バカとテストと召喚獣 11〜12巻 |
成績別のクラス分けをしている進学校の文月学園では、テストの成績により強さが決まる「召喚獣」という人形を操って戦わせるシステムを用いて、クラス対抗で教室の設備を掛けて戦う「試験召喚戦争」が開かれていた。自他ともに認めるバカの吉井明久らが属するFクラスは、ついにAクラスを追い詰めたかに思われたがノーゲームになり、今度は学年対抗で3年生との大戦争に突入する。ゲーム感覚の学園もの人気ライトノベルシリーズの本編最終巻。
いままで楽しんで読んできたので当然この巻も読んだのだけど、あんまり面白くなかったので他の作品へのレビューのついでにこの作品への愚痴を書いたところ、つまらなかった理由をもっとちゃんと書いておくべきなんじゃないかと思ったので、改めてここに感想を書くことにした。ネタバレがあるので注意。
二人のゲストキャラが本当に興ざめだった。まず留学生のリンネくん。カタコトの日本語で年下なのに訳知り顔で主人公の吉井明久らに曖昧なことを語る場面は読んでいられなかった。一言で言うと「なにこいつ」って感じ。結局こいつは中途半端に吉井明久の心を引っ掻いただけでその後はろくに登場せず消える。もう一人がラスボスの高城先輩で、ヒロインの姫路さんに対する明久の恋敵として登場する。こいつの立ち位置は正しいのだけど、振る舞いが中途半端に人間くさくて微妙な感じ。それに対話が冗長で締りがなくてなんだか女々しい。もうちょっと分かりやすくてすっきりした悪役であって欲しかった。
そして準レギュラーになっている百合キャラの美春とヤンデレ少女の玉野がうっとうしい。単に自分がこいつらを好きになれないだけなのかもしれないけれど、もっと親しみを持てるようなエピソードがないと好きになりようがない。こいつらがコメディパートの一端を占めるようになってきてだんだんこの作品で笑えなくなってきた。
前半は主人公たちが劣勢になる。吉井明久は正ヒロインの姫路さんや副ヒロインの美波に罪悪感を抱くし、吉井明久の親友の雄二はこれまでFクラスを率いて暴れまわってきたけれど今回は学年全体の指揮系統に組み込まれて思う存分に動けずBクラスのリーダーの久保にやりこめられてしまう。いったんはどん底状態に落ちる彼らだったが、大事なことに気付いて大復活を遂げ、勝利を目指して再び挑む、という王道で面白くなって当たり前の展開が繰り広げられるのだけど…。
吉井明久は結局最後に姫路さんを選ぶのだけど、その理由が過去の思い出で、しかもとってつけたようにこの巻でも語られちゃっているところが本当に興ざめだった。過去もいいけどいまの明久と姫路さんとでも結びつけるべきだったんじゃないだろうか。過去の思い出は明久の心の中にあり、明久はバカなのに頭の中で色々と考えて話が進んでいく。高城先輩の挑発により明久は考え過ぎの罠に陥ってしまうのだけど、それがほんとらしくない。明久は何も分からないバカってわけじゃないけれど、こんなことに思い悩むキャラじゃないだろうって思ってしまう。バカなりに不器用に自分の感情をはっきりさせようとしていくと込み上げるものがあったかもしれないんだけど、明久がなんか聡明すぎた気がする。題に「バカ」ってついているぐらいなんだから、良い意味でバカであれ、みたいなテーマが語られるべきだったんじゃないだろうか。
あと明久の悩みが、自分なんかよりもふさわしい相手がいるに違いない、っていうのだったら普遍的な悩みで読者の共感を呼びそうだけど、自分が足かせになってうんぬんっていうのはむしろもう既に付き合ってる人間の考えそうなことだし共感しづらいんじゃないだろうか。それに内向きの思考じゃなくてもっと対話で話が進んでほしかった。美波とは対話してたんだけど。美波のほうはフラれる側のせつなさみたいなものを自分は欲しがっちゃったけど、なんか明久を包み込んじゃった。
まあでもどっちつかずで終わらせることも出来たのにあえて決着させたことについてはありがたく思ったほうがいいのかなあ。といっても読んであんまり気持ちが盛り上がらなかったんだよなあ。せっかく明久と姫路さんが両想いになって通じ合ったのに、そして美波は振られてしまったのに、全然感動できなかった。っていうか美波とくっついてほしかった。姫路や美波には明久を好きになる理由が十分にあってすごくよく分かるのだけど、明久のほうはよくわからない。安易に「運命の相手」的な感じになっちゃってる。無駄かもしれない努力をする姫路さんに明久が感動していたっていうのもあんまりしっくりこない。明久自身に無駄な努力を諦めた過去でもあったのであれば別なのだけど。
ありがちな展開としていま思いついたのだけど、姫路さんの留学が実はウソで、明久が勝手に勘違いして熱くなって姫路さんに告白めいたことを言って、なあんだウソかみたいなのでうやむやになる終わり方だったらいかにもアニメ的で丸く収まった気がする。すっごいベタで見たくないけど。
雄二と翔子のほうの結末もとってつけた感がありありでさっぱりだった。前巻で対決しているんだから、そこで決着させたほうがよかったんじゃなかろうか。あと、作中ずっと雄二は翔子のことをなんとも思っていないようにしか見えなかったのだけど、これは自分の想像力の問題なのだろうか?
ムッツリーニもついでに引っ付けるかと思ったらスルーだった。
常夏コンビとの対決も最後決別しちゃって、てっきり再戦があるのかと思っていたら話が終わってしまった。そもそもこいつらとはなぜ因縁があったんだっけ。そういえば前に肝試し対決とか公開試合みたいなのとかやっていたなあ。でも動機が乏しいと思う。せっかく召喚獣同士による一騎打ちが行われるんだから、そこにいたるまでのドラマとか背負っているものや熱い想いがないと盛り上がれない。
それぞれの登場人物の召喚獣は外見的な特徴と持ち主の学力による強さという個性を持つものの、技とか特殊能力といった点でワクワクできなかった。審判の先生の教科によって科目ごとの強弱が決まるのは面白かったけれど、そこまで決まるとあとは召喚獣の操作技術と心の油断ぐらいしか戦闘を左右する要素がないのも盛り上がりに欠ける原因になったと思う。後半になって誰それにしか使えない技とか出てきたけれど、大してフィーチャーされなかった。試験問題を解くときに特定の条件を満たすと怪しいスキルを覚えたりしていたら面白かったんじゃないだろうか。
シリーズ全体をあらためて振り返ってみると、秀吉の姉が出てきたあたりが一番面白かった。他のキャラにも兄弟姉妹がいたらさらに楽しめたかも。あ、学年対抗の試合が少ないから難しいか。
予想外につまらなかったのでボコボコにけなそうと思って書いてみたけど、読み返してみると作品への歪んだ愛がにじみ出ているようなキモい文章になってしまった。たぶんもう再読はしないので自分にとってこの作品はそんなに大好きというわけではないと思うけれど、それでも頭で思っていたよりも案外好きだったんだなと思った。作者は次の作品の計画を立てているみたいで、基本的なコンセプトはこの作品と同じ方向でいくらしいので、楽しみに待つことにする。
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