彼氏彼女の事情 1〜2巻 |
優等生の高校生女子・宮沢雪野はみんなから慕われる人気者だった。しかしその実態は単なる見栄っ張りだった。そんな彼女の外づらに騙されたのか、学年一の優等生で美形で性格のいい高校生男子・有馬総一郎が彼女に好意を打ち明ける。彼のことをなんとも思っていない彼女は家で得意になって妹たちにそのことを自慢するが、そんな慢心が油断を生み、うっかり素のままの性格を彼にさらしてしまう。90年代から人気のあった少女マンガ。
アニメ「エヴァンゲリオン」を全国的にヒットさせたガイナックスがアニメ化した人気作品。私もアニメを見てハマり、原作が出るたびに買っていたが、つまらなくなったので私の本棚には17巻までしかない。大好きな作品だったし、そろそろ再読してもいい頃合だと思ったので、もう一度最初から読み返してみた。
やっぱり素晴らしい。第一話で一気に、なんちゃって優等生の彼女が、何かを届けにわざわざ家まで来た彼に、人違いで蹴りを入れてしまって性格がバレるところまでテンポよく描かれている。そこから彼のほうが本性をあらわして彼女を脅迫して仕事をさせて利用するようになり、彼女は仕方なく彼に従うようになる。最初の告白はどこにいったやら、彼の言いつけは容赦がないのだった。と言いながらなんだかんだで二人は親しくなっていくのだった。でも今度は彼女のほうが彼を好きになっていき、今の関係が急にみじめに思えてきてしまい…。
作者は自分の作品を読み返さない主義みたいで、特に連載初期のは自分らしくないと思っているみたいなことをあとがきで述べている。でもほんとこの部分が一番すばらしいと思う。感情を爆発させたあとで「……へへへ 泣いちゃった」って照れるところなんか最高。ああ読み返してよかった。相思相愛になる場面を言葉ではなく動作でやってみせるところなんてすごい名シーンだと思う。
マンガ表現も冴えわたっているんだよなあ。2巻で彼女と彼のリアクションの違いをほとんど同じ展開のページで表現して二人のキャラの特徴を描いていたり、シリアス顔の中に効果的にデフォルメ顔が混じったり、相思相愛になるまでの心の揺れ動きが絶妙だったり。ギャグ的なものもあって結構笑えるし。
ただ、残念ながらこれがこの作品のピークなんだよなあ。相思相愛になっちゃうからしょうがないとは思うんだけど、3巻以降はなぜか表現も下降線を描いていく。コマ割のレトリックはもう使わなくなっちゃうし、やたら崩したデフォルメ顔が節操無く出てくるようになってしまうし。
初期の読み切りが一巻には収録されている。「トラとカメレオン」この作品は少女マンガに多少慣れていないと読みにくいかも。以前男からブスだと言われたことを気にしていつも下を向いていた女があるとき怪我をしてしまい、その原因となった不良っぽい男が責任を感じて期間限定で世話をするようになり親しくなっていくという話。いろいろ洗練されていなくて余計な設定やら所作やら表現があってすっきりしないのだけど、じっくり読んでいけばそれなりに楽しめると思う。
この作品を本当は強く勧めたいところなのだけど、巻を追うごとにつまらなくなっていくので微妙なんだよなあ。いまなら最近実写映画化された河原数音「高校デビュー」のほうがいいかな。
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