない。それに、本文は 30年も前の話なので、コンテンポラリーな話題とはほとんど関係ない。今を知りたい私には、著者が現代を書いた本こそ読みたいところなので、どうも物足りない。

たとえば、日本がアメリカと同じようなことをなぜできないのか。余剰ドルを抱えるぐらいなら、日本やヨーロッパの製品を購入するために使える円やユーロを保有してもいいんじゃないか。まあ一つにはアメリカの圧力があるだろう。円やユーロの発行元である日本や EU の中央銀行またはそのバックがドルや米国債を大量保有しているからか。

ビル・トッテンの考え方を拡大解釈すると、ドルを入手することにより富を得ている一部の大手輸出企業が、ドル体制・米国債本位制を支えていることになる。彼らが富を得た裏では、国の外貨準備と経済体制が人質にとられているのだ。

日本に目を転じると、日本国債を直接購入している人・組織が一番イイところを握っている。たとえ我々も銀行・郵便貯金・生命保険を通じて国債の利回りの恩恵に浴しているとはいえ、その利回りの多くが運用機関の運営費自体つまり彼らの給料に割かれているのに、国債による借金は皆平等に背負わなければならないのだから、馬鹿げた話である。

最近は逆に、個人に国債を買わせようと PR 活動をしているようだが、週刊文春のレポートによると、個人に買わせたいのは 10年ものの長期国債らしい。運用機関が長期を売って短期を買っているようなので、長期のものの買い手が減っているらしい。つまり運用機関は、10年以内にインフレが起きる確率が高いとみてリスクを減らしていることになる。長期の方が利回りがいいのだが、インフレになったらむしろ損または機会損になる。

経済というのは単にしくみであって、どんなに中立なしくみの上にも、有力者による権力の集中が起きていることを、いやがうえにも考えさせられた。
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