千歳くんはラムネ瓶の中 4~5巻 |
元野球部で成績優秀、イケメンでモテモテの千歳くんは、かわいい女の子たちを周りにはべらせ、サッカー部の司令塔やバスケ部の熱血バカとつるみながらスクールカーストのトップで毎日楽しい高校生活を送っていた。そんな彼が以前トラブルで追い出された野球部から戻ってきてくれと乞われる。青春小説。
4巻にしてようやく本編(?)が始まり、最初にほのめかされていた千歳くんの過去の事件が語られることになるのだけど、なんか正直微妙で一気にこの作品への期待がしぼんでしまった。さらに続刊の5巻にいたっては、ついにメインヒロインこと柊夕湖について語られることになったんだけど…。
実はだいぶ前に4巻を読んだのでいまこれ書くために思い出しているのだけど、野球というのはチームスポーツであるため、たとえ良くない指示だと思っても監督には従わなければならないみたいな感じのテーマのようなもの(?)が描かれていたにしては随分と中途半端な内容だった。うーん、これ結局何を描きたかったんだろう。
部員や監督(!)からも乞われて悩んだあげく怪我した人の代役ならということで一時的にチームに復帰することになった千歳くんが、例によって大活躍するというあきれるような展開になる。野球部をやめてからも鍛錬を欠かさなかったのは分かるけど、チームスポーツなんだから一人あるいは手伝いも入れたとして二人とかで練習したところでここまで実力を維持できるものなんだろうか。
この出来事により千歳くんはなにか成長したんだろうけど、それが全然伝わってこなかった。え?こんなことでずっとラムネ瓶の中に閉じ込められてたの?みたいな。それとも野球部は千歳くんの中では実は大した問題ではなかったのか。千歳くんの選択とか全然ピンとこなかった。
5巻ではメインヒロインの柊夕湖がどうして千歳くんに惚れたのかが明かされる。かわいくて誰もが特別扱いする女の子に対して千歳くんがとった軽薄で偽悪的な行動は、最初は彼女には届かなかったんだけど、ある出来事を機にすぐに彼女は千歳くんの真意に気づいて惚れるのだった。
そして、特別扱いされたくないという悩みを抱えていた特別な女の子である柊夕湖は、特別扱いしてこない千歳くんの出現により別の悩みに直面することになる。この人の特別になりたい…。ということだと思うんだけど、5巻の引き延ばしがひどすぎて読んでいてうんざりした。この巻だけで花火大会とその準備があった上でさらに学校主催の勉強合宿と水着になってビーチで遊んだりと、ムカムカしてしょうがなかった。…じゃなくて(笑)どうでもいい描写ばっかで読んでいられなかった。この作品のファンだったら一人一人の描写が楽しめたのかもしれないけど、自分はどうやらあまりこの作品を好きではなかったらしい。
現在進行形で青春を謳歌しているはずの登場人物がやたら感傷的なことを言うことにうんざりした。高二の夏は一度きり、みたいなこと、まあ普通に考える分にはいいんだけど、それをしつこく文章にするものだからこいつら何者なんだと思った。おっさんおばさんが青春を回顧してるんかいと思ってしまう。
5巻の最後で元地味系女の子の内田優空が千歳くんのそばでサックス吹くのはギャグかと思ったというのはさすがに言いすぎだけど意味不明だった。
不良教師の通称「蔵セン」が毎度ウザかった。生徒に「青〇」とか言っちゃう。一見だらしがないように見えて実はすごいんです的なキャラが好きな人にはいいのかも。自分はこういうキャラ見ると講談社「アフタヌーン」臭がして鼻をつまみたくなる。この作品は小学館だけど。
元不登校の山崎健太の扱いが見ていてイラッとする。仲間に入れてもらった感が半端ない。この作品って結局千歳くんのグループがこの範囲になっている必然性の説明から逃げているし、リア充にありがちな人を見下す習性も別のグループに分離しちゃったので、全部地に足がついておらずフワフワしている。
千歳くんがおもしろいことを言わなくなった。
宝島社「このライトノベルがすごい!」の文庫部門で2021年と2022年に一位を取り、2023年に二位を取って殿堂入りしたらしい。うーん、2巻は素晴らしかったけれどあとはそんなでもないような…。女性票を集めたんだろうか。
というわけで自分にとっては一気に失速した感が強いのでもう読むのをやめることにした。ここで書いたようなマイナス点が気にならない人は読んでみてもいいと思う。
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