| 高嶺の華は乱れ咲き 5巻まで |
クラスの地味なメガネ男子の澤田淳は、教室でツンと澄ましている嶺崎悠華のことをいつも後ろから見ていた。あるとき彼は誰もいない第二化学室で彼女が放尿しているのを目撃する。二人の秘密の関係が始まる。青年マンガ。
SMを扱ったマンガとしてずっと前に読んだ甘詰留太「ナナとカオル」がとてもおもしろかったので、他に似たような作品はないかアンテナを張っていたらこれを見つけて読んでみた。いまいちだった。
この作品のヒロインである嶺崎悠華はもう自分を解放しちゃってるw 放尿のほかに縄の跡がつくほど自分で自分を縛ったりしてて、でも一人だと満足できなかったからか一見無害そうな(?)メガネ男子の澤田淳にパートナーになってくれともちかけてきたようだった。彼は察しがよいのか彼女の望むことをしてくれるのだった。
なんか興ざめなんだよなあ。もう痴女でしかない。SMのSはサディズムではなくサービスのSだという側面についても彼女はすでに知っていて、自分にサービスしろと言っているかのようだった。そんな彼女にしっぽを振る澤田くん。彼女の方も彼に惹かれていくような描写はあるのだけど、なんかもうこれは絶対後付けだなあと思う。
3巻まで読んでも展開が遅かったので5巻まで読んでみたけれど大して進んだように見えなかった。どんどんエスカレートしていくのかと思ったらそういう風にも見えなくて、いろいろと方向を変えながら徐々に範囲が広がっていってる感じ。
自分が一番違和感あったのは、澤田くんが嶺崎さんに言う「君は牝豚だね」というセリフ。澤田くんにとって嶺崎さんはいくら関係が進んでも高嶺の華であり敬うべき対象なので、一体どういう気持ちで言っているんだろうかと疑問に思った。
彼は彼女のことを尊重しており、彼女に嗜虐するときも彼女の望みを汲み取った上で行っている。そんな彼の口から彼女に対して牝豚という言葉が出てくるんだから、この言葉はあくまで彼女のために自分を殺して言っているのかと思いきや、そういうわけでもなさそうだった。こいつ頭がおかしいんじゃないかと思った。
好きな女の子をいじめてみたいという気持ちにも触れず、そんなことは考えてはいけないんだと言わんばかりだった。SMとか変態性欲に関係なく普通のセックスですら相手をちょっといじめたりなにかされたりするのが快感なのに。
一方で嶺崎さんの被虐願望が中心になって描かれているかと思いきや、彼女の中身についての描写もあんまりなかった。結局のところどう考えてもこの作品はタイトルどおり澤田くんにとっての高嶺の華である嶺崎さんの奇行をただただ魅力的に描こうとしているだけのように思った。
恋愛についても描写が薄くて、普通だったら相手の望みに応じる中でこれが愛なんだと自分を納得させ…もとい愛しているからこそできるんだという思いを強くしていったりするものなのに、ただ相手の意志を尊重しているだけなので、こんなんじゃ愛は育たないと思った。
そういう機微がもっともわかりやすい形で現れるのがSMだと自分は思っているんだけど、この作品はなんかごっこ遊びをしているようにしか見えなかった。SMだけでなく普通の恋愛要素も弱く感じた。
ちょっと酷評してしまったので肯定的なとらえ方もしてみると、たぶんこの作品は少年マンガのフォーマットに則った上でSMを描こうとしたのかなと思う。だから、ヒロインは下手に自我を持たずに男の子にとってのあこがれの存在でなければならなかった。たとえ変態であってもw
ふと思い出したけど、一見ただ男の欲望の受け皿になっているようでいて自我を持って動いている女を描くのは山本直樹が最高だと思う。
絵は少年マンガとエロマンガの両方を満たす質の高さで文句はないんだけど、ヒロインの造形が自分にはそれほど好みではなかったし、男の子のほうもちょっとテンプレが強く感じた。絵そのものよりもキャラ描写次第で決まる気がする。嶺崎さんのことを好きになれていたら絵もいとおしく感じられたかも。
というわけでこの作品は基本的には勧めないけれど、少年マンガ好きがSMの入口に立って楽しむにはいいかもしれないので、気になったら読んでみるといいと思う。
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