歴史の作法 |
一言で言うと、歴史の歴史について書かれた本。トーマス・クーンが「科学革命の構造」で科学史の研究として科学の方法論に踏み込んだのと少し似ていて、この本は歴史学の変遷から方法論やありかたについて作者がさまざまな文献をひきつつ持論を述べている。
西洋の歴史の父であるヘロドトスやトゥキディティス、東洋の歴史の父と言える司馬遷や春秋の史家、イスラムの生んだ近代史学の祖イブン・ハルドゥーン、歴史書としては認められない傾向にありながら「ローマ帝国の興亡」でこの分野に大きな影響を与えたギボン、現代史学の祖ランケ。古今東西の歴史書から、歴史の作られ方の変遷を、作者の解釈の元で講釈している。
この本で述べられていることをザックリと挙げると、
・歴史書には真実が書かれているのか。(ちがう。)
・歴史書には何が書かれるべきなのか。(いろいろ。)
・歴史学と歴史文学の違いは?(極論するとあんまり違いはないかもね。でも…)
・専門分化しちゃっていいの?(もっと遠大に語れば?)
・歴史は何のためにあるの?(さあね。)
まあほどほどに読める本なのだが、作者の文体がいまいち気に入らない。流れるような文章は見事なのだが、とても丁寧な言葉遣いになぜかイラつく。小難しい本は小難しく語って欲しい気がする。気がするだけではっきりした理由はない。
日本の史家についてもかなりページを割いているところは好感が持てる。明治以後、日本のインテリは西洋に目を奪われ、優れた国内の研究者を無視する傾向が強いため、よっぽどの人でないと目を向けない。乱暴な指標ではあるが、日本の学者を取り上げる人イコール優れた研究者、という判断は大体当たっている。
小難しいのが嫌いな人には、同じ文春新書から出ている「歴史とはなにか」の方がおすすめ。こちらのほうがずっと分かりやすい。目から鱗が落ちた覚えがある。ただ、いずれも新書なので、ボリュームのあるものをじっくり読みたい人には向かない。基本的には、つまみ食いをしたい人向けの本だ。
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