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蹴りたい背中
主人公の体育会系ながらあぶれ者の女子高生が、同じくあぶれ者の雑誌モデルおたくの「にな川」という男子学生や、微妙な友達グループなどと過ごす日常を描く。第130回芥川賞受賞作の一つ。

まず言いたいのは、今年の芥川賞受賞作ニ作品に共通するテーマが「ソフトSM」だということ。これしかない(笑)。作者のおっとりしたたたずまいからは想像できなかったが、この作品は主人公の女子高生が、にな川という哀れな生き物を微妙な愛を持って小突く作品だ。

私はこの作品が大好きだ。この作者の次の作品を楽しみにしている。「蛇にピアス」もまあそれなりに面白くはあったが、私からみるとこの「蹴りたい背中」のほうが二つぐらい頭が出ているように思う。

まず疎外感が非常によく描かれているなあと思った。一部、分からない感覚もあったけど、作者は若いだけあって現代の子供の感覚をよく掴んでいるし、それがリアルに表現されていると思う。レトリックに青さを感じるところもあったけど、時と共に洗練されていくと思う。

エッチだ。直接的な表現はたった一つしかないのだけど、この作品は非常にエッチだと思う。こんな淫靡さを、若い女性が描けるということに感動した。いや作者の歳なんて関係ない。主人公の容姿は多分そんなに良くはないのだろうが、その肉体を想像して欲情してしまった。

それからにな川。ここまでちっぽけな男子学生を描ける女性作家は、さくらももこをおいて他にいないと思っていた。一体この作者はどういう人なのだろうか。

正直私はマンガびいきなので、すごい作品はマンガからしか出て欲しくないとさえ思っているのだけど、小説の可能性というものを改めて思い知った。
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