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トリプルプレイ助悪郎
失踪中の流行作家を父親に持つ女性作家が、父親の仕事場である山奥の山荘に編集者とともに足を運んだ。謎の怪盗スケアクロウが、父親の最後の作品を盗むと予告していたからだった。一回盗みに入るたびに三人殺す、三重殺(トリプルプレイ)の案山子(スケアクロウ)。山荘には妹と執事が住んでいた。父親の最後の作品が盗まれるのを防ぐために、日本探偵倶楽部から探偵がきた。謎の怪盗とは?父親の最後の作品とは?三人殺されるのか?ライトノベルっぽいミステリー小説や伝奇小説を書く西尾維新によるJDC(日本探偵倶楽部)トリビュート二部作のうちの一つの小説。

最初は主人公による語りから入る。主人公の女性作家は純文学作家として細々とやっている。偉大な流行作家である父親は、自分と母親を捨てている。その父親が唯一引き取った妹は、最近娯楽小説家としてデビューして自分より売れている。ネガティブな語りがしずしずと続く。こういう負の感情って人の想いみたいなものが凝縮されていて魅力的だと思う。でもこの作品に関して言えば、どうもあんまり入っていけなかった。読んでいてふーんという感じ。

この作品の大きな特徴は、読者に挑戦しているところ。章立てが六つに分かれていて、四つ目の終わりに殺人が起きたことが分かり、謎の人物による読者への挑戦状が挟まれる。五つ目からが謎解き編になっている。

とりあえず読んでみての感想は、物語として面白くなかった。たぶん作者もそういうつもりで書いていないんだろうなあ。この作品は、ミステリー小説が好きで好きでしょうがない人が、ちょっと込み入ったものを読みたいというときに読むと良いんだと思う。なにせトリックがとてもトリッキーだ。ってなにいってるんだw

論理パズルとでも言うのだろうか。この作品の文章に嘘や矛盾はないという前提で、じゃあどうやってこの事件を説明づけるのか、という謎解きを披露してみせるのがこの作品なのだ。それが現実的にありえにくいことであったとしても大したことではない。むしろ、そんな可能性もあるんだよ、といった論理的な正しさをウリにしている。こんなことをする必然性なんてあるの?と普通の人なら引いてしまうような話だった。

まあそんな小賢しいメタ要素を少しは楽しめたのだけど、すべてが謎解きのために作られた人工的で微妙な作品だった。
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