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日本国召喚 コミカライズ版 8巻まで
ファンタジー風の異世界に現代の日本列島が丸ごと転移したため、食料の多くを輸入に頼る日本は広大な穀倉地帯を持つ大陸国クワ・トイネ公国と国交を結ぼうとするが、かの国は大陸内の覇権国家であるロウリア王国から狙われていた。小説投稿サイトに書かれた小説のコミカライズ版。

バカっぽいながらもシンプルでわかりやすい題名にひかれて読んでみたら、そのまんまな作品だったので素直に楽しめた。

現代の日本人がファンタジー風の異世界に行く作品としては、アニメ化もされた柳内たくみ「ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり」が一番に思い浮かぶのだけど、あの作品は題のとおりゲートつまり転移門によって現代日本と異世界とがつながったという設定なのに対して、この作品は日本列島が丸々転移しているため、食料やエネルギー資源を異世界から調達しなければならない点が異なる。

といっても少なくとも自分が読んだコミカライズ版には商社員は出てこなくて、自衛隊と外務省の職員が活躍する。このあたりこう綿密に思考実験することなく割り切っているというか、正直言って題のとおりバカっぽい(失礼)造りの作品だった。読みやすいしこれはこれでいいと思うんだけど。

この作品の一番の魅力は、魔法があるとはいえ中世程度の文明の国々に対して自衛隊が無双するところだと思う。敵には飛竜に乗った竜騎兵みたいな航空戦力(?)もあるのだけど、日本の戦闘機は圧倒的な力を見せる。陸上においても敵の騎兵や歩兵なんて日本の戦車やMLRS(多連装ロケット砲)であっという間に粉砕できる。

日本が専守防衛の国であるという点も若干茶化しつつシミュレートしてみせている。国際紛争を解決する手段として武力を行使するのは禁止されているので、あくまで治安維持活動として自衛隊を出動させている。

ちょっと変わった点として、複葉機が最新兵器の科学文明の国も存在しているけれど、その国はちゃんと日本のヤバさが理解できるので衝突はしないのだった。この国は科学が発達しているけれど、魔法を持たないので世界制覇はできていない。

絵はなんというかレトロ感のあるやわらかいタッチで、人物の表情が柔和というか朴訥な一方で、兵器とか城塞の絵なんかはしっかりと描かれている。一体この絵をどう表現したらいいんだろう。教育マンガっぽい?作風を確立している一流のイラストレーターっぽい感じがするのだけど、良くも悪くも絵のクセが強いので全部この人の世界観に染まっている感じがする。少なくともこの絵で現代の若者の群像劇を描いたら違和感ありまくりだと思う。この作品に出てくる若手官僚には20世紀感が漂っている。推理クイズの挿絵っぽい?

若い女性を兵士が凌辱するシーンがサラッと描かれている。人間を食料にしている魔物たちがいて、人間の若い女性を裸にひん剥いて棒に括り付けて運ぼうとする描写がある。結構エロいんだけど、コマ数としてはほんの少しだけだった。

人間ドラマも希薄だし空想小説としても限定的だし、ただただ自衛隊が無双して外交官がちょこちょこ奔走するぐらいの作品なので、そういうエンタメ作品として楽しめそうなら読みやすいのでぜひ手に取って読んでみるといいのだけど、本当にそれだけの作品なのでそこに興味がなければ手を出さないほうがいいと思う。
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