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バタリアン
 恐らく日本で一番有名なゾンビ映画。
ショッキングな残酷映像や、ゾンビ系映画ならではの続々と敵(ゾンビ)が増殖してゆく
恐怖感はあるのだが、基本的にはコメディ映画。
全編を通して、80年代の能天気なハードロック音楽が挿入され、
陰鬱な雰囲気が消し飛ぶ。

 愉快な映画であるにも関わらず、何気に、由緒正しい血筋を持っている。
映画界の名作中の名作である本家「ゾンビ」の法律的権利上、
続編という立場であったのだ。
名作中の名作の続編・・・。
こういったものは大抵はダメダメになる。。
だが、本作は「コメディ」として開き直ったことによって、
潰れることなく、名作として生き残った。
この手腕は見事だと感服した。

 ゾンビというと、ノロノロと徘徊し、アーとかウーとかうなりながら、
人間を襲って食べるってのが一般的だ。
しかし、バタリアンに登場するゾンビは、走る!!
元気に走り回って、人間にタックルを食らわして頭にかぶりつく。
そして、人語を喋り、人間を罠にはめて続々と食料として、さらに味方を増やす。

 「ゾンビ」をはじめとするゾンビ映画の名作たちは、
一遍の希望を余韻に残すか、どうしようもない絶望のまま、ラストを迎える。
本作は、絶望型のラストを迎える。
ただ、あいかわらず能天気だ。ノリノリなのだ。

 おバカ映画と言い切ってしまうのもなんだな。
何気に心に残ったフレーズがある。
とあるゾンビ「オバンバ」を捕らえた主人公達は、なぜ人を喰うのか質問する。
オバンバは、「苦痛だからだ。」と答える。
主人公達は繰り返す。「何が苦痛なのか??」と。
オバンバは、「死んでいるということの苦痛だ。」と答える。
 何気にゾンビものの肝をしっかり捉えてるなと思った。
彼らは悪の帝国を作ることが目的でもなく、邪な欲望を達成するためでなく、
ただただ己のなかにポッカリと開いた穴(空腹?)を満たしているだけなのだ。
グロテスクで醜い異形の者達であるが、悪意に満ち溢れているわけではない。
そういった者達が溢れかえった恐怖ってのを描ききれている。

 とにかく、コメディとホラーの絶妙なバランスがとれた作品である。
もの凄く正統な血筋であるにも関わらず、大冒険をした製作陣に敬意を表したい。
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