ラブひな |
東大をめざして浪人中の主人公が、女子寮の中で唯一の男という環境の中で、各種各様の女の子たちと甘酸っぱいドタバタを繰り広げる話。
主人公の一人の男が、大してかっこよくないのに、周りの女の子たちからなんだかんだと結局モテモテ、といった趣向の話はいくつかある。私は有名どころしか知らないが、思い出してみると、ああっ!女神さま、天地無用、…くらいだろうか。それぞれ大なり小なり異なるので、ひとくくりに説明するのは難しい。
ただ言えるのは、こんなうまい話があるのだろうか、これはおとぎばなしだ、といった「ありえねーよ」というネガティブな突っ込みが喉からでかかる。大してかっこよくないのに、という点が嫉妬を煽るのだろうか。それに比べて、露骨に魅力的なヒーローを主人公にした作品はそんなに突っ込まれない。サラリーマンの理想、課長島耕作なんかも、割と温かく見守られている。
他方、少女漫画やテレビドラマを見てみると実は、「大してかわいくないけど」周りの男の子たちからなんだかんだと好かれる、といった趣向の話は結構ある。男からモテて当然、といった主人公は少なそうである。明らかにかわいい、またはかっこいい女主人公でも、なにかしら重大な欠点があり、その欠点が徐々に肯定的に描かれていって、というケースが多いように思う。
というわけなので、とりえが少ないのに女の子からモテまくる、という話はそんなに病的ではないのだ、ということをまず断っておきたい。でなければ少女漫画やテレビドラマが病的だということになってしまう。
ただ、この作品はストーリーの進め方がかなり強引である。偶然こうなる、といった展開が多すぎて目に余る。そんな偶然の上に成り立った物語に読者は違和感を覚えないのだろうか。まるで「未来日記」がほとんど抵抗なく見れる人が多いようなのと同じである。展開が本当に下品である。途中で主人公啓太郎の血のつながっていない妹がでてくるのだが、これがなんと完全な変装ができるという設定になっており、ここまでくるとなんでもありである。
しかし、人物の造形には光るものがある。この作品には、主人公を好きになる数人の女の子が描かれるのだが、どれも非常に個性があって大変すばらしい。ベタベタに好きでつきまとう、といった形ではなく、こんなやつを好きになるはずはないんだ、あるいは、好きだけどどうせだめなんだ、といった心理を描いている。まあそういった心理がベタな文で表現されてはいるのだが、それが分かりやすくてよい。男の視点と女の視点をがんばって書こうとしている点はくんでおく。
この作品は単行本にして 14冊で完結したのだが、最後に近づけば近づくほど展開が強引になり、話が単純になっていく。話の重要な背景がそれまでおざなりに描かれていたツケがまわってきて、急に東大や思い出の女の子が前面に出てきて、展開の強引さにあきれる。女子寮は元々温泉だったということから、意味もなく入浴シーンで色々な話が展開していったりする。
この作者はキャラクタ造型だけをやっていればいいと思う。ストーリーは誰かに任せるべきだ。
全般としてそんなに出来のよい作品ではないのだが、所々でドキドキさせる何かがある。
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