XDP-30R |
日本の電機メーカーのパイオニアが開発した携帯型デジタルオーディオプレイヤー。小型ボディにDACチップを二個搭載し、バランス接続により広い音場でのパワフルな駆動に対応しているほか、microSDカードスロットを二基搭載しており、400GB以上もの容量に増やせる。
当初四万円台で発売したものの、曲選択などの使い勝手が悪すぎることが主な原因となって二万円台で投げ売りされていたので買ってみた。ネットの評判どおり音はよかった。
パイオニアは音響機器部門をオンキョーに売ってしまったので実質オンキョーの製品と言えるのかもしれないけれど、オンキョーからもほぼ同型のDP-S1という機種が発売されており、電源部分を強化する代わりにちょっと値段が高く設定されているらしい。
買う前に店頭で試聴してみたのだけど、そのときはなんだかカスカスな音がしたので買わなかった。のちに投げ売りされたときに、音はいまいちだけど安いしファームも更新されるみたいだし一台あれば便利だろうと思って買ってみたところ、予想外に音がよくて驚いた。なぜ店頭だと音がいまいちだったんだろう。試聴機はイコライザーの設定がおかしかったんだろうか?
まず普通のアンバランス(3.5mmステレオミニジャック)のほうで聴いてみたところ、8BAのJH Audio Angieが脈動感ある音で鳴ってくれた。Fiio X5 2ndのような独特な味付けはないけれど、元気で跳ねるような感じがする。ただ、音の密度感はそれほどでもない感じ。
あえてしばらくアンバランスで耳を鳴らしてからバランス(2.5mm 4極ミニジャック)で聴いてみたところ、正直そんなにはっきりと違いは分からなかったけれど、まあなんとなく脈動感がさらに上がった気がした。バランスには二つのモードがあり、AGCというGND分離にしたところ、落ち着いて音がよくなった。Balancedモードは少なくとも自分のAngieだと音が少し荒くなるように感じられた。たぶんこのあとアンバランスに戻したらバランスとの音の違いが分かりやすいのだと思うのだけど、面倒なのでそのまま聴き続けている。
NiceHCKのDZX-1+8だとアンバランスでは高域の雑さが目立って駆動しきれていなかったのに対して、バランスでは雑さがある程度緩和されたので、バランスは駆動力が高いと思う。でも、結局アンバランスでCHORD mojoで聴いた方がより雑さを抑えられるので、パワフルなヘッドフォンアンプには負けている。DZX-1+8は駆動しにくいのでしょうがない。まあでも雑さはイヤーピースを変えてSpinFitにしたら気にならない程度にはなった。
操作性に関しては、ユーザインタフェースは割とカッチリしていて分かりやすいのだけど、CPUパワーが弱いせいかガクガクする。たくさん曲を入れていると画面をスクロールさせるのが大変だったみたいだけど、私が買ったときはスクロールバーが実装されたので楽になっていた。画面で操作しなくても、再生と停止と曲送りは側面にある物理ボタンで操作できるし、ボリュームはつまみが用意されている。ただし、つまみは軽いので、ポケットから出し入れしているとたまに回ってしまうことがある。
スリープ状態にしておくとバッテリーの消費が激しく、一日二時間ちょっとしか使わなくても二日もたない。ファームのアップデートにより自動オフの機能がついたのもあって、基本電源オフにするようにしたら三日以上もつようになった。Linuxベースならともかく独自OSでこれだけスリープ時の消費電力が高いのはどうしてだろう。
電源オフの状態からオンにすると、これまで再生していた曲を覚えておいてくれるレジューム機能が実装されたのだけど、曲の再生位置までは覚えていてくれないので最初から再生されてしまう。簡単に実現できそうなものなのにどうしてだろう。
Bluetooth接続もサポートしているらしいけれどSBCのみなのでまったく試す気になれなかった。
この音質にしてこのサイズ感と割り切りは素晴らしいと思うのだけど、逆にそれが四万円台で売れなかった理由にもなっていると思う。シンプルに廉価モデルをソニーのウォークマンよりちょっと安くして出していれば売れたんじゃないだろうか。いまの日本は高いものと安いものしか売れないので、逆にCPUとバッテリーを強化して操作性をキビキビさせた高級モデルを出していたら売れていたかも。
ちなみにこの小型機種の前にオンキョーとパイオニアはレギュラーサイズ(?)のデジタルオーディオプレイヤーDP-X1とXDP-300Rを出しているのだけど、こっちはこっちで中国産だからかジャックが緩くなるという造りの悪さや、本体サイズが微妙に大きすぎて持ち運びにくいなどといった悪評がネット上にある。確かに自分も店頭で触ってみるとこれはちょっと大きすぎるなと思った。プラスチックで質感もよくないし。
とにかく音質は五万円クラスだし、操作性もそんなに悪くないので、いい音で聴きたいことを第一に考えている人で、出来るだけ安いものが欲しいのならこの機種は買いだと思う。
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