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響〜小説家になる方法〜 7巻まで
不況にあえぐ出版社にある日、募集要項を無視した手書き原稿が届く。同僚によって捨てられそうになったその作品を拾い上げて読んだ編集者の花井ふみは感動し、これこそ小説の新しい時代を築く作品だと思って世に出そうとするが、なんとその原稿には連絡先が一切書かれていなかった。それを書いたのは破天荒な女子高生・響だった。青年マンガ。

中野ブロードウェイの本屋でこの作品がなんたらのランキングで何位とかいって売り出されていたので読んでみた。とても面白かった。

この題だと、おとなしい地味な文学少女がちょっと光る才能を持っていて小説家になろうとする話なのかと思っていたのだけど、全然違う話で笑った。響という少女は一見地味な文学少女なのだけど、社会になじめないことをまったく気にせず一人でしたたかに生きている野生児で、周囲から圧力を受けても自力で跳ね返す強さを持っており、常識では考えられない行動に出て周囲を驚かせ、また読者を笑わせてくれる。

響が在籍している高校は部活動が盛んで強制参加のため、彼女は幼馴染の男の子・椿涼太郎に声をかけて一緒に文芸部に入ろうとするのだけど、部室にいってみると不良たちがたむろしていた。彼らはただ時間を潰すだけのために文芸部にいた。響たちは追い返されそうになり、椿涼太郎は穏便に立ち去ろうとするのだが、響は毅然と自分の意志を貫き通そうとする。しかしそれは正義とか社会的な理由ではなく、生き物として当然の振る舞いであるかのようだった。

そんな響がどんな作品を書くのかというと、作中に出てきた作品を簡単に紹介すると、どこか架空の異国で生きる踊り子の生活と、ライトノベル好きの知り合いに乞われて書いた吸血鬼の話。響という計り知れない人間について自分が安易に想像すると、響のキャラ的に社会的な作品はまず書けないはずで、たぶん生きるということの根本を見つめるような作品を書くのだと思う。これなら社会は関係ないし。

この作品の面白いところは、響の型破りなキャラが周囲を混乱させるところと、彼女の書く作品が各所で人々を驚かせ、騒動を起こしていくところ。あと、彼女の周囲にいる才能のない人間たちをへこませてしまったり、響をなんとしてでも制御しようと相対する人物が出てきてやりとりをしたりするところ。

響は孤高のキャラなのだけど、面白い作品とその作者には彼女なりに敬意を払っており、ぶっきらぼうにではあるけれど有名作家たちとやりとりをするところが微笑ましかった。自分の作品が(社会ではなく個人から)認められると嬉しそうにするところとかも。それと、彼女の父親が出てくるのだけど、まさに響を育てた父親なんだなと思わせる振る舞いがすごく納得できた。あらすじだけ紹介すると突拍子もない話ではあるのだけど、色々と細かいところで話を支えるリアリティがあってすんなりと読めた。

でもやっぱりケチをつけると、個人が他人や社会と衝突するようなところに文学はあると自分は思う。響みたいな原理主義者は多くの人の共感を得られないんじゃないだろうか。もちろん彼女の素朴で力強い生き方には多くの人が憧れるところではあるのだけど。また、響自身の物語は動いていないように思う。彼女は強すぎて自分を変える必要がないから。でもその必要はないんだろうな。彼女は周りの人々に物語を紡がせる存在なのだから。

かわいい女の子がかわいいことをする作品だけ読みたいという人でない限り、幅広く楽しめる素晴らしい作品だと思う。
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