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KSE1200
アメリカの音響機器メーカーSHURE(シュア)がコンデンサーマイクの技術を生かして作ったコンデンサー型イヤホンとそれを駆動するための専用ポータブルアンプのセット。高い電圧を必要とする代わりに繊細な音を出せるコンデンサー型の駆動方式を、持ち運び可能かつ密閉型として作った前モデルKSE1500に、ユーザーからのフィードバックを得て改良を施しつつ機能を削ってコストを下げたモデル。


ポータブルオーディオを扱っている専門店フジヤエービックが主催する2018年春のヘッドホン祭りでこのKSE1200が発表された。そのときに自分は前モデルKSE1500を試聴して感動した。しかしそっちは定価四十万で実売でも三十万以上した。一方で後継機のKSE1200は二十万ちょいで、新製品だから割引率は渋いものの実売なら二十万を切る。KSE1200の発売前にKSE1500が投げ売りされないか一応待ってみたが全然されなかったので、KSE1200の発売後一週間してからヨドバシカメラで買った。

フジヤエービックで買っても同じぐらいの値段だったのだけど、ヨドバシのゴールドポイントカードプラスのプレミアムのキャンペーンで三十万以上買い物すると別途一万ポイント還元される上に一年間の保証がつくのでこっちにした。試聴したのはヘッドホン祭りだから実質フジヤエービックで試聴したようなものなので仁義としてはフジヤエービックで買うべきだったけれど、実利的に差が大きかったので仕方がなかった。

こいつを買ってからは週の半分以上こいつを持って通勤している。ちょっと分厚いアンプ部とぶっといケーブルをどうしようかしばらく試行錯誤したけれど、RADSONE EarStudio ES100というbluetoothレシーバーを使うことで一応の解決をした。せっかくものすごくいい音を出すイヤホンなのに、わざわざ音質が劣化する無線のbluetoothレシーバーを間にかますなんてちょっと考えられないと思われるかもしれないけれど、そんなに劣化が気にならないレベルだったし利便性が良いのでこの組み合わせで常用している。家では色々試した結果Chord Mojoと組み合わせている。


こいつの音の特徴は、中高域の音の正確さからくるスッキリした爽快感だと思う。比較対象としてAstell & Kern + JH AudioのRoxanne IIを例に出すと、そっちは12個ものバランスドアーマチュアドライバのうち中高域を8個のドライバが担当しているため、どうしてもわずかに合唱しているような音作りになってしまう。そのおかげで音がちょっとリッチになる代わりに、音が粒だつというか荒くなってしまうのだと思う。KSE1200は1個のコンデンサー型ドライバが繊細かつそこそこ力強く鳴るので、驚くほど素直な音が出る。KSE1200を体感しなければRoxanne IIのことを「荒い」などとは思わなかったと思う。

コンデンサー型と言えば日本の専業メーカーSTAXが世界的にも一番有名なので同社の当時のフラッグシップモデルSR-009と専用アンプSRM-T8000という最強の組み合わせを秋葉原のヨドバシカメラで試聴してみたのだけど、この会社の製品はクラシック向けとされているせいか音に元気がなく、自分のよく聴くポップスやロックには向いていないのかあまりパッとしなかった。のちに新宿のヨドバシでSR-009と専用アンプSRM-007tAだか忘れたけれど総額四十五万ぐらいのセットが商品入れ替えのため限定1組30万円で投げ売りされているのを見たのだけど、いくら安くても自分には向いてないし携帯できないからスルーした。

ちなみにSTAXは携帯用のシステムも作っているけれど、音は結構良くてしかもそんなに高価ではないものの、開放型なので電車の中などの騒音の大きいところでは使えない上に装着感も悪いらしい。

そんなわけで同じコンデンサー型で閉鎖型のKSE1200がなぜ割と元気な音を出せるのか不思議なのだけど、実際聴いていて気持ちいいのは確かだった。低域は締まっていて正確なので気持ちいい。

じゃあ弱点はないのかとというと、最初に挙げたようにまず携帯性に問題があるほかに、音については中域が相対的にややしわがれた感じがする。KSE1200はおそらくどこをとっても自分が持っている他のどのイヤホンよりも音質がいいと思うのだけど、高域や低域と比べて中域が相対的にやや劣る。そして中域というのは音楽の中で一番中心的な部分なので目立つ。そんなわけで、ずっと聴いているとちょっとずつ飽きていく。

