DX71mk.II Custom Edition |
日本の音響機器メーカーC.E.C.のD/Aコンバータ。CDから読み出すなどした音声のデジタル信号をアナログ信号に変換する。24ビット96khzまで対応。D/Aコンバータ用チップを四個搭載してフルバランスで出力するほか、パワーアンプに直接接続できるプリアンプとしても使えるようボリュームを備えた可変出力もあることが特徴。美音系と言われる。
約十年前の製品とはいえ当時の定価が25万もした同社の最高機種が、生産終了となってからなぜか余っていたパーツがあったとかで再び作られて一部の店に限定で卸されて売り出されたモデル。私が最初に見たのはフジヤエービックという店で、アウトレットとして13万数千円の値がついていた。その後なかなか売れなかったのか12万数千円になったかと思ったら、ついには処分価格99,800円で売り出された。
なにしろいくら当時定価25万といってもデジタルの世界は技術の進歩が著しいので、いまさら24ビット96khzというと物足りなく思う人の方が多いんじゃないだろうか。同社の一番廉価なDA53というモデルですら24ビット192khzまで対応していて八万円ぐらいで買えるほどだ。だからこんな製品をいまさら買ったってしょうがない。私も最初はそう思ってスルーしようとした。しかし、十万ならアリじゃないかと思って結局買ってしまった。
というのも、いまだに音楽のほとんどは16ビット44.1khzのCDやそれに習ったデジタルデータ(をさらに圧縮したもの)で売られているからだ。こんな三十年以上も前の規格がいまだに使われているのは一体誰のせいなのだろう。Super Audio CDやDVD Audioといった規格がマニア層以外にはまったく受け入れられなかった(ついでに言うと音楽そのものも実のところほとんど進歩しておらず、50〜80年代とかの焼き直しばかりだったり、焼き直しどころか昔の音楽ばかり売れていたりする)。
とはいってもD/Aコンバータのチップはスペック以外にも年々進歩しているようだから、あんまり古いと最新の製品と比べて音質が落ちるかもしれない。ただ、いくらD/Aコンバータの核がD/A変換(デジタル/アナログ変換)にあると言っても、そのあとに続くアナログ回路というのはだいぶ枯れた技術だ。そこにこのDX71MKIIにはかなりの物量が投入され、なんと本体重量が10kg(!)もある。
さて肝心の音なのだけど、ピュアオーディオのコンポーネントの中でもこのD/Aコンバータというのはあまり音質として感じにくい微妙な部位なので聴き比べるのが普通は難しい。それでも、たまたま私が買い物に出かける前に聞いていたジュディ・アンド・マリーの曲の尖ったギターが、一聴して分かるほどに艶っぽくなっていたのが分かった。色々聴いているうちに、超高周波数帯の成分つまりノイズに近い響きを多く含むギターだとかオルガンなんかの音が結構分かりやすく違いが出ることが分かった。ボーカルは少しソフトになるけれど味わい深く感じられる。
まあでも逆に言うとそのぐらいの差しかはっきりと耳で聞き分けることは難しいのも事実であり、買った当初は何度もセレクターで機器を切り替えながら聞き比べてみたのだけど、ほとんど差を感じられないように思うこともしばしばあった。特に、最近のDTM用オーディオインターフェスの中で特に音質がいいと言われるRME Fireface UC(これも買っちゃったw)なんかと聞き比べると、本当に一部の楽器やボーカル以外は大した音質の差は感じられなかった。まあこいつも12万ぐらいする機器なので安物ではないのだけど。
そう言いつつも、結局このDX71MKIIで一番音楽を聴いているので、なんだかんだでやはり私の手持ちのDAC(D/Aコンバータ)の中では一番優秀だと思う。たとえ差がほんのわずかだとしても。とはいえ、それだったら金をケチらずに最新の機器をポンと買っていれば良かったんじゃないかと思わなくもない。同じ会社でDA1NというUSB接続までついた最新のスペックを持つフラッグシップ機なら実売17万で買えた。
