ヘブンバーンズレッド |
謎の生命体、通称「キャンサー」に襲われた人類は、これまで住んでいた土地を追われ、隠れて暮らさざるをえなくなった。通常兵器が効かないこれらに対して唯一有効だったのは才能ある少女にしか発現しない「セラフ」と呼ばれる異能力だけだった。基本プレイ無料のアドベンチャー型コンピュータRPG。
同僚がソシャゲ(ソーシャルゲーム)のガチャ(有料または無料でランダムでゲーム内キャラやアイテムを入手できるしくみ)を回すのが好きと言っていたのでひさしぶりにやってみたくなって探していたら、ホロライブのVTuberの何人かが案件でこのゲームをプレイして宣伝していたので気になって遊んでみた。まあまあおもしろかった。
泣きゲー「AIR」「CLANNAD」などで有名なビジュアルアーツのkeyブランドを手がけた麻枝准がシナリオを書いており、自分はそれらをやったことがないのだけどアニメ「Angel Beats!」でのキャラ同士の掛け合いがとてもおもしろかったので期待して遊んでみたら期待以上におもしろかった上に百合百合しくてよかった。
一芸に秀でた少女たちを集めた軍隊「セラフ部隊」が舞台となっており、主人公で元人気シンガーの茅森月歌(ルカ)が入隊するところから物語は始まる。寮の部屋ごとに小隊(?)に分かれており、ぶっ飛んだ個性を持った面々が集っている。
月歌はふざけた言動でメンバーを振り回すので、天才ハッカーの和泉ユキがまじめな性格をしているせいか月歌にツッコミを入れているうちにいい相方になっていく。百合要素があるので月歌との仲をからかわれて赤面することも。
サイキッカーの逢川めぐみは最初月歌につっかかるけれど基本的には陽気な関西弁キャラ。なぜかロリ元艦長の國見タマに対しては急に大声でおどかしたあとでやさしい言葉を掛けるという謎ムーブをよくする。國見タマはデザイナーベイビーで早熟の天才なのだけど精神年齢は年相応に幼く、なぜかちょっと古いネットスラング(用語)をよく好んで使う。
東城つかさは自らを諜報員と名乗っており、本当にそうであれば正体を明かしてはならないはずなのでみんなからはこいつマジもんかと思われている。知ってて当然のことをさも重要な秘密であるかのようにしゃべる。
朝倉可憐は普段はおしとやかな女の子なのだけど、ときどき急に第二の人格が出てきて殺人鬼カレンちゃんとしてふるまう。
異能力「セラフ」は人によってさまざまな形をとり、普通にいろんな武器の形になって発現し、敵「キャンサー」にダメージを与えることができる。「セラフ」を出すためには「セラフィムコード」と呼ばれる合言葉をそれぞれ決めて叫ぶ必要があり、月歌のは「あたしの伝説はこれから始まる」なのだけど、やけくそ気味にノリよく叫ぶところが笑った。まあこの設定は作中ほぼほぼ省略されるのだけど。
ゲームはシナリオパートとダンジョンパートが交互に繰り返されていく。シナリオパートは基地内を動き回ったりアドベンチャーゲームみたいな会話シーンで成り立っている。たまに選択肢が出てきて、選んだ内容によっておもしろい展開になったりたまに能力値が上がったりする。
ダンジョンパートは敵が出現するマップを索敵しながら進みエンカウント式で敵と戦う。ボスもいる。敵とはコマンド選択式のターン制バトルで戦う。パーティは六人制だけど前衛三人だけ行動可能で好きに入れ替えることができる。通常攻撃のほか、スキルポイントがたまると消費してスキルを使って敵を攻撃したり回復や強化や敵の弱体なんかができるようになっている。
このゲームはソシャゲなので自分の手持ちのキャラから好きなのを選んでパーティに編成することができる。シナリオ上、別の場所で戦っているはずのキャラなんかを選ぶこともできるので、そういうのが嫌いな人のために警告を出す設定にもできるけれど、あくまで雰囲気を守るためなので制限はない。
キャラごとに武器の種類によって「斬」「突」「打」の属性があり、敵の弱点に合わせると有利に戦える。一人のキャラには複数の「スタイル」があり、ガチャで手に入るのは「スタイル」なのでこれが実質的なユニットとなっている。当然のことながら同じキャラの複数のスタイルを一つのパーティに編成することはできない。レベルはキャラごとなので新しいスタイルごとに上げる必要はないけれど、レベルとは別に強化するポイントがある。
スタイルごとに役割としてアタッカー、ブラスター、ブレイカー、ディフェンダー、バッファー、デバッファー、ヒーラーがあり、使えるスキルの傾向が大体決まっている。また、「火」「氷」「雷」「光」「闇」といった元素属性もある。ぶっちゃけソシャゲなのでガチャに金を出させるために新しいキャラほど有用な役割や属性を持っている。レアリティもあり、AよりもSよりもSSのキャラの方が大体強いし、ストーリーを進めるにしたがってほぼ必須となっていく。ガチャでの出現率は低い。
