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ソラニン
東京でしがないOLをやっていた芽衣子だったが、上司や仕事にうんざりして辞めてしまう。芽衣子は恋人の種田と同棲していて、種田は好きな音楽をやりながらバイトをして生計を立てていたが、芽衣子が仕事を辞めたと聞くと種田は音楽をやめて本気で仕事をしようとする。しかしそんな種田を見て芽衣子は種田に一度本気で音楽をやってみろと言う。未来の見えない若者たちの話。青年マンガ。

映画化されて一時期結構コマーシャルをやっていたのだけど、ASIAN KUNG-FU GENERATIONが主題歌をやるような映画なんてきっと自分の趣味には合わないだろうと思ってまったく見る気がなかったが、マンガが原作だと知って二冊しかないし読みやすそうだったので読んでみた。

作者がどういう意図でこの話を書いたのか知らないけれど、どう考えても主人公の芽衣子が恋人の種田を追い詰めていっている話にしか読み取れなかった。芽衣子は一応OLやっていたのだから二人の生活は主に芽衣子が支えていたに違いなく、だからこそ種田はバイトだけして好きな音楽に打ち込むことが出来ていた。しかし芽衣子は会社をやめてしまう。芽衣子は一日中ゴロゴロとゲームばかりしていて再就職する気はないようだった。そうなると男としては自分がそろそろ夢を諦めて平凡な仕事で生活を支えていかないといけないと腹をくくるしかない。しかし芽衣子はそんな種田に音楽を本気でやってみろと言う。

じゃあ作者は芽衣子を悪女として描いているのかというとそうではなくて、後半は種田を追い詰めてしまった自分を反省している。でもなぜか芽衣子も音楽を始めてしまう。なんにもなかった芽衣子には、種田とのつながりでかろうじて音楽という選択肢が残っていた。でも当然能力もなくプロになろうという気もなくて、自分の生きる意味みたいなものを探すための行為のようだった。

たぶんこの作品は、自分が何か夢を追いかけるわけでもなく、かといって誰かの夢を支えるわけでもなく、色々と夢見がちだった人のことを慰めているんだと思う。そりゃなにか自分に才能があれば努力もするだろうし、でなければあきらめて仕事に打ち込んで家庭を築くことも選ぶだろうけれど、そのどちらも自分には厳しいとなったら、他人に夢を託したくなったり、何か自分でも輝けるものを追い求めたくもなったりする。そんな人に対して、あなたもどこかで一瞬ぐらい輝いていたときがあったでしょう?と言っているような作品なのだと思う。

まあだから、平凡に会社勤めをしている大多数の人々の心にはあんまり届かないんじゃないかと思う。五月病の人には効くのかな?自分はこの手の底辺ものが比較的好きなのだけど、いまいち感動しそこねたのはそんな理由からなんだろうか。もっと若い頃に読めば感動できたんだろうか。両想いで同棲していて夢破れたらあとは働いて家庭を築けばそれでいいじゃんと思ってしまう。暖かい仲間たちだっている。世の中にはそこまでたどり着けない人も多いのに。あときっと足の引っ張り合いだって普通はあるはずなのに。

登場人物が主人公も含めて総じてブサイクで、なのにどこかみんなかわいい。メガネデブや毛深くて濃い男ですらどこかかわいげがある。芽衣子のそばかす顔もかわいい。かなり高い画力だと思う。

社会に出る前にもんもんとしたことがあり、恋人がいて一緒に悩んだり喧嘩したりしたことがあり、どうしようもないけれど暖かい仲間たちがいた、そんな人たちがこの作品を読んだら感動できるかも。
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