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Valve X SE
真空管を使ったヘッドホンアンプ。駆動力を必要とする一部の高価なヘッドホンを使うのに必要になる。真空管独特のやわらかい音が特徴。

2ちゃんねるのヘッドホン関連スレでおそらく最も勧められることの多いヘッドホンアンプ。真空管を使っているとはいっても、プッシュプル方式というあまり真空管っぽさが出ない方式なので、本来低寿命で頻繁に交換しなければならない真空管の消耗も少ない。使わないときにこまめに電源をオフにしていて大体五年ぐらい持つらしい。真空管アンプなのでそこそこ発熱する。フロントパネルが暗い透明プラスチックなので、真空管の中の線がうっすら赤熱しているのが見える。

買う場所を選べば五万円程度で買えるが、品薄だったので私は家電量販店で58,800円の14%ポイント還元で買った。

音の特徴としては低音がよく出るらしい。らしい、と推量で言っているのは、自分の実感としてはそんなでもないから。ヘッドホン端子を持っている機器で色々聞き比べてみると、本製品はとてもすっきりした音を出していると思う。特に高音がよく伸びている。というのも、ヘッドホン専用アンプではない普通の機器の場合、どうしても高音が痩せてしまいがちになるからだそうだ。特にプリメインアンプのヘッドホン端子でこの傾向が強い。というのも、本来スピーカーに出力するための信号を抵抗で圧縮してヘッドホン出力としている製品が多いからで、こうするとインピーダンスの都合で周波数の高い高音が痩せがちになるからだそうだ。その点、最初からヘッドホンに出力することを想定しているヘッドホンアンプは最初からヘッドホンにとって適正な出力にしているのだからフラットな音が出る。

私の手持ちのヘッドホンとの相性を言うと、まずAKG K701との相性が良いと思った。ソフトな音で鳴らすK701と傾向が似ているからだと思う。ただし、一応真空管アンプだからなのか音が丸められているようなので、上流に美音系のDACを使うと二重に色づけされるのか少しボケたような音になった。モニター系の音を出す機器を上流に持ってきたほうが良いように思う。beyerdynamic T1との相性も良かった。元々のスペックが平均的に高くてフラットからだと思う。

一方でsennheiser HD650との相性はいまいちだと思う。両者とも低域がやや厚いので、重なって少し野暮ったくなる。一方で、さらに低域の厚いULTRASONE PRO900をつなげてみたら、そんなに気にならなかった。もともとドンシャリつまり高域と低域を持ち上げた特徴的な音作りなので、多少低域が増えたところで大した影響がないからなんじゃないかと思う。

真空管アンプなので中の真空管を交換することができる。12AV7とかECC82なんて呼ばれているタイプの真空管ならどれでも使えるらしい。私は2ちゃんねるのヘッドホンアンプ関連のスレで勧められていたJJ Electronic製のものを、秋葉原のラジオセンター1階にあるアムトランスという店で一個1,300円で二個買った。本製品には真空管が二個使われているので二個買わないといけない。時代がかった外箱をよくよく見るとMADE IN SLOVAK REPUBLICの文字が。交換すると音がよりダイナミックになった気がしたが、一方で少し粗が増したような気もした。ネットで調べてみるといくつか評判の良いメーカーがあるので色々試してみても良いと思う。私はもういいやと思っているけれど。

スルーアウトつまりつないだCDプレイヤーやDACの信号をそのまま出力して別の機器につなげることの出来る端子が用意されている。しかし、ポップノイズなど急激に強力な信号が発生するような機器をつなげてしまい真空管がダメになった報告があるので注意したほうがよい。

私はヘッドホンアンプを買うのはこれで二台目なのだけど、やはり最初に買うならこれぐらいのモデルのほうがいいと思う。二万とか三万とかだとあまり良い製品がない。中国製だとそこそこのものが手に入るらしいけれど、向こうの通販サイトから直接買わなければならず敷居が高い。2ちゃんねるでも本製品かPROJECT Head Box II SEという四万前後の製品が一番勧められている。ヘッドホン端子を持つ大抵の機器よりも音が良いと実感できると思う。これより高いものとなると、LUXMAN P-200という八万ぐらいのものや、Audiotechnica AT-HA5000なんていう十万前後の製品になるらしい。

フジヤエービックという販売店が、本製品の開発元である東京サウンドと企画して、Valve X PBという改良型の製品を出しているのだけれど、こちらは2ちゃんねるではあまり評判がよくない。Valve X SEの特徴である低域の豊かさがあまりないのと、それ以外にパワーアップした要素が見当たらないことが理由らしい。私は聞き比べたことがないので分からないが、あまり反対意見はなかったので多くの人がそう感じているのだと思う。

本製品には色々と欠点があり、真空管の寿命、ポップアップノイズに対する脆弱性、独特の色づけ、発熱の多さ、さらに本体サイズの大きさを挙げる人もいて、それらの点について納得しなければならないのだけど、それでも定番として君臨しているのでとても優れた製品だと思う。もし本製品を買っても満足できなかったのであれば、そもそもヘッドホンアンプという製品自体がマイナーでコストパフォーマンスの悪いものだとあきらめればいい。
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