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それでも町は廻っている 8巻まで
にくらしいほど生意気な下町の女子高生嵐山歩鳥は、近所のばあちゃんが急に思いつきで始めたいい加減なメイド喫茶でいい加減なメイドをやっていた。幼馴染の青年やしっかりもののクラスメイトや独立独歩の先輩、八百屋や魚屋やクリーニング屋のおやじ、天敵の数学教師などが店につどい、抱腹絶倒の日常を繰り広げる下町コメディマンガ。

2010年10月にアニメ化されたものを見て引き込まれたので原作にも手を出してみた。

主人公の嵐山歩鳥のあまりのアホっ子ぶりに惚れた。この作品には沢山の魅力が詰め込まれているけれど、やはりこのヒロインあってのものだと思う。若い警官にケンカ売るわ、近所の中学生を30分追い掛け回すわ、数学教師の胃を痛めつけるわ、周りに迷惑ばかりかけている。それだけだと嫌なキャラになるところだけど、ちゃんと悪行が自分に帰ってきて後悔することになるところが憎めない。

そんな歩鳥に惚れている幼馴染の魚屋の息子真田くんが彼女目当てにメイド喫茶にかよって彼女の天然ぶりに振り回されたり、真田くんのことが好きな万能超人辰野俊子が彼目当てにメイド喫茶にバイトすることになり思い切った一歩が踏み出せず悶々としたりする。

歩鳥には年の離れた弟と妹がいて、まとわりついてくる弟と妹を疎ましく思い本気でケンカしたりしながらも仲の良いところを見せる。弟はまだ小学生の普通の悪がきなのだけど、なぜかクラスの一人の気の強い女の子に気に入られて恋愛ごっこに付き合わされて、まだそんなことが分からないので戸惑うという話があってとても良かった。

歩鳥はアホな性格をしているわりには頭はそんなに悪くないのだけど、数学だけはとても苦手としており、居残り授業の常連となっている。絵に描いたような数学教師の森秋夏彦が彼女の扱いに手を焼く。なぜか歩鳥は教師である森秋に惹かれていくのだけど、森秋からはさっぱり相手にされない。

歩鳥は自分よりもいい加減なところのある先輩の紺双葉に対しては世話をやきたがり彼女になつく。金髪で一人暮らしですさんだ生活を送っているちょっと不良な彼女には甘えんぼなところがあったり。エレキベースを弾くので歩鳥たちを誘って学園祭バンドをやったりする。作者はどうもこういう先輩キャラが好きなようで、「ネムルバカ」「木曜日のフルット」にも魅力的な先輩と振り回される後輩というシチュエーションが描かれている。

魚屋と肉屋とクリーニング屋の親父の幼馴染トリオ、松田優作のなりそこないのようなしょぼい警官、メイド喫茶のばあちゃん、歩鳥の両親、骨董屋のおねえさんなど、下町の魅力的な登場人物が多く出てくる。これ実写でテレビドラマに出来るんじゃないだろうかっていうぐらい分かりやすい。一方で急にSFっぽい話が始まることがあるところがウケる。

このレビューを書くために少し読み返してみたのだけど、結構声に出して笑える箇所が多くて、ギャグマンガとしてもすごいと思う。魅力的な登場人物、ちょっと恋愛もあり、わずかにエロいシーンもありながら、なんと泣けるような感動話まである。これ、名作だと思う。マイナーな漫画誌の連載から深夜でのアニメ化にとどまるのは非常にもったいない。

やっぱりヒロインがアホっ子っていうのはまだ時代が早いのかねえ。ちびまる子ちゃんが流行ったんだからゴールデンでヒットしても不思議じゃないと思うんだけどなあ。まる子はまだ小学生だからみんなに愛されたんだろうか。やっぱり女子高生にはこうあってほしくないというものがあるんだろうか。
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