異世界で 上前はねて 生きていく ~再生魔法使いのゆるふわ人材派遣生活~(コミック) |
働きすぎて過労死した男がファンタジー風の異世界へ転生して商家の三男サワディくんとなり、将来劇場を建てて一番いい席で寝ころびながら芝居を見る生活を送るため、けがや病気の奴隷を買い取って再生魔法で治療し、人材派遣業をやってお金儲けしようとする。小説投稿サイトに書かれたネット小説のコミカライズ版。
人材派遣というとマイナスのイメージしかないんだけど、ビジネスで成りあがるというのが楽しそうだったので読んでみた。まあまあおもしろかったんだけど、いろんな意味でクセの強い作品だった。
けがや病気持ちの奴隷は安く買えるので、少ない元手で労働力が手に入る。最初は彼女たちに冒険者をさせ、稼ぎの一部を受け取るというまさにタイトルどおり上前をはねることから始める。「彼女たち」と書いたのは男の奴隷は買わないから。ハーレム状態なのだった。けがや病気をなおしてもらった恩があるので彼女たちの士気は非常に高い。
冒険者に向いていない奴隷には、実家である商家の手伝いをさせたり、自分の事業を拡大して事務仕事や配達の仕事なんかをやらせるようになる。事業はどんどん大きくなり、シェンカー家の事業ということでマジカル・シェンカー・グループを名乗るようになる(この作者マイケル・シェンカーのこと好きすぎ?)。
魔法の研究も進め、研究室に席を置いて「造魔」という魔法生物を作る研究や、魔力を使った動力機関の研究も進めるほか、魔力を生み出す臓器を失って引退した退役軍人たちを治すことで独自のコネもつくっていく。
とまあ王道的な節操のない異世界ファンタジーが繰り広げられるわけだけど、ほかの作品と比べてクセが強くて人によっては素直に楽しめないんじゃないかと思う。自分の場合は設定とか演出とか引っかかってこの作品にあまり愛着を持てなかった。
まず奴隷が最初は女だけ。主要登場人物には男キャラもいるんだけど、配下が女だけというのはさすがに狙いすぎなんじゃないかと思う。せめて男もいるけど女のほうが能力が高いから目立つだけとかだったら納得できたかも。のちに音楽家の奴隷を集めたときは男もいたし、労働力が足りなくなってきてからは男も集めるようになる。
メガネを掛けた人馬族の女の子や、陰キャの(性格の暗い)有翼人の少女、うろこのある鱗人族や魚人族の女戦士と、設定的にもビジュアル的にも個性的なキャラが出てくる。独特でおもしろいんだけど、ちょっとうるさく感じる。
冒険者がどうしても勝てない敵と遭遇した時に信号弾で騎士を即座に派遣してもらえる仕組みがある。騎士は貴族の魔法使いで強力な力を持つので敵を瞬殺するのだけど、平民の冒険者のことは虫けらのように思っている、という世界観がよかった。今後の展開に関わってきそう。
で、そんな元騎士の中の女性ローラ・スレイラが主人公のサワディくんのもとへやってくる。こいつは身分的にも戦力的にも精神的にも主人公より上なのだけど、サワディの芝居への熱意やみんなから慕われている人柄に惚れ、とある事情から政略的に結婚をすることになる。すごくいいキャラだと思うんだけど、サワディくんに短パンを履かせたがるところでちょっと引いた。
サワディくんが自分を異世界人だと打ち明けるところなどローラさんとのやりとりがなんかぎこちなくて話に入っていけなかった。脇役の女奴隷たちの心温まるエピソードなんかも気持ちが入っていかなかった。単に読み手の自分が冷めた受け取り方をしてしまっただけなのかもしれないけれど、たぶんこの作品がそれほど売れていないことからして多くの人が同じように感じたんじゃないかと思う。ところどころでノリの寒さも感じた。
シェンカー家の秘密が父親から明かされ、王国への憎悪をつのらせる人馬族の貴族との出会いがあり、サワディくんの力が強くなっていくことでなにかが起きそうで、ストーリーはこれから盛り上がっていきそうな感じがした。
でもサワディくんのやりたいことにあまり共感できなかった。こいつは故郷っぽいものを追い求めたりローラさんとの家庭を築こうとしたり事業を発展させようとしたりみんなの幸せを願ったりするのだけど、どれも本気に感じられなかった。
これからの話の展開を追ってみたい気持ちも一応残っているのだけど、作品に愛着が持てないままだらだらと読んでもしょうがないのでやめることにした。
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