進撃の巨人 13巻まで |
人類は謎の巨人に捕食されていた。大砲程度の武器しか持たない人々は、際限なく現れる知能の低い巨人たちから身を守るため、高い壁を何重にも築いてかろうじて文明圏を保っていた。しかしあるときその壁は破られてしまう。巨人と戦うための軍隊に志願した少年エレン・イェーガーたちが訓練生として配属されてからの波乱万丈の日々を描く。少年マンガ。
2013年にアニメ化されて大ヒットした作品。原作マンガは累計3600万部を超える売り上げがあるらしい。ネットではアニメ版のほうが出来がいいという話で、作者自身も謙遜してかそのようなことを言っているらしいのだけど、なにぶん設定が色々あってアニメでは描かれていないことがあるんじゃないかと思ってこの原作に手を出してみた。その点について言うとアニメで十分だと思った。
世界観がとても独自で素晴らしい。ベースは中世末期ぐらい?最強の武器が大砲なのだけど、ガスボンベやワイヤー射出装置や折り刃があるので現代的な技術も同居している。巨人は驚異的な再生力を持ち、弱点であるうなじの部分をえぐりとらなければ倒せないため、命中率の低い大砲ではあまり有効な攻撃が出来ない。そこで兵士たちは、ガスボンベで駆動するワイヤー射出装置によって空中を機動して身長数メートルから十数メートルぐらいの巨人の首の裏に近づき、巨大なカッターナイフのような刃物でうなじを切り裂くことで巨人を倒そうとする。このワイヤーアクションがこの作品の戦闘シーンの目玉になっている。
冒頭で主人公エレン少年は突如侵入してきた巨人に母親を食い殺されてしまう。その日からエレンは巨人への復讐を誓う。その傍らには、幼き日にエレンに救われた少女ミカサがいた。二人のほかに幼馴染の頭脳派美少年アルミンがいて、三人で訓練生に志願する。そこからしばらく訓練生として同期の個性的な仲間たちとのいざこざや友情が描かれると同時に、訓練内容やその後の進路の話なんかで世界観が語られていく。訓練が終わったあとは、調査兵団に加わって巨人との戦いとこの世界の真実への探求が始まる。
この作品がほかと違うのは、主人公が強力な力を手に入れて敵をバッタバッタと倒していくのではなく、組織に組み入れられて上司や先輩や社会との軋轢の中でやっていくところ。このへんなんだかガンダムとかエヴァンゲリオンにも似ている。作中で明示的に説明されているとおり、軍隊に入るときにイニシエーション(通過儀礼)として一度自分を捨てさせてから教育する半ば洗脳のようなシーンが描かれている。謎の巨人が襲ってくる変わった世界を舞台にしながら、私たちにとって身近な(?)人間関係や組織が出てきて、正直あんまりこういうの好きじゃないんだけどなんだかんだで引き込まれてしまう。
そんな力学の働く組織が人類の敵である巨人の謎に徐々に迫っていく。主人公エレンの父親は失踪しているのだけど、巨人に潰された自宅の地下室に何か残しているらしくて、なんとかそこに行って調べたいのだけどすでに巨人に浸食された場所にあるので困難が伴う。また、一見なんの知能もない巨人たちだけど、そんな巨人たちに内通している人間がいるのではないかと疑われていて調査したり、巨人に関する秘密を握っている謎の宗教団体に探りを入れたりする。
とまあこれだけ面白い要素があるのだけど、一方で読んでいてあまり噛み合わないというか、妙なノリのシーンが結構あった。序盤なら「芋女」とかアニとの格闘のシーン、ハンジ分隊長やリヴァイ兵長の変わった人となりのように、面白くてクスっとくるのだけど妙に稚拙に感じられる部分が目立つ。こんなに売れてヒットしている作品なのに、微妙に下手気味な絵といい、ヘンに素人くさい感じがする。といってもこれだけ多彩なキャラを描き分けたり独自の世界観で城塞都市なんかを描いたりしているんだからヘタなはずはなくて、単に未成熟なだけなのだと思うけれど。
既刊13巻でまだまだ話が続くのだけど、読むに従って話が破綻してきているような気がするのもネットの評判どおりだと思った。ネタバレになるのでまったく説明できないのだけど、どんどん心配な方向で謎解きが進んでいっている。
アニメ版は2013年で唯一のヒット作品(ただしもちろん異論あり)と言われているほどの作品だけど、文句のつけようのない傑作ではないので、多少のアラや違和感を気にせずに作品の魅力を満喫できる人か、色々ツッコミを入れながら楽しめるような人が読むべきだと思う。普段あんまりマンガ読まない人とかには勧めないほうがいいかな。
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