最強の魔導士。ひざに矢をうけてしまったので田舎の衛兵になる コミカライズ版 |
魔王を倒した勇者のパーティの一員だった魔導士アルフレッドは、魔王との戦いにより呪いの矢をひざに受けてしまう。他のメンバーに余計な気を使わせたくなかった彼はそのことを隠し、ひっそりと田舎の村へ行きそこで衛兵として暮らすことにする。ファンタジーマンガ。
ひざに矢を受けてしまったというのは確か海外のロールプレイングゲーム「オブリビオン」に出てくる有名な(?)衛兵のセリフで、ネット上でも以前ちょこちょこネタにされていた。この作品もそういう海外のゲームのすっとぼけた要素がちりばめているんだろうなあと思ってそれを期待して読んでみたら全然違った。こういうタイトル詐欺は悪質だと思うけれど、いまは試し読みができるからまあいいか。内容はまあまあだった。
すごいほのぼのしている。若者がくるものと期待していた村人たちはアラサー(?)のアルフレッドを見て最初はがっかりした様子を見せるが、彼の人柄の良さや仕事熱心で実際成果を上げるのを見て暖かく迎え入れるようになる。特に最初に彼に助けられた薬師ミレットは彼に惚れるのだった。
魔狼王を手なずけ、魔王の元四天王(五番目の)だったヴィヴィを捕まえて懐柔し、もといた勇者パーティの面々が訪ねてきたりする中で、魔猪王やドラゴンゾンビやヒドラや魔王軍の残党なんかと戦ったりしながら、村の名物である温泉に入ってムフフだったり畑を開墾したりする。
アルフレッドは強力な魔力を持った魔導士なのだけど性格的にはごく普通の常識人で、女性から迫られても節度を守ろうとするのでロマンスは進まない。ちょっとおもしろいのは勇者クルスとの距離感で、こいつは女なんだけど少年みたいななりをしていてアルフレッドの中では女じゃないみたいな扱いなので、流れで一緒にお風呂に入ってしまいそうになって薬師ミレットが慌てて止めようとする。
魔王軍の元四天王ヴィヴィは高飛車だけどお子様な女の子で、実戦ではアルフレッドの敵ではないほど弱いけど、魔族ならではの魔法の知識と彼女自身の几帳面な性格から平時ではアルフレッドを上回る部分も見せる。かわいい。あざといけど。
でも牛を大きくする話はちょっとついていけなかった。最初ヴィヴィの魔法で大きくし、愛着を持っていたのにトラブルが起きたので殺して肉にして出荷し、その後スケルトンとして蘇らせて倉庫の見張りにし、それが神聖な力で霊獣になり、力が得られたので身体を小さくしてマスコットみたいになったりと、もう訳が分からなかった。
話としてもキャラクターとしても特に際立った魅力は感じられなかった。
長期的に期待させるものがなにもない。アルフレッドはひざに受けた呪いの矢をすぐにどうこうしようと思っていない。村が貧しいからと、牛を大きくしたり農業を発展させようとしたりするけれど、それ以上のことはしなさそう。アルフレッドは特に誰にも恨みを持っていないので国や元パーティへの復讐もなし。誰かとの関係を深めるつもりもなし。魔王軍の残党を根絶やしにするつもりもなし。弟子もとらないし、新たな魔法を研究したりもしない。村での名声は増えるけれど立場が上がったりはしない。
題にあるように、最強の魔導士アルフレッドが目立たずにあえてひっそりと暮らしていくことに楽しさを感じることができそうなら、読んでみてもいいのかもしれない。
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