なにげにリモコンが便利だった。光入力と同軸入力をリモコンで切り替えられる。プリアンプとして使っているわけじゃないので可変出力は使っていないけれど、ヘッドホン端子がついているのでボリュームをリモコンで調節できるのも良かった。このヘッドホン端子がまた結構音質が良い。ただし、ヘッドホンによっては音がこもる。私の手持ちでは、sennheiser HD650だと少しイラつくレベル、AKG K701でギリギリ気になるかならないか、beyerdynamic T1でほとんど気にならない程度だった。インピーダンスとの単純相関ではないようだ。どうしても気になるならデジタル入力の段階でトーンコントロールで調整すればいい。パソコンなら再生ソフトで調節してしまえばいい。
背面にある可変出力を使うとバランスヘッドホンを駆動できる、という記事がフジヤエービックのブログにあったので、無保証なのだけどついやってしまった。しばらく問題なく使えていたのだけど、あるとき急に電源投入時のボリュームがゼロではなく最初から一定レベルに上がるようになり、しかも左側だけ何かが振り切れたようにノイズが混じるようになった。いったんボリュームをゼロまで落とすと正常に戻ったので、どこか特定の箇所がいかれてしまったのだろうとは思うのだけど、一体どういう壊れ方をしたのか分からない。固定出力のほうはなんともないし、ヘッドホン出力にも影響がないので、単純に背面の可変出力だけ異常が起きているようだ。つなげていたULTRASONE PRO900 balancedの着脱コードの左側が最初少し緩くて接触不良を起こしていて、それがDX71MKIIの安全回路の許容を上回ったのかもしれないけれど、このへんはすべて私の憶測なので本当のところはよくわからない。
ヘッドホンなんてほんのちょっとしか電気が流れないので、アンプには大した負荷が掛かっているようには思えない。それでも、入力インピーダンスが数〜数十kΩのパワーアンプに入力することを前提にして、そこそこ高い出力インピーダンスで出力しているアンプに、高々40Ω程度のヘッドホンを接続すること自体、アンプに高い負荷が掛かる危険が高いらしいので、やめたほうがいいことは確かだ。それにもし問題なく接続できたと思っても、インピーダンスのミスマッチは音に悪影響を及ぼす可能性がある。私の場合はやけに高音が刺さるような音になった。でも音場がはっきり分かるほどに広がったのには驚いた。
2ちゃんねるのC.E.C.スレを調べてみたら、普通に使っていると思われる人でも電源投入時にボリュームが勝手に上がってしまう症状の人がいたので、C.E.C.にありがちな不安定な品質の疑いが濃いように思った。このメーカーはとにかく初期不良が多く報告されており、2ちゃんねるでは「CECクオリティ」という言葉がよく使われている。設計者のギリシャ人カルロス・カンダイアスという人の身内が中国で経営している工場で作られているからなんじゃないだろうか。
運悪く初期不良にあたってしまっても根気よくメーカーと交渉できる自信のある人ならば、私の中ではこのC.E.C.の製品は割とお得だと思う。私はほかにC.E.C.の製品はDA53を持っているのだけどこちらは特に異常はなかった。
でも2ちゃんねるのCECスレを読むと初期不良の報告がかなりあり、ひどいのだと交換してもらったものがまたおかしくなってもう一度交換してもらったという報告まであるので怖くなる。大量に出荷しているメーカーなら流通している製品の絶対量が多いから不具合報告が多くても仕方が無い側面もあるかもしれないが、C.E.C.は小さいメーカーなのだからなおさら気になる。ただ、DACというマイナーな機器を作っているメーカーは大体小さいところばかりで、その中であればC.E.Cは大きいほうだし、なにより海外ではなく日本のメーカーなので日本語が通じるのは大きい。まあ最近はまたCDプレイヤーにもデジタル入力やiPod接続をつけるのが流行っているので、評価の高いマランツのSA-15S2あたりなんかのほうがずっと安心できるし、ONKYOが六万ぐらいのお買い得なDACを出したので、そっちのほうがいいかもしれない。
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