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僕らはみんな河合荘 5巻まで
念願の一人暮らしをするつもりだった高校生男子の宇佐くんだったが、言われた場所に行ってみるとそこは下宿舎「河合荘」だった。そこで宇佐くんは小柄でおとなしい性格をした読書好きの先輩・河合律に一目惚れするが、小悪魔のような女二人とドMの同居男に邪魔される。少年マンガ。

2014年にアニメ化されたのを見て、透明感あふれる絵で描かれるヒロイン河合律のかわいさとコミカルなストーリーに魅了され、原作を読みたくなったので読んでみた。作者の宮原るりは、女子高生の勘違い恋愛研究を描いた「恋愛ラボ」の作者でもある。

この作品を一言で言うと、男女が一つ屋根の下で暮らす下宿でのラブコメなのだけど、下世話で男くさい青春ものではなくて、そこそこ純真な主人公の宇佐くんのことを小悪魔女子二人がいじりまくったり、男に対して免疫がなく警戒半分天然半分の河合律がなかなか心を開いてくれなかったりするのを楽しむ感じ。

小悪魔Aの真弓は、美人なメガネ巨乳OLで、宇佐くんのことを童貞だのなんだのと言って罵ったり、宇佐くんが河合律とうまくいきそうになるとぶちこわしにかかったりという悪女ぶり。でも当人も男運が悪いというかちょろくて性格が悪いので良縁に恵まれず30手前で行き遅れ気味で、男に振り回されて躁鬱を繰り返す楽しい人。なんだかんだでこの作品のギャグパートの多くを引き受けている自爆キャラ。

小悪魔Bの彩花は、化粧と面の皮でぶりっ子キャラを維持して男を手玉に取るサークルブレイカー(サークルを崩壊に導く女)。宇佐くんや真弓のことをよくからかうが、逆にすっぴんや素の性格の悪さを真弓から突っ込まれる。年は二十代前半と真弓よりだいぶ若いけれど遠慮ないやりとりが楽しい。

ヒロインの河合律は、主人公の宇佐くんの一個上で、宇佐くんは河合律のことを「先輩」と呼ぶ距離感。でも河合律は背が低くて天然気味の少女なので、恐る恐るではあるけれど宇佐くんは徐々に距離を詰めていこうとする。でも彼女は本が大好きで基本的に本のことを第一に考えている。宇佐くんのことをちょっとは視界に入れているけれど、二人きりで下校しても彼女は歩きながら読書するほど。はっきり言って変人。宇佐くんは彼女と仲良くなろうと自分も本をよく読むようになる。この二人の間の甘くて苦い青春の空気と、それをぶちこわす小悪魔たちのギャグがこの作品の中心になっている。

正直言って小悪魔たちのいじりが結構えげつなくてちょっと引いてしまうこともあった。作者は女性らしいのだけど、あけっぴろげでオヤジくさい下ネタが結構出てくる。確かに面白いんだけど、こんな人たちが自分の青春の中にいたらすごくイヤだろうなあと宇佐くんに同情してしまう。でも彼女たちが嫉妬(?)するほど宇佐くんは恵まれているんだよねえ。この作品自分は結構面白いと思って見ていたけれど、アニメーションのクオリティの割にそんなに円盤(ブルーレイやDVD)が売れていないことからも、敬遠した人が少なくないのかなと思った。

ほかに主要登場人物として、寮母っぽいかわいいおばあちゃんと、いつも作務衣っぽいのを着ている無職でドMの通称シロさんという前髪で目が隠れたキャラがいるのだけど、キャラ的になんか微妙。おばあちゃんは年の割に性格が若くて割と細かいところまで目が行っているところに違和感があって、おばあちゃんというより何か超越した常識人的なツッコミキャラとして配されているだけのように思った。絵的にも童顔な割に常識ぶったキャラなのでちょっと気持ち悪い。シロさんはドMを安易にギャグにしすぎていて、笑いというよりお約束的な扱われ方で話の安定性に寄与している感じ。一応こいつがメインのエピソードもあるけれど、あんまりこいつ自身の中には踏み込んでいかず、ゲストキャラの物語が描かれて終わってしまった。

読み終えてあらためて振り返ってみると、自分はヒロインの河合律がかわいいのが読み進めていった一番の理由だと思う。友達がほとんどいなくてもなんとも思っていないけれど、でもまるっきり一人がいいというわけではなくて、中学時代の友達に話しかけられたら普通に話すものの、その場面を宇佐くんに見られたことを必要以上に恥ずかしがるところなど、普段クールで感情の起伏が少ないのにちょっとしたことで笑ったり照れたりして感情をあらわにするところがなんとも言えない魅力を放っている。

小悪魔二人のいじりは楽しいんだけど、この二人にはそんなに魅力を感じなかった。真弓が実は学生の頃は仲間内で一二を争う美女で男たちのあこがれの存在だったことが作中だいぶあとになって語られるのだけど、これをもっと最初の方で描いていたらキャラづけが最初からはっきりしてもっと楽しめたと思う。もう登場の頃からクダまいていてダメ女っぽかったのでそのイメージのまま行ってしまった。絵的にもあんまりスタイルよくないバランスで描かれているし。30に近づいていっている女としてはこれ以上にない絶妙な描かれ方なのだけど。もっと掘り下げた過去なんかの描写があったら大好きになれそうな気がするのだけど、どうなんだろうなあ。

萌え作品の判子ものっぽい感じがないので、自然な青春ラブストーリーにえげつない小悪魔ツッコミを楽しむ自信があれば読んでみるといいと思う。
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