RMCE-BT2 |
マイクとイヤホンで有名なアメリカの音響機器メーカーSHUREがイヤホンを無線接続するために作ったBluetooth接続用ケーブルの第二弾。Bluetoothのバージョン5.0に対応して省電力になり、aptX HDやLLといった高音質や低遅延なプロファイルに対応したほか、素の音質も良くなった。
最近になっていわゆるTrue Wirelessつまり左右別々でまったくケーブルのないBluetooth接続のアダプタを出したせいか、旧製品となったこいつがアメリカのアマゾンで50ドルで投げ売りされていたので買ってみた。当初は二万円ぐらいした。
AppleがiPhoneのヘッドホン端子をなくしたことでイヤホンのBluetooth化が進み、高音質なイヤホンをウリにしていたSHUREも無視できなくなったのか、同社のメインストリームであるSEシリーズにはBluetooth接続用のケーブルが標準で付属するようになった。フジヤエービックが主催する展示発表会であるヘッドホン祭りでSHUREのメインストリーム最上位機種であるSE846を試聴したとき、オーディオマニアしかいない場なのに最初っからこのBluetooth接続用ケーブルを出してきたことからも自信が伺える。
自分はSE846をまずこのRMCE-BT2で試聴して張りのある音に感心し、そのあと手持ちのOnkyo GRANBEATを使って有線とで聞き比べてみたのだけど、正直RMCE-BT2のほうがはっきりと音が良かった。というか有線だとSE846が全然大したことない音に聞こえた。
ネットのというか5ちゃんねるのSHUREスレではSE846はやけに評価が高いのだけど、自分は都合二回SE846を試聴しても値段相応には思えなかった。ネットワークレスで自然減衰だけでマルチドライバのそれぞれに各帯域を分担させるという設計思想はいかにも地味なので、スルメ型つまり聴けば聴くほど分かってくるタイプの製品なんだろうと思うのだけど、そもそも所有する気にもなれないほど大したことない音だった。だから自分は自然とBluetooth接続用ケーブルそのものであるこのRMCE-BT2自体に強い関心を持つようになった。
でそのヘッドホン祭りでこのケーブルいくらなら買いますかというアンケートに「二万なら」と回答したのだけどその値段では結局買わず(笑)、日本円で配送料込みで約六千円になるまでになってようやく買ったのだった。
長い前置きはこのぐらいにして、このコロナ禍の中で予想外に早く届き、外装を見る限り偽物っぽい感じはしないなと思いながらとりあえず手持ちの純正品SE315に付けてみた。SHUREのライバル社であるWestoneのBluetooth接続用ケーブルは初期不良で二回も交換したので、まずはちゃんと使えるかどうか三日ぐらい様子を見てみた。さすがにSE846の4ドライバと比べてSE315は1ドライバなのでちょっと音が寂しいけれど、ヘッドホン祭りで聴いた覚えのある張りのある音が出たのでまずは安心した。
で満を持して自分の本命であるAstell & Kern T8ie mk2に付けてみた。T8ieはダイナミック型つまり普通のヘッドホンに使われているようなコイルでコーンを動かすタイプのドライバ一発なので、SHUREが得意とするバランスドアーマチュアドライバとはまったく違って重いのだけど、張りのある音が出ていることから駆動力はあると見えて、しっかりとこいつの魅力であるザクザク感のある音が出ていたと思う。こいつは丁寧に鳴らしてもいい音で鳴るのだけど、さすがに手持ちのcampfire audio VEGAやATLASと比べると一世代前の音に思えたので、元気よく手軽に鳴らしたくて今回このBluetooth接続用アダプタに付け替えることにした。W60とは全然違う音が出るので使い分けられるし。
WestoneのBluetooth接続用ケーブルはリモコンの部分に電子部品やバッテリーが入っているのに対して、このSHUREのRMCE-BT2はリモコンとは独立してペンダントみたいな位置に本体がある。ちょっと見た感じ重そうだけど重心がとれているせいかまったく重さは感じなかった。リモコンの位置だと右のケーブルの途中になるのであまり大きくできないのに対して、このRMCE-BT2は本体を中央にぶらさげる形になるので多少重くても安定している。その分なのかどうか知らないけれどリモコンのボタンのクリック感がしっかりしていて、Westoneのペコペコ感とは差があるように感じられた。
操作感は特に言うことがない。どの製品も似たようなものだから。Westoneのと比べると、バッテリーの大体の残量を最初に英語で教えてくれるのが親切だなと思ったぐらいだろうか。Westoneのはバッテリー残量警告音がやたら大きく鳴るのが不快なのだけど、そういえばまだRMCE-BT2のほうはバッテリーが切れる前に充電しちゃってたので聴いてないな。
Fiioとかも似たようなそれでいて安い製品を出していて、そっちを試しに買ってみようと思ったこともあったのだけど、イヤホンを単に無線化しても音が良くなかったら使わないだろうと思って結局買わなかった。この手の製品ってqualcommのワンチップでやっていることが多いので音質なんてどこも変わらなさそうなのだけど、少なくともこのRMCE-BT2は別格だと思った。
手持ちのVEGAやATLASに付けてみたい誘惑にも駆られたのだけど、これらは有線で引き立つ魅力のほうが大きいと思ったので試しもしていない。でもVEGAはともかくATLASは割といい感じで鳴りそう。ATLASが二軍入りしたら試してみるかも。大きさ的にも繊細な音は出ないので、元気の良さに魅力があるタイプのイヤホンが合うと思う。あと、元々すごくいい音質のイヤホンなら多少繊細さは失われても十分魅力が残ると思う。それと重要なことだけど端子がMMCXなので2 pinとか4 pinとかはつなげられないし、Westoneも旧型のはMMCXの形をしているだけの独自形状と思った方がいいのでつながらなさそう。
最初に言ったようにTrue Wirelessタイプの新製品が出ているので在庫整理が進んでいるのだと思う。さすがに49ドルはもうないけれどいま確認したら66.79ドルなら買える。配送料は10ドルしないと思う。ちなみに新製品は何かバグを抱えているらしく、アメリカのアマゾンでは返品対象になっていたほか、販売がストップしたとか店頭在庫限りだとかいう話がネットでささやかれていたけれどいまはどうなったのだろう。そこまで致命的なバグではないらしいのだけど。
もっといい音で聴きたければいわゆるBluetoothレシーバーと呼ばれる製品を使うしかない。自分が持っているEarStudio ES100はいまではちょっと陳腐化したようなので似たようなのだと今はqudelixというのがネットで持ち上げられているほか、もっと大きいのだと前述のFiioはBTRシリーズをサイズごとにいくつか出しているし、shanling UP4という対抗製品もある。
というわけで手元に美音系でない型落ちの個性的なイヤホンを持っている人なら試してみるのも悪くないと思う。世間一般の人たちがただワイヤレスというだけで重い財布の口を開ける理由が多少は分かると思う。いいイヤホンをあえてワイヤレス化するというマニアックな楽しみもある。
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