俺だけ入れる隠しダンジョン ~こっそり鍛えて世界最強~ 5巻まで |
貧乏貴族の三男ノル・スタルジア少年は図書館の司書になる内定を得ていたが、急に上位の貴族に押し出されてその話が立ち消えになってしまう。困った彼は、幼馴染の少女エマ・ブライトネスの助言に従って彼の持っている本来使い物にならないレアスキル「大賢者」を使用し、自分が強くなるための秘密のダンジョンを発見する。小説投稿サイトに上げられた小説が原作のファンタジーマンガ。
2021年の初頭にアニメ化されたのを見て、ノル少年がレアスキル「大賢者」を使う代償であるすごい頭痛を和らげるために幼馴染の少女エマとキスを繰り返すのが結構エロくて魅力的だったのと、目の前の障害を乗り越えていくさまが気持ちよかったので、アニメが終わってからも先の話を見たいと思ってとりあえずこのコミカライズ版を読んでみた。いまいちだった。
アニメは終盤を除いて結構よかった。司書になるのをあきらめたノル少年と少女エマは、代わりに冒険者養成学校に揃って入学するのだけど、そこでも上位の貴族の子弟たちが幅を利かせていて肩身の狭い思いをする。しかしノルは手に入れた強力な力を武器に活躍し周囲の圧力を気持ちよく跳ね返していく。
ノルが手に入れた力というのが、「隠しダンジョン」で教えてもらった「編集」という特殊スキルで、なんと自分や他人のスキルを好きなように編集できる。ただし、編集する内容の大きさによってLPと呼ばれる特殊なポイントを消費し、これが0になると死んでしまう。このLPは金や名誉や欲を満たした度合いによって得られるようになっていて、金や名誉を得るのは難しいのでノルくんは少女エマと色欲を満たすことでそこそこ手軽に入手するようになる。
ヒロインのエマがとても魅力的だった。一言で言うと一途なところが良かった。ノルの家よりも裕福な男爵家の娘なのだけど、ノルのことが好きでノルのためなら出来る限りのことをしたいと思っている。でもノルにべったりしているわけではなくて、女として自分なりのプライドは持っており、他方でノルのことも尊重しているので全部世話を焼きたいとも考えていない。こういう自分を持った女の子が、ノルのために仕方なく(?)恥ずかしいキスをするうちに気持ちよくてハマってしまい、でも自分から積極的に求めるのは無理、みたいな恥じらいがすごくよかった。この方面の他の作品って痴女ばかりなので逆に新鮮に感じた。
と言ったそばから覆すのだけど、ノル少年はこの「編集」というスキルを秘密の隠しダンジョンの罠に囚われていたかつての超有名冒険者オリヴィアに教えてもらうのだけど、こいつが絵に描いたような痴女(!)なのだった。でも鎖で囚われているので何もできない。呪いの鎖のせいで身体の活動が停止しているため、ノルくんとの意志の疎通もテレパシーで行っている。アニメだとこいつの役を堀江由衣という頭のおかしい女を演じたら一番だと自分が思っている(?)実力派の声優が演じており良かった。自分のことを名前で「オリヴィアは~」と言う頭の悪そうなしゃべりかたと、一方でノルくんのことをなんだかんだで大切にし思いやる姿勢とのギャップもよかった。
だからこのコミカライズ版はもっと楽しめると思って読んでみたのだけど、アニメ版の出来が良すぎたことだけが目立ってしょうがなかった。声がないのは仕方ないところだけど、絵に魅力がない。キャラの表情とか動き、背景や構図は決して悪くないのだけど、キャラそのものが鈍重というか、身体のラインに色気がない。あと致命的なのが、ギャグ顔がへたくそすぎて子供の落書きに見える。
ストーリーも、ノル少年のもとにハーレムが出来上がっていくところは割と楽しめたのだけど、そこからの通常営業(?)がいまいちだった。ノル少年に惹かれるきっかけとなる特別なイベントはいい感じなんだけど、そのあとの関係性が鈍感主人公だからなのかラッキースケベ扱いばかりで全然わくわくしない。
「編集」というスキルが最初はどんなことが出来るのかちょっと期待させておもしろかったのだけど、この能力のことが分かってくるにつれて予想通りのことしか出来ないことが分かってくる。ノル少年は最強厨じゃないのでこの能力を使っていかに自分を強くするかということには興味ないし、ゲーマーでもないのでこの能力の効果的な使い方なんかを探る気はなく、ただその場限りで場当たり的な使い方しかしない。自分を強化するのではなく相手を弱体化させるためにスキルを使っちゃうのはもったいないなあと思った。
いま思いついたのだけど、お金儲けのためにスキルを使えばそっち方面で展開があったのかもしれないけれど、ノル少年は自分とその仲間たちに対して基本的に戦闘用のスキルしか強化しない。あとは呪いの解除ぐらいか。いろんなスキルが考えられるのだから、もっと色々やったら楽しかったと思う。
というわけで、アニメ以上の展開も特に期待できないし、コミック版ならではの絵の魅力や展開の速さといった利点もないので、自分はもういいやと思った。
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