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エルドライブ【ēlDLIVE】
中学生の九ノ瀬宙太は小さい頃から自分の内側にいる(?)謎の存在の声が聞こえ、そいつとよく会話していたことから独り言の多い少年だと不気味がられていた。あるとき宇宙人(!)による犯罪に巻き込まれたことがきっかけで宇宙警察エルドライブからスカウトされるが、そこには同じクラスのツンツン女子の其方美鈴がいた。SF少年マンガ。

2017年にアニメ化されたのを見て、ヒロインの其方美鈴のあまりにクールなジト目ぶりにすっかり魅せられてしまい、ストーリーはそんなに面白くなかったけれどもっと続きが見たいと思い、いまやっと原作マンガを読み終えた。微妙だった。

ただの中学生男子だった主人公が宇宙警察という選ばれた組織の一員として働くだとか、そこにはかわいいけれど特に自分に冷たい少女が同じ仲間として働いているだとか、自分に秘められていた力に徐々に覚醒していくだとか、もう少年たちのあこがれのシチュエーションだと思う。おっさんの自分もときめいてしまった。

主人公の少年九ノ瀬宙太は両親と死別している上に小さい頃に遠足中の事故で友達を何人も亡くしており、それを自分のせいだと思って後悔しながら生きていた。それが宇宙人の事件をきっかけに謎の存在ドルーが体外に姿を現し、宙太を叱咤激励するようになる。最初は自分に自信を持てなかった宙太だったが、宇宙警察として働いていくうちに一進一退しつつも自信をつけていく。

宇宙警察エルドライブには人望ある銀髪隻眼のイケメン所長レイン、マスコットキャラにしか見えない脱サラ警部補チップス、いつも転送装置の微調整に失敗する猫型宇宙人のトントさん、捜査五課のリーダーで其方美鈴の同期にしてライバルでプライドの高いツインテールのベロニカ警部補、同じく同期でおしとやかな黒髪ロングのニノチカ巡査といった魅力的な面々がいる。

しばらくは通常パート(?)として宇宙警察エルドライブの日々の業務から作品の世界観までじっくり描いていくのかと思いきや、早々に物語が動いていってそのままクライマックスまで突き進んでしまう。ダラダラと長く続いてしまうのが集英社の作品の特徴だと思っていたけれど、この作品は単行本11冊で完結する。正直これはちょっと短すぎたと思う。署の人間関係も大して描かれていないのに。

宙太が配属される捜査2課の課長なんて最初まったく登場せず、物語が大きく動き始めてから唐突に表れ、急を要する事態なのに特訓するとか言い出して修行パートを始め、あげく勝手に自己完結して退場してしまったのでおおいにしらけた。レイン署長との確執の内容とか、どうしてこんな性格になったのかとか、いろいろ描いてほしいことがあった。

個人的には其方美鈴とベロニカのライバル関係をもっと味わいたかった。ドラマチックな展開にはもっと登場人物の掘り下げと思い入れが必要だと思う。あと宙太の若い叔母さんとかニノチカとかすごいかわいいのに出番が少なくて残念だった。

でその中盤以降のドラマチックな展開について言うと、SF的には少し面白い話ではあると思うけど、その割に全然楽しめない自分がいた。自分が歳をとったというのもあると思うけど、色々唐突な上にちょっと設定が込み入っていて分かりにくかったと思う。それにそもそもの狙いが安直すぎて普通絶対そんな決断下さないだろうなと思う。

エモさ(?)という点においては、其方美鈴の決断にいたるまでの心の動きがよく分からなくて、感動するしない以前の問題だった。こいつはいわゆる「悲劇のヒロイン」なのだから健気にがんばるところや強い意志がもっと前面に出てほしかった。尊い自己犠牲の精神なんて読者には共感できないと思う。

そういえば共感で思い出したけど「シンパシ!」というのが謎の生命体ドルーの力を発揮するキーワードというか叫び声になっているのだけど、これもちょっと意味が分からなかった。終盤にも宙太以外のメンバーがドルーもどきと協力して力を発揮するために「シンパシ」が求められるシーンがあるのだけど、誰かの気持ちに共感するというのではなくて自分の気持ちを正直に伝えて誰かに共感してもらう方の意味で使われている。こっちもすごく大事なことだけど、主体が異なるので少なくとも共感ではないと思う。

絵はフルカラーできれいだけど、線が弱くてちょっと見づらい。女の子はみんなかわいいし、男キャラも主要キャラはみんなかっこいいんだけど、色物系以外は体型とか顔つきなんかがちょっとワンパターンな感じがする。異星人は色んなタイプがいて説得力があった。メカもバイオも良かった。

なんというか、すごく期待していたし面白くなりそうだったから読み続けたけれど、3巻ぐらいからもう自分は全然楽しめなくなっていたと思う。逆に言えば「この作品面白そう」と思わせる強い何かは確実にあるのだけど、人に面白いと感じさせる何かが決定的に欠けていると思う。
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