| なるたる 3巻まで |
小学六年生の女の子シイナは祖父母の住む島に遊びに行き、海の中で顔のついたデカいヒトデのような不思議な生き物と出会う。シイナがホシ丸と名づけたそいつには仲間がいて、ペアとなった人間と感覚を共有するようだった。シイナは不思議な存在とペアになった人間同士の争いに巻き込まれる。青年マンガ。
少年少女たちが次々と死んでいく鬱系の作品として同じ作者の作品「ぼくらの」がネットでたまに触れられているのを見て気になっていたんだけど、こっちのほうが先らしいのでこっちから読んでみた。いろいろ古さを感じた。題は「骸なる星 珠たる子」のひらがな部分を取ったものらしい。
シイナの父親は航空自衛隊を辞めて民間の航空会社で小さな飛行機を操縦しており、母親は別居中なので父娘二人で暮らしている。家庭環境に関わらずシイナは快活で、田舎でも仲のいい同年代の男の子たちと仲良く遊んでいた。
シイナがホシ丸という不思議な生き物と出会った前後から、他にもまた別の不思議な生き物が目撃されたり、あるいは航空機が謎の事故を起こしたりするようになる。
ホシ丸の姿はシイナ以外には見えないんだけど、ふらりと入った定食屋にいた女の子がホシ丸を見て挙動不審な様子を見せたことから話を聞くと、その女の子アキラもホシ丸のような生き物と出会って「チャネリング」したという。それも、明確な意志をもって働きかけてきたり、その生き物の感覚が自分とつながったりするようになったとのこと。
シイナは曲がったことが嫌いな直情径行型のヒロインなのに対して、アキラは弱い自分となんとか折り合いをつけながら生きているいじめられっ子って感じ。シイナはホシ丸のことをもっと知りたいのでアキラにいろいろと聞く。
その後、謎の少年と不思議な生き物のコンビが現れて二人を襲ってくる。その少年はホシ丸たちのことを「竜の子」と呼んでいて、邪魔な人間をとりあえず50億人ほど殺すつもりだと言う。
なんかよくわからないんだけど、どうやら不思議な生き物たちはそれぞれ一人の人間をパートナーに選んでいるみたいだった。その少年には似たような考えを持った仲間がいて緩く行動を共にしており、シイナやアキラたちの様子も見ている。
一方でシイナの母親は研究者で、理化学研究所(実名)に勤めていて不思議な生命体について研究すると同時に、政府の機関とチームを組んでなにかやっている。
とまあこんな感じで不思議な力を持った少年少女たちが望む望まないに関わらず戦ったり、不思議な生き物たちがなにかしようとしているのを調べたりしてストーリーが進んでいく。この作品は1998年から連載されているらしいので、1995年に放映されて大ヒットしたアニメ「機動新世紀エヴァンゲリオン」の影響を色濃く受けているような気がした。
自分が年をとって感性が衰えたからかもしれないけど、エヴァンゲリオンを見て少年少女や大人たちの行動や姿勢に刺激を受けたときと違い、この作品を見ても大して刺激を受けなかった。
シイナはたぶん自分の周りにいる人たちのことを守りたい気持ちがあるんだろうけど、こいつのことがいまいち好きになれなかった。アキラなんてただ状況に流されているだけだった。謎の少年たちや不思議な生き物たちについても、特に興味を引かれなかった。
自分が一番共感できたのは、ロクに力もないくせにやたらと反抗的なシイナに対して、謎の少年が圧倒的な暴力をふるってシイナを追い詰め屈服させようとしたシーンだった。シイナは少年が脅してくるだけで実際には何もしてこないと思っていたけど、腹を少し刺されたことで現実を認識しておとなしくなり、それを見た少年がやっとシイナがいい表情になったと言って笑う。こういう嗜虐的なのが好きなわけじゃなくて(笑)、甘えたヒロイン(男の子でもいいんだけど)が現実を思い知るってのがすごくいいと思う。
でもそんなことを言う少年だって50億人殺すとかバカみたいなことを言っているし、自力で生きられない人間は死んだ方がいいという考え方は自分の母親が誰かの世話を受けないと生き続けられないことへの反動で生まれたみたいだった。でもこいつは結局このあとロクに登場しないみたいなので、テキトーなことを言わせてただけみたいだったw
この少年の仲間でお嬢様学園に通っている高校生の女の子が、大した悪気なくその学園のことをバカにしたような二つ名を大声でしゃべっていたシイナのことを突如ひっぱたく。能力のある人間が上に立つことこそすべての人間にとって幸せなことだというような考え方を彼女が抱いていることが描かれる。
自分はもうこういう作り話を楽しめるほど若くないんだなあと思った。年を取ると物語に社会性を求めてしまうし、よくわからない行動原理で動いている人たちのことを知りたいとは思わなくなってきた。せめてどこかしらこれまで自分が出会ってきた人と似てるところがあったら興味を持てるんだけどなあ。これは自分の経験不足からくるものでもあると思うにせよ。
まあそんなわけで自分は楽しめなかったけど、揺れ動く少年少女たちやさまざまな思惑で動く大人たちが織りなす作り話を楽しみたければ読んでみるとよいと思う。
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