なので自分はローテーションを組んで、ダイナミック型のt8ie mkIIやマルチBA型で独特の色気があってバランスも良好なWestone W60やNuForce HEM8なんかも時々挟むようにしている。以前t8ie mkIIはローテーション落ちしそうだと書いたけれど、イヤーピースを通称ベイダーチップからスパイラルドットに変えたところ低域がしっかり聴けるようになったので以前より聴くようになった(つまり自分にはベイダーチップはぴったりとはマッチしていなかったようだった)。逆に前述のRoxanne IIは夏場だったのとKSE1200と傾向が近いことが分かったので頻度が下がった。

KSE1200のもうちょっと全体的な説明からすると、こいつは専用のアナログヘッドホンアンプとセットになっているので、デジタルオーディオプレイヤーなどのライン出力をつないでやる必要がある。ちなみにKSE1500はアナログヘッドホンアンプとしての機能のほかにデジタル入力も持っているので、iPhoneやAndroidやPCとデジタル接続できるようになっている。ただしスペックが96MHz / 24ビットまでしか対応していないし、音質もそれなりのようだった。開発元のSHUREがKSE1500のユーザーに意見を聴いたところ、ほとんどの人がデジタル接続せずに高音質なデジタルオーディオプレイヤーからアナログ入力していたので、KSE1200ではバッサリとデジタル入力と液晶モニタをカットしたらしい。アナログアンプ部分もKSE1200で改良されているので、モデル名の数字とは違って純粋に音だけならばKSE1200のほうがいいとのこと(といってもホワイトノイズ対策が向上したぐらいらしいけど)。


自分はオンキョーの高音質スマホGranbeatを常用しているので、普通に考えればこいつからライン出力モードで出してKSE1200にアナログ入力するのが音質的には一番いいのだけど、それをやってしまうとコードまみれになってうっとうしいし見た目も悪くなるのでやっていない。かといってKSE1200とGranbeatとをバンドでまとめると手で持ちにくくなる。じゃあ別途小型のデジタルオーディオプレイヤーを使えばいいのかと思って色々試してみたけれど、パイオニアのXDP-30Rはアンバランス出力がいまいち過ぎたし、FiioのX5 2ndはライン出力専用の端子まであって音も良かったけれどバンドで一体にするとポケットから出し入れするのが大変だった。Shanlingのm0というとても小さいデジタルオーディオプレイヤーの評判が良かったので買ってみたら、音質は割と良かったけれど音のチューニングが軽すぎてスカスカでいまいちだったし、画面が小さすぎて操作もしづらかった。RADSONE EarStudio ES100とスマホGranbeatならAptX HDで接続できるので一応ハイレゾに対応している。ES100はさらに高音質なLDACにも対応している。まあいくら帯域があっても結局アナログ部分があれだけ小さいので(中くらいの消しゴムぐらいの大きさ)限界がある。

KSE1200のバッテリーは公称で十時間持つ。最初勝手に7時間ぐらいだろうと思って、通勤に三往復使ったあとで残りのバッテリーを家で使い切ろうと思って聴いていたら、延々聴いているのになかなかバッテリーがなくならなくて驚いた。バッテリーの容量を少し減らす代わりにもっとスリムにしてほしいと思わなくもないのだけど、十時間も持つのなら使い込むうちに多少バッテリーが劣化しても全然気にならないだろうからこれはこれで良かったのかもしれないとも思う。ちなみにES100はKSE1000の半分ぐらいしかもたない。

本体下部に入力ゲインのスイッチがあって、-10dbすることができる。自分の手持ちの5つぐらいのデジタルオーディオプレイヤーとつなげてみた限り、スイッチオフの0dbの状態だとライン出力で音が少し割れてしまう。GranbeatやX7なんかのライン出力モードはレベル固定なので常に-10dbにしなければならなかったし、それでもたまに若干音割れする。一方でX5 2ndとES100はライン出力のレベルを調整できるので、なるべく音質劣化が起きないよう0dbの状態で可能な限りレベルを調整することができた。自分はほかにアナログヘッドホンアンプを持っていないので、KSE1200の入力レベルが正しいのかどうか判じることはできないが、手持ちの6台の出力機器は0dbだとすべて音割れした。


