ファイナルファンタジー |
スクウェアがコンピュータRPGの人気シリーズをフルCGの実写風映画として製作した作品。資本は日本だけどスタッフは日米合作らしく、アメリカ市場向けに作られた。元のゲームはファンタジーとSFが合わさった作品だが、この映画はほぼSF。
突然衝突した隕石からあふれ出てきた大量の謎の生命体(?)に侵された近未来の地球。かつての大都市は廃墟と化し、人類はバリアの中にコロニーを作って細々と暮らしていた。評議会では、軍部の将軍がゼウス砲で総攻撃をかけるよう迫るが、シド博士と主人公はそれに反対し、謎の生命体に対して逆位相波を出して消滅させるために、荒野で生き残る数少ない生命の中からキーとなるものを集めようとする。
この作品の一番大きな特徴は、フルCGで実写のようなリアルさで映画を作ってしまったことだ。普通の実写映画が部分的にCGを利用するタイタニックのような作品はあったが、すべてを、俳優までもCGで作った長編映画は人類初だろう。
さてその試みは成功したのかというと、私は95点ぐらいはあると思う。正直予想以上の出来だった。もはやこのレベルは、実写っぽいCGではなく、CGっぽい実写に近いとさえ思った。ただ、物語を楽しもうとこの作品を見ていると、残りの5点がチラチラと目についてしまう。そういう意味では、5点は5点でも人間にとってもっとも重要な5点が欠けていると言うしかない。
ストーリーはというと、まあSFとしての出来はまずまずだと思う。意外性もあるし、映像としても映える。ただ、SF自体に大勢の人をひきつけるほどの一般性が無いのが悲しい。トータルリコールのような分かりやすいテーマでもなく、スターウォーズのような娯楽性がない。SFとしては非常に正統なテーマなのだけど、これでは観る人を選んでしまう。ガイア理論とかいうのも出てくるが、これはメインテーマではなく単なるおまけといったところ。ビジュアルも性格も人形のような将軍が虚しい。
観ていて息苦しさを感じた。登場人物が少ない。舞台が狭い。技術的なところが大きいと思う。敵で画面が埋め尽くされている。こういうのが好きな人もいるのだろうが、私はこの手のドキドキ感を楽しめなかった。触れたら確実にやられる、というのが理由だと思う。
私は一応最後まで観ることができた。駄作ではないと思う。先々の展開も少し気になりながら見ていた。エンディングにも期待していた。もちろん期待は外れた。でもそれはよくあることだ。ちょっとでも気を利かせてくれれば、それだけで作品の印象が大きく変わったのに、と思う。
私はこの作品が、アメリカ一極だとされる映画界にくさびを打ち込んだということを最大限に賞賛したい。ただ、じっくり考えてみると、フルCGの実写というのは結局はキワモノ扱いされてしまうのではないかと思った。これでは、スターウォーズの最新作のほうがずっと素晴らしい。多分アメリカ国民は、アメリカが映画文化的にこの映画にやられたとは少しも思っていないだろう。
この一歩は人類にとって偉大な一歩だった。しかしいまのところ、この作品を土台にして次の一歩が踏み出される気配はない。
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