そのため、ゲーム開始時にリセマラつまり良いキャラがガチャで出るまでリセットを繰り返すマラソンをしたほうがストレス少なくゲームを進めることができるので勧める。攻略サイトや巨大掲示板のスレッドを見てみたところ、序盤のガチャでSS二体以上、それも可能ならクリティカル率アップのスキルを持つキャラを一体以上引いてから始めるとよいとのこと。というのも、クリティカル率アップのスキルの効果はある程度運に左右されるけれど運さえ良ければとんでもないダメージを出すことができ、何度も挑戦すれば強敵に勝ちやすいしスコアアタックでいいスコアを出しやすいから。
自分は無課金でプレイしたのだけど、第三章までは特に問題なくクリアできた。最後の方はマニュアルで戦う必要があったけれど、大体オートで気楽に進められた。AIは割と頭がいいので助かる。四章からは持ちキャラによって困難になっていく。「斬」属性に強い敵や「打」属性が弱点の敵が増えてくるのだけど、「打」属性の攻撃キャラが少ないから。
さらに四章も後半になってくると「無」属性の雑魚敵が出てきて、これはどういうことかというと「斬」「突」「打」いずれにも耐性があり「火」「氷」「雷」「光」「闇」の元素属性じゃないとほとんどダメージが通らないという結構露骨なガチャ誘導がある。まあそれでも無課金でもがんばればそのうちなんとかクリアできる程度のバランスにはなっていると思う。自分は四章後半でダルくなって途中で止めているけど半分は終わった。
麻枝准によるキャラ造形と脚本が素晴らしい。主要キャラだけしか紹介できていないけれどみんな個性的で魅力的だった。全部で数十人ぐらいキャラがいるけれど脇役にも特徴があっておもしろい。キャラ同士の掛け合いが楽しい。主人公の月歌が問題児でメンバーどころか上官もひっかきまわす。司令官の手塚は多少のことなら気にしないのだけどラインを超えるとブチ切れる。一方で副官の七海は全部平静に受け流す。この静と動、狂気と正気とで常にゆさぶってくるほか、メタな言葉でまぜっかえすなど、縦横無尽に笑わせてくれる。この人はクドカンこと宮藤官九郎に勝るとも劣らない天才脚本家だと思う。
でも物語づくりの面で言えば途中でプレイを止めたくなるほどしょうもないお涙頂戴の話が繰り広げられるので、本編は我慢して読んだけれど別章は途中からネットで評判のいいものを除いて全部飛ばすことにした。たとえば一定期間ごとに記憶喪失になるキャラがいて、そいつの親友がそのたびに号泣するという描写がある。そういう狙った設定はまあいいとして、もし本当に定期的に記憶を失うのだとしたらもうさすがに何度目か以降は号泣なんてせずに悲しみが別の形になって現れるものだと思う。こういう雑なところが積み重なり、もういいやと思ってしまう。
謎の生命体ナビィについての設定が自分には大したこととは思えず、登場人物たちの悩みにあまり共感できなかった。ネタバレになるので言わないけれど、もし自分が彼女たちと同じ境遇になったとしてもそんなに悩まずに生きていけそうな気がする。
絵は少し水彩画テイストの入った萌え絵で、自分は結構好きになれた。いかにもアニメ絵っぽいセル感がせず、やわらかいタッチに親しみが持てる。表情も豊かで魅力的だった。
音楽もよかった。脚本家の麻枝准が作曲もやっていて、印象的なメロディがあいかわらず良かった。歌手のやなぎなぎをフィーチャーしている。世界観にもマッチしていると思う。でも音楽へのこだわりが強すぎるのか、みんなにバンドをやらせる展開があって正直ちょっとうんざりした。主人公が人気歌手だったという設定は受け入れられたけれど、それ以外のメンツはそう簡単にみんな楽器やりだしてカフェでライブという流れにはならんやろと思った。音楽ならすべてを解決してくれるはずみたいな。まあ割合的に大したことはないのでスルーできる。
声優の声と演技もよかった。普通にアニメ見ている感覚だった。アニメだと尺の関係でそんなに長いセリフややりとりは入らないのに対して、おもしろい脚本がそのまま全部ボイスドラマみたいになっている。まあさすがに全部が全部じっくり楽しめるわけではないのだけど。
自分は最近あんまりソシャゲをやらないので他と比較はできないのだけど、無課金でも十分楽しめているのでやって損はないと思う。ただし、麻枝准の脚本を楽しめること、普通の恋愛要素ではなく百合要素を楽しめること、ダンジョン探索やバトルといったコンピュータRPG要素を楽しめること、といった条件がつく。会社の同僚にも勧めてみたのだけどすぐにやめてしまった。
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