デジタルオーディオプレイヤーと接続するためのアナログケーブルが長いのと短いのと一本ずつついてくるのだけど、見るからに安っぽそうなものだし、ネットの評判を見てもいまいちとのことだったので、ちょうどフジヤエービックで特売されていたALO Audioの入門モデルのミニケーブルを五千円ぐらいで買ってみた。付属ケーブルと聞き比べてみたけれど、違いはよく分からなかった。長い方のケーブルもフジヤエービックの正月の福袋についてきたオヤイデ電気のケーブルを使ってみたが、やはり違いがよく分からなかった。まあなんとなくちょっとよくなったのかな?ぐらい。

余談になるけれど、これまで二千円から二万円ぐらいまでのケーブルをいくつか買ってみたけれど、明らかに音がよくなったと思ったのは中国製の純銀ケーブルだけだった。ただし、高域が多めになるのでバランスに注意。次が銀メッキだけど、イヤホンに最初からついてくるケーブルとそれほど違いが見いだせなかった。また、Beat AudioのSupernovaは音のクセがすごいし(笑)、ALO AudioのTinselも音がやや硬質になって不自然な感じがした。それに加えて両者ともケーブルが固くて取り回しづらかった。以前ネットの掲示板でケーブルについて相談してみたときに、一番コスパが良くてハズレがないのは中華(中国)の純銀ケーブルだけだと言っていた人がいたのだけど、結局そのとおりだと思った。一万円ぐらいするけれど、それぐらいの価値はあると思う。ちなみに国産だと倍ぐらいする。

そういえばKSE1200自体のイヤホンケーブルは、特殊な形状をしているため互換性がなく、専用品となっている。太いとは最初に書いたとおりなのだけど、柔らかいナイロンのネットのようなもので高圧用ケーブルを覆っており、曲げやすいので実用上それほど不便を感じない。しかし耳に掛けるイヤーフックがくせもので、耳の形に合わせて曲げようとしてもなぜか形状を記憶せず反発してしまう。まあイヤホン本体の装着感がいいのでそれほど問題にはならないのだけど、本来耳に引っかけるはずのイヤーフックが自分の場合は常に耳から浮いた状態になっている。

イヤーピースには最初コンプライという低反発ウレタンっぽいのがついていた。耳栓のように指で圧縮してから耳に差し入れると、ゆっくり膨らんで耳の穴に密着してくれる。あまり密着させすぎると低域が過剰になってしまうものだけど、KSE1200の場合は低域が引き締まっているのでちょうどよかった。ただしシリコン製と比べてすぐ汚れて劣化するのでコスパが悪い。ちなみに一応シリコンも試してみたけれど、そんなに違いはなかった。まあ家で試しただけなので外だと遮音性に違いが出て音も変わってきそう。

信者みたいな言い方になってしまうけれど、この素晴らしい音が20万で手に入るのは安いと思う。まだまだこれから改良も進むだろうし、私も含めていままでこの音の価値がよく分かっていなかった人にも浸透していったら、おそらく近い将来この値段では手に入らなくなるのではないかと思う。前モデルの定価が四十万というのは当然の値付けだと思う。いまハイエンドのイヤホンは二十万円ぐらいからになってしまっているけれど、普通のイヤホンの場合さらに高いデジタルオーディオプレイヤーやアンプも一緒に使わないとならない。KSE1200はそれがセットになって二十万なのだから、音には好みの問題があるにせよ、コスパは間違いなく最強だと思う。日本のSTAXにもがんばってほしい。ポップやロックが気持ちよく聴ける閉鎖型を作ることができれば買う層が広くなって売れそうな気がするし、価格競争が起きて高くならずに済むかもしれない。

一方で、最高を求めなければ三万円台ぐらいから十分満足できるものが手に入るし、人間の感覚というのは良いものに慣れてしまうものなので、ものの価値は人それぞれだと思う。三万ですらほとんどの人にとってはバカげた値段だし、二十万といえばちょうど最近発売された新しいiPhoneの一番高いモデルと同じぐらいだ。ただ音を出すだけの機械が、色んなことのできるスマートフォンより価値があるのか?とも思ってしまう。でも音楽聴きながらスマホいじって通勤通学時間を過ごせるわけだし、価値を引き出しやすい機械だと思